シュタイナー伯爵 セルマンとヴィアンカ 1
セルマンとヴィアンカ、二人の会話です。
会話も途切れがちで、なかなか暗い雰囲気ですが、伯爵の登場で、少し話の接ぎ穂ができたようです。
そりゃそうだよね。
ヤッター!真実の愛の勝利!!ってタイプでもない限り、最初から最後まで二人きりじゃ、暗くもなるでしょう。
ここは、伯爵に感謝するところ。
もちろん、セルマンは表に出しませんが、感謝してます。
長い付き合いで、なんだかんだ言って、理解し合っている二人です。
父の後ろ姿をしばらく見送っていると、婚約者が声をかけてきた。
「彼が、気になる?」
いけない。婚約者の前で、他の男性を必要以上に気に掛けるなんて、とんでもない非礼だ。どうして、自分はこうも失態を晒すのか。会話だって途切れがちだ。三人でいた時は、あんなに話題があったのに姉がいないと、何一つうまくできない自分が情けなかった。
「ええ・・・・、あの、どうしてお父さまと来られたのか、少し気になって・・・」
「彼は、オスカー・ラドクリフ氏だよ」
「えっ・・・じゃあ、お姉さまの・・・」
「そう、彼のおかげだ」
お姉さまの恩人、と言わせないように、途中で言葉を引き取る。セルマンの気遣いは、いつでも完璧だ。それに感謝しつつも、違和感が拭えない。
なぜ父は、わざわざ彼を連れてやってきたのか。そのくせ、紹介どころか、自分だけ適当に喋って去ってしまった。あれではまるで、彼に自分たちを見せるためだけに来たようではないか――――それとも、自分たちに彼を見せるため?
「シュタイナー伯は、余計なことはしない方だからね。何か意味があったんだろう」
私たちには、わからなくてもね、そう言って、セルマンは安心させるように微笑んだが、ヴィアンカには、それは、何かを諦めたかのように見えた。
「・・・ロンサール様は―――――後悔されていませんか」
だから、つい、禁断の質問が口から滑り出た。
言ってしまってから、こんなことを訊いて、どうするつもりなのかと自問する。訊くべきではなかった。わかりきった答え――――だけど、彼が決して言わないだろう答えを訊いてどうするのか。そんなことは無いと言われて、安心したいのか、いや、安心できるのか。
馬鹿なことを訊いた。自分の愚かさをいやというほど再認識して、涙が出そうになるのを必死で堪える。泣くのは、卑怯だ。もうこの件では決して泣かないと決めたのに、どうしても顔があげられない。後悔している、と。そう言われたら、耐えられないかもしれない―――――。
「後悔したくないと思っている」
ヴィアンカは、はじかれるように顔をあげた。
「私たちは、何かを間違えた。君もそう思っているだろう?だけど、私は、まだ後悔したくないんだ。君となら、それができると思っている」
私となら―――?思ってもみなかった言葉に、考えが纏まらない。
「・・・私には、お姉さまのようにはできません」
出てきたのは、我ながら情けない答だった。だけど、仕方がない。あの姉の代わりなど、務まるわけがない。そんなことを期待されても、無理だ。
「私は、彼女の代わりが欲しいわけじゃないよ」
「君と、これからのことを考えていきたいと思っている。君は、どうかな?」
真摯に、はっきり言い切ったセルマンに、ヴィアンカは目を瞠る。
ずっと、羨ましかった、姉とその婚約者。片思いは辛かったけれど、見ているだけで安心できた、お似合いの二人。盤石だと、何があっても壊れることは無いと信じていた。
取り返しのつかないことをしたと、あれからずっと、ヴィアンカが後悔しない日は無かった。なのに、当事者であるセルマンは、後悔したくないと言う。そのために、ヴィアンカに協力を求めている。完璧だった姉の代わりではなく、何もかも足りないことを承知のうえで。
それなら―――。
「わ、私も・・・後悔したくありません。その、・・・」
できるのなら。その後の言葉は、気後れしたように口の中に消えたが、セルマンには十分伝わったようで、彼は、ほっとしたように息を吐きだした。
後悔しても、どうにもならないなら、これ以上悪化させたくはない、といったところでしょうか。
❝真実の愛❞ではなかったものの、恋は本物だった。関係者の人生が全く変わってしまったことを考えると、❝運命の恋❞かもしれません! 大袈裟かも・・・?
君となら、〇〇できる。セルマンが、アマンダに言った言葉です。元婚約者に言った言葉と同じなんて、常套句みたいで、誠意に欠ける、チャラい、みたいな印象を受けるかも、、、と思ったのですが、いやいや、肝心の〇〇の部分が違うからギリOK?
あんまり口が上手いと、かえって、チャラそうかも?と悩んだ挙句、同じ言い回しにしました。作者の中では、セルマンは恋愛下手の鈍感男、要するに朴念仁ってヤツです。
だから、マザー連合にコロっと騙される。・・・・・・優等生のフェミニスト、ついでに恋愛下手にはありがちですよね? ← 作者の独断が入っています。
誤字・脱字報告、とても助かっております。ありがとうございます!
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