表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/94

シュタイナー伯爵 ヴィアンカ 1

あまり本筋には関係ないのですが、ヴィアンカ編です。

セルマンとの出会いから、学院へ通うことができなくなった理由、苦しい発作や体調悪化、現在の心情などです。

ずっと守られていたお姫様は、他人の気持ちに無神経、というより、本心を隠すのに不慣れで、四苦八苦しています。成長しないと、社交界でやっていけないよ~と言った感じです。


 ヴィアンカの一番古い記憶は、寝台の天井と哀しい母の顔だ。

 幼い頃は、自分の部屋と、そこを訪れる母とドクター、看護師、数人の使用人、ごくたまに父。それが彼女を取り巻く世界の全てだった。頻繁に起こる苦しい発作と高熱。そのたびに周囲は大騒ぎをし、ヴィアンカを寝台に縛り付けることに拘った。

 やがて、一人の少女が現れる。まだ幼女と言っていいような年齢だが、ヴィアンカから見れば初めて会った子供で、その自由闊達さは、モノクロームの世界に鮮やかな色彩を与えた。

 たまに、ふらりとやってきて、少しの時間お喋りしてさっといなくなる不思議な子。だけど、その子はいつの間にか来なくなり、退屈な、それでも周囲の優しさに守られた日々が続いて、少しづつ身体が楽になり、貴族の令嬢に必要な教育を受け始めて、庭へ出ることが許された頃。(アマンダ)と対面した。


「ずっと、会いたかった」 

 初対面の挨拶で、見事なカーテシーを披露した姉が、悪戯っぽい笑顔を見せた時。

 無意識のうちにそう言った自分に、姉は、吃驚したように目を瞠いて、次の瞬間、嬉しそうに破顔してこう言った。

「私も会いたかったわ」

 姉は、様々なことを教えてくれた。通っている学院のこと、友人たちとの付き合い、お茶会や夜会、観劇、流行りのファッション。それは、ほとんど屋敷から出ることのないヴィアンカにとって、憧れてやまない世界で、話の最後に、姉は必ずこう付け加える。

「よく覚えておいてね。いずれは、ヴィアンカも経験することなのだから」

 姉がそう言うと、必ず実現するような気がして、心が躍った。そういう、不思議な力のある人なのだ。


 やがて体調が安定してくると、二人で買い物や、カフェに出かけたりして、遅ればせながら学院へ通うことを検討し始めた時。

「学院に行くなら、男性にも慣れておいた方がいいわね」

「?男性なら、家にいるのに」

「使用人じゃなくて、同じ年代の人。いい機会だから、婚約者を紹介するわ」 

 それまで、姉から婚約者のことは聞いていたけれど、会ったことは無い。博識で、いつも冷静、優しくて優雅な所作で、ヴィアンカが憧れてやまない姉のみならず、父や母までもが称賛する婚約者。侍女たちの話によると、眉目秀麗なだけでなく、成績も優秀で社交界でも評判の貴公子なのに、使用人たちにも気取らない、優しい男性ということで、会うのが待ち遠しかった。 


 穏やかな午後、姉とその婚約者が、庭園でお茶会をしているところに、案内された。若干陽射しが強く、侍女が差しかけてくれた日傘が、自分の顔に影を作ってくれていることに、これほど感謝したことは無い。でなければ、自分は、惚けた顔を晒していたに違いない――――そう思った。

 それほど、ヴィアンカにとって、❝彼❞は印象的だった。


 紫が強い、瑠璃色の瞳がまっすぐこちらを見ている。目が合って、どのくらいそうしていたかわからないが、気が付いた時は、姉の隣に座って、姉と会話する❝彼❞のことを、ひたすら見つめていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ