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モノローグ方式の予定でしたが、会話式になってしまいました。
モノローグと会話、織り交ぜながら進めていこうと思います。
読みづらかったら、遠慮なくご指摘ください。
よろしくお願いします。
「・・・・・いや、邪魔って・・・」
―――――― コノオンナ、ナニヲイッテルンダ ――――――
オスカーの頭は、そんな感想で占められた。
「私と婚約解消すれば、二人は結ばれて、家同士の関係もそのまま。大団円!よ。そうでしょう?」
一瞬にして固まったオスカーの気も知らず、アマンダは名案、とばかりにハイテンションで主張する。
家同士の契約が、そう簡単に変更になるわけがない。大体、妹は病弱じゃなかったのか。
「なのに、それとなく仄めかしても、誰もが論外だと言わんばかりの反応なのよ。きっと、優しくてか弱いあの子には、侯爵夫人は重荷だと思っているのね」
「それ以前の問題だろ・・・。アンタはよくても、周りの意向は完全無視かよ。妹のために姉を犠牲にするのが当たり前なのか」
たとえ姉妹同士と言えど、解消された方に落ち度がある、が社交界の常識だ。年齢的に言っても、アマンダがこれから婚約を結ぶのは、かなり厳しい状況だ。
シュタイナー伯爵は優れた文官で、やり手の実業家でもあるが、家族思いという噂だ。落ち度のない彼女を、そんな目に遭わせようとは誰も思わないはずなのに、わざわざ自分からその状況を作り出した。何を考えてるのか、全く理解不能だ。
「結構まともな意見ね」
サラリと失礼な発言をする。意外そうなのがまた、癪に障る。
「俺を何だと思ってるんだ」
「多少常識を逸脱しても、気にしないタイプ。丸く収まれば、それでいい、―――みたいな?」
「・・・・・・別に、否定はしないけど。アンタ、本当にアマンダ・クロエ・シュタイナーか。❝完璧令嬢❞はどこ行った」
「アレは擬態よ」
すました顔が、小憎らしい。侍女が平然としている以上、こちらが素なのだろう。とんだ詐欺だ。
「言ったでしょう。ロンサール様に、相応しくあるように努力したって。知っているのは、エレナだけよ」
控えている侍女のことだ。乳母の娘とかで、確か、オスカーとの連絡係をしていた。
「その大切なロンサール様は、どうなんだ。婚約者変更に同意したのか」
「それが、全く。絶対にありえないって、断言されて、困ったわ」
当然だ。多少のよそよそしさなんか問題にもならないくらい、どこからどう見ても、お似合いの婚約者同士だった。
男前のセルマンに比べ、アマンダが見劣りするのは否めない。指摘する声も多数あったが、それを補うくらいの知性と、教養に溢れて、何より、貴族の政略結婚としては、仲が良すぎるくらいお互いを尊重し、信頼しているのが見て取れた。
だからこそ、何故、だ。
何故、あんな無茶をしてまで婚約解消を企んだのか――――――そこまで考えた時。
「だけど、あの二人、相思相愛なのよ」
とんでもない発言に、オスカーは、今度こそ言葉を失った。
「な・・んだって・・・!?」
デキる男を自認するオスカーにとって、常に飄々とした態度を崩さない、は大前提だが、こんな爆弾を落とされたら、さすがに絶句するしかない。
てっきり妹の横恋慕と思ったら、まさかの両想い。あの鉄壁男と名高い、セルマン・フィルス・ロンサールのスキャンダル!というか、
「いや、あの人でも恋に迷うんだ。ビックリした」
思わず、本音がこぼれてしまった。とんでもない失態だ。
「別に迷っていないわ。言ったはずよ、理想的な婚約者だったって」
「だけど、アンタは我慢できなかった」
断言されて、アマンダは黙り込んだ。
「いったい、いつから、何を我慢してたんだ?」
「そんな話、楽しいの?」
鼻で嗤う彼女に、オスカーは、そっけなく返す
「我慢がよくないってことを、知っているだけだ」
「――――――そうね。今言わなきゃ、こんな機会は、二度とないわね」
そうして、アマンダは、長い間目をそらしてきた秘密を打ち明ける。
――――――聞きたくなければ、いつでもやめるわ――――――そう言って。