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シュタイナー伯爵 オスカー 4

 

()()()()()()()()、アマンダの婚約は無くなったわけだが―――――」

 片棒を担いだことに対する牽制か!?身に覚えのありすぎるオスカーは、ギクッとする。鉄鉱事業提携の見返りとして、販売ルートのどれかをよこせ、というパターンかと、一瞬身構える。

「本人の希望もあって、新事業を一つ任せることにした」

「任せる・・・?」

「アマンダと協力して、軌道に乗せること、それが条件だ」

「はぁっ・・・・・・!?」

 われながら、マヌケな声が出た。ついでにマヌケ面を晒した自覚があったが、それどころではない。

 伯爵は、実にサラッと、さも何でもないことのように言い切ってくれたが、オスカーとしては、ちょっとしたパニックだ。


 鉄鉱事業に押しも押されもしない、名門貴族のご令嬢が携わる?現場仕事の多い、いわゆる工業と称される事業に女性が経営者側として関わるなど、とんでもない醜聞だ。貴族令嬢としての社交界での格付けは、一気に最底辺になる。

「伯爵家は、アマンダが継ぐことになった。本人も了承済みだ」

 いやいやいや、伯爵家の後継者と共同で事業を始めるって!?男同士ならともかく、それが世間からどう見られるか、知らないわけないだろう―――――!そう叫びたかったが、哀しいかな、しがない子爵家の次男坊が、伯爵家当主に逆らえるわけがない。

「社交界が大騒ぎしますよ。もっと相応しい相手がいるのでは?」

 暗に、自分では力不足だと訴える。実際、セルマンでもあるまいし、アマンダに振り回される未来しか見えない。というか、彼でも無理だったのに、無茶ぶりもいいところだ。

「そんなことを気にしているのか?」

 そんなこと?そんなことか!?娘の将来をどう考えているのか、この(伯爵)は?

「アマンダは、間違いなく事業家としての素質があるし、運もいい。それ()が何より重要だと、君も知っているだろう」

「・・・・・・なんで、俺なんです」

「3年前、アマンダは君を選んだ」

「だからって・・・鉱山を落札したのがアドラム男爵だったら、どうするつもりだったんですか」

「君でなければ、()()が落札していた。その場合、今回の話は無かったな」

 やはり、あの子(アマンダ)は運がいい、と若干腹黒さを滲ませた笑みに、はあ、とオスカーはため息を吐いた。


 つまり、オスカーは、この経済界の大物に見込まれたらしい。それも、アマンダが選んだ、という理由で。そんなの、どう考えても()()()()()()()()()、というのが原因だろうに。

「俺は、継ぐ爵位もない次男坊ですよ。おまけに実家は商売人もどきの子爵家で、平民みたいなものです」

 どうかすると、もどきなのは、子爵の方かもしれない。今まで気にしたことなかったが、セルマンにシュタイナー伯爵、と大物に続けて会うと、なんとなく負けた気分になり、そう思った自分にさらにがっかりした。

「爵位はうちに(伯爵家が)ある。これからは工業技術が大いなる発展を齎すというのに、高すぎる爵位はかえって邪魔だ」

 それはそうかもしれない。だけど、さっきの様子では、アマンダがオスカーとの将来を考えているようには、とても思えなかったが・・・・・・。

「ああ、それから、アマンダには、その(結婚する)気がなければ、養子をとっても構わないと言ってあるから、あまり気にしなくていい。あくまでも一つの可能性だ。」

 そういうことか、と妙に納得できた。


 つまるところ、オスカーはちょうどいい、ということなのだ。

 高位の貴族が手を出し難い事業を任せられて、クセのある娘(アマンダ)の本性を知っていて、尚且つ、()()()()()()()()()()。物怖じせず、事業に詳しく、将来伯爵家の入り婿に迎えても、問題ない程度には身分がある男。

 その気になれば婚姻を結べばいいし、ならなければそのまま協力関係を維持すればいい。

「俺に相手がいるとは、考えなかったんですか」

「今一番重要なのは、事業での協力関係だろう?君の恋愛事情は関係ない」

 どうやら、本当にそっち(婚姻)は関係ないらしいと判断して、オスカーはほっとした。

 とすると、重要なのは契約内容だ。オスカーは、伯爵がよこした、3センチはありそうな書類の束を見て、うんざりする。このくらい、即座に理解できなければ、失格と言いたいのだろう。


 事業計画と契約内容を確認していく。確かに破格の待遇だ。良心的どころか、これほどの好条件をだすところはそうそうないだろう。

「特に問題は無いと思うが、一応アマンダには、こちらから優秀な補佐を二人つける予定だ。他に何か意見があたら遠慮なく言ってくれたまえ。善処しよう」

「・・・・・・十分です」


 まさに至れり尽くせり。過不足ない支援と、人材の派遣。おそらく共同事業を立ち上げるのに、これほど理想的な状況はないはずだ。だけど、なんだか嵌められたような気分になるのは、何故なのか。

 大まかな流れを確認しながら、オスカーは、釈然としない何かを抑え込むのに、結構な努力を要した。


 

 

 

オスカーと伯爵の話題はは、そろそろ大詰めです。

次話は、セルマンとヴィアンカのお茶会に、わざわざ顔をだした理由がわかる予定です。

少し、短くなるかもしれません。

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