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シュタイナー伯爵 セルマンとアマンダ 11

二人のお茶会をのぞき見した、セルマンの感情描写が続きます。

やっぱり後悔していますね~。



 愛していた、と彼女(アマンダ)は言う。だから、必死で努力した。それでも常に(ヴィアンカ)が優先されるなら、自分の側には誰がいてくれるのか。そう思って賭けをして、負けたから潔く引くのだ、と。

 セルマンは、何も知らなかった。アマンダが、彼のヴィアンカへの想いに気付いていたことも、彼女(アマンダ)の彼への愛情も、思いつきさえしなかった。だけど、それは言い訳にもならない。

 何故なら気付かないこと、それこそがセルマンのアマンダへの関心のなさ、若しくは、自分の感情にかまけて、彼女を思いやることをしなかった、その証明のようなものだから。


「愛してもいないくせにね」


 アマンダの冷たい声が、そう言った。――――――その声は、過去の記憶を刺激する。

「そんな眼もできたのね」

 知らないうちに、ヴィアンカを見つめていたセルマンに、アマンダがかけた声の、その冷たい響きに酷似していた。

 内心の焦りを抑えてアマンダを見ると、彼女は、嘘のように、いつもと変わらない笑顔で言った。

「ヴィアンカは、とても魅力的でしょう。私の自慢なのよ」


 確かに愛していなかった。ほかの令嬢とは、違うところを見ている婚約者(アマンダ)自分(セルマン)の条件の良さにも無関心で、容姿の良さを褒める時は、いつも(ヴィアンカ)を引き合いに出して、お似合いだと嬉しそうに言う。周りが不釣り合いな婚約者だと揶揄しても、一向に気にする様子もない。

 だから、()()()()()彼女を愛することは無い――――そう思った。どうせ、()()()()()()()()()()()()()、愛がなくても構わない―――――。

 それなのに、彼女を失った今、どうしても喪失感が拭えない。

 後悔なんてしない、それが口癖のアマンダ。目的のためなら、手段を選ばない強さ。だけどその刃は、()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを知っている。セルマンは、いつでも彼女の強い優しさに魅かれていた。


 酷い女だ、とアマンダは言う。理由も言い訳も聞かずに、問答無用で切り捨てた、と。確かにそういう見方もできるだろうが、セルマンは、そうは思わなかった。彼女は、()()しても無理ないくらいには、セルマンにチャンスを与え、自分は、()()されても仕方ないくらいに何も見ていなかった。

 これは、おそらく、最後のメッセージ。()()()()()()()()()()()()()愛しい少女(ヴィアンカ)と未来を築いていけ、と言っているのだ。もう戻ることは不可能だ、と。



 やがて、アマンダは、オスカーと共にセルマンのいる方へとやって来ると、初めて気が付いたように挨拶をする。

「ごきげんよう、ロンサール様」


 先ほどまで、オスカーに向けていた表情と全く違う、ここ数年見慣れていた、完璧な微笑みと優雅な所作に、苦い思いがこみ上げてくる。


 ――――――今度は、信頼を裏切らないでくれたまえ――――――


 シュタイナー伯爵の言葉が、さらなる重みを伴った。




 


誰かの歌に、 ♪恋は盲目、馬鹿丸出しで~♪ というのがありましたが、結構真実をついていると思うのは、私だけでしょうか? 

セルマンのヴィアンカに対する想いは、どちらかというと見つめて、話をしていれば満足、と言った類の恋と思って書いています。

アマンダに対しては、愛情を自覚する前にいろいろありすぎて、とうとう愛に発展する前に見捨てられた、みたいな。

マザー連合に寄って集って邪魔されて、ちょっと不憫です。

伯爵編が長くなってしまうので、そのあたりの事情は飛ばしていますが。





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