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シュタイナー伯爵 セルマンとアマンダ 12

 

 午後の庭園で、ティータイムを楽しむひと時――――色づく木々、優美なガーデンセットに、色とりどりの美しい菓子。見慣れた光景だ、自分が彼女の側にいるならば。だけど、アマンダは一人で立ち、オスカーのエスコートを外して、セルマンと対峙している。これが、今の自分たちの関係性を如実に現していた。 

 そして、決定的な言葉が交わされる。

「ロンサール様は、あの娘(ヴィアンカ)との婚約がご不満ですか」

「・・・・・・いいや。不満などないよ」

 嘘ではない。婚約が不満なのではない。()()()()()()()()()()()()()――――だけど、そう言える時期は、もう過ぎた。他に、何と答えようがあるだろう?

 だから、最後に訊く。

「君は、今、幸福なのか――――?」

 愛していたと、そのために努力をしたと言うのなら、この結末は満足だったのか。ほんの少しの未練もないのか―――――()()()()()()()()()()()()()()()()。たった一言に、万感の想いを込めて問いかけた。

 一瞬、時間が止まったかのように誰も動かない中で、アマンダが開いていた扇を閉じ、親骨の黒水晶が、嵌め込まれた緑色の石が、光を取り込んで不思議な色に輝いた。彼女は、ゆっくりと口を開く。まるで自分に言い聞かせるかのように。

「ええ――――()()()()()()()()()()()()()()―――――」



 同じ。そうか、私たちは同じなのか―――――。

 実にアマンダらしい答え方だ。ただ一言に、あらゆる意味を含ませる。

 同じ気持ちなのか、未練があるのか、あなたが幸福ならば、私も同じだけ幸福だと言っているのか、幸福になれるようにお互い努力しようと言っているのか、どうとでも取れる言葉。セルマンは、これ以上の答えは無いだろうと、納得せざるを得なかった。


 改めて彼女を見つめる。扇を閉じ、首を傾げているせいで、フェイスラインに沿って走る赤味を帯びた傷が、髪の間から見え隠れするが、それほど目立たない。どちらかと言えば首よりにあるせいで、ちょうど陰になり、角度によっては見える程度の傷。それでも、貴族令嬢としては致命的だ。


 おそらく、()()()が傷を隠すことは、もう二度とないだろう―――――。自分たちの関係は、今まさに終わったのだ――――去っていく二人の姿を見送りながら、改めてそう思った。





 

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