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シュタイナー伯爵 中庭にて 1

漸く中庭に出られました!

新しい婚約者を目にしたセルマンの心境です。

自業自得の結果を後悔する人は多々いますが、彼は、どんな感情を持つのでしょうか。



 西の庭園での予想外の邂逅は、セルマンに様ざまな情報を与え、今後の、己の立ち位置の確認に役立った。

 アマンダとの婚約解消は、今後の計画を遂行するにはかなりの痛手だが、伯爵家との繋がりが切れたわけではないので、現時点ではそこまで悪影響はない。現実として、セルマン自身は、父の後を継ぎ侯爵となった暁には、宰相の地位が約束されている。宰相というのは、事業の片手間に務まるような、そんな生易しい立場ではないのだ。

 妻が母やアマンダのように商才に恵まれていなくては、これまでのように新事業を展開することはできない。そして、たいていの場合、そんな幸運に恵まれることはほぼ皆無。幸いにして、ロンサール侯爵家の事業は、安定している。将来の展望はかなりの変更を余儀なくされたが、現状を維持するだけなら、それほど難しいことではない。

 問題は私生活の方だ。こちらは、相手がいるだけに問題が山積みだった。


 事情が事情だっただけに、婚約が調ってから、婚約者(ヴィアンカ)と二人だけで会ったのは、たった一度きり。その後すぐに婚約披露パーティーを開き、まともに会うのは今日で三回目だ。彼女は、いつも緊張して、怯えているように見えた。

 それも仕方ないことか、とも思う。何しろ、大けがをした(アマンダ)の身代わりの婚約だ。しかも原因は自分(と、ヴィアンカは思っているらしい)で、婚約者(セルマン)は婚約者の交代を拒み、最後はアマンダが、❝このような醜い貌でロンサール様の隣に立つのは、()()()()()耐えられません❞と、セルマンの罪悪感を抉ったために、漸く彼が引いたのだ。そんな状況で、信頼や愛情を育むなど、誰が考えても無理な相談だ。

 今までは、なぜアマンダがそれほど傷痕に拘るのか、理解できなかった。二人で築いてきた十数年が、その程度で崩れることに納得がいかなかったからだが、それは、今日、全くの考え違いだと嫌というほど突き付けられた。

 アマンダは、他でもないセルマンを、信頼できない相手として突き放したのだ。自分(アマンダ)が最も必要とする時に、他の女(ヴィアンカ)の側にいる男。そして、その評価は確定し、もう二度と覆ることはない。

 こみ上げる苦い感情を抑えて歩いていると、中庭のガーデンチェアに腰かける、ヴィアンカ(婚約者)の姿があった。相変わらず華奢で、淡い金髪が午後の陽射しを受けて、柔らかい光が彼女の周りを彩るのを見て、心の中に安堵の感情が拡がってくるのを感じた。


 セルマンが学生時代から現在に至るまで、家同士の契約である婚約を当事者の感情により、解消または破棄されることは、度々起こった。昔よりは自由恋愛が多くなり、一定の理解が得られているとはいえ、ただ都合がいいという理由ならともかく、政略的な意味合いが強く結ばれた婚約では、幸福な結末を迎えることはあまりなかった。

 当初は、愛と希望に満ちて結ばれた二人が、数年後には、お互いに後悔する姿を少なからず目にしてきた。彼らは言う。


 ❝一時の感情に任せて、馬鹿なことをした❞ 若しくは、

 ❝長い時間をかけて築いた関係を台無しにしてしまった❞。そして、最後にはこう言うのだ。

 ❝今なら、あんなことはしない❞。


 愛を叶え、それなりの生活をしていても、そう言う男女は一定数いる。彼らは、()()()()()()()()()()位置に納まった兄弟姉妹(若しくは養子・姉妹の夫・兄弟の妻)と()の自分を比べて後悔しているのだ。

 ❝自分には、もっと華々しい人生があったはずだ❞と。

 

 


 

 

 

誤字脱字報告、ありがとうございます!適用させていただきました。


前置きが長くて、セルマンの心境まで行きませんでした。すみません。

ヴィアンカの姿を目にしたセルマンが、安堵したのはなぜなのか、それが何を意味するのか、次話ではっきりする予定です。

感情描写は難しいですが、頑張りますので、よろしくお願いいたします。




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