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シュタイナー伯爵 セルマンとアマンダ 4

ただいま、アマンダの過去を書いています。

結構問題児なアマンダが、ヴィアンカやセルマンとの交流で成長するところです。

地味なお話なので、飛ばしても問題は無いと思いますが、人物像の把握には役に立つかも・・・?です。

 

「ヴィアンカ!どうしてこんな!午後までは調子よさそうだったのに!」

「奥様、落ち着いてください!」

 ヴィアンカの部屋は、いつもの静けさが嘘のような騒ぎだった。寝台を取り巻くドクターに看護婦。メイドが数人、タオルやら水やら抱えて、右往左往している。何より、普段声を荒げることのない母親が、真っ青な顔に涙を浮かべて、大きな声でドクターに取り縋っている。

 何か大変なことが起こっている、と感じたアマンダは、こっそり中に入って、騒ぎの中心を窺ってみる。子供用のベッドにいるはずの、ビスクドールのような少女は、いつもの美しさの影も形もなかった。

 透き通るような白い肌は、不健康に青く濁り、桜色の唇さえ青白く乾いて、口の端からはわずかに泡交じりの涎が垂れている。そして、何より怖かったのは、いつも大きく澄んだ眼が裏返り、死んだ魚のような瞳が半分覗き、白目を剝いていた。

「ひっ・・・・」

 悲鳴を上げる寸前で、やっと追いついたメリッサが、アマンダの口を塞ぐ。有能な乳母は、そのまま目立たないように連れ出すと、アマンダの部屋へと戻り、午後に二人で何をして遊んだか、時間をかけて聞き出した。


「ヴィアンカ様は、お嬢さまの妹さまです。お体が弱くて、先ほどのように発作を起こされてしまいます」

「発作?」

「そうです。今日は、大きな発作を起こされてしまいました」

「知らなかった・・・」

「ヴィアンカ様の発作は、少しびっくりされただけでも、起きてしまうことがあります。例えば、目の前を虫が飛んだ、それだけのことでも」

「それだけ!?」

「だからアマンダ様にも、ヴィアンカ様のことは、お知らせしていなかったのですよ」

「じゃあ・・・勝手に部屋に入ったりして、お母さまにあやまらないと・・・ヴィアンカにも・・・」

「今は、まだダメです」

 漠然と、自分が部屋に入ったのが悪かったのだ、と感じた様子のアマンダに、メリッサは、キッパリと告げた。

 乳母とはいえ、5才にもなれば、ほぼお役御免である。メリッサも例にもれず、現在は家政婦のような、伯爵夫人の補佐のような仕事がメインで、屋敷の中にいる時のアマンダに、ついて回ることはない。それでも、予定管理はしているし、家庭教師から、たまにアマンダが、拗ねて席を外してしまうことを聞いてはいた。せいぜい十分~二十分のことで、伯爵夫人も、外に出るわけではないのだから、特に問題ない、というスタンスだった。

 ところが今日の午後、アマンダが、立ち入りを禁止されている、東棟に繋がる廊下付近を歩いている姿を見かけたのだ。家庭教師に確認すると、その時間、確かに注意を受けたアマンダは、外へ出てしばらく戻ってこなかった、という。

 まさかと思って、伯爵夫人とヴィアンカの様子を確認したが、少し疲れた様子ではあったが、特に変わったことは無いという返事だったので、二人で胸をなでおろしたのだ。


 それが、まさか、こんなことになろうとは―――――!


 メリッサは、ソファに座るお嬢さまの目線に合わせて、膝をついて話を続ける。

「お嬢さま。これは、決してお嬢さまのせいではありません。私と奥様は、アマンダ様の後に、ヴィアンカ様とお話しして、大丈夫なことを確認しているのですから」

「大丈夫・・・?」

「そうです。ヴィアンカ様は、いつもどおりでした。だから、これだけはよく覚えておいてください。()()()アマンダ様のせいではないのですよ」

 メリッサは、アマンダが不安気に頷くのを確認して、話を続ける。

「だけど、これから数日、ヴィアンカ様の容態は安定しません。奥様は、ヴィアンカ様にかかりきりになって、お嬢さまと御一緒できるほどの余裕はなくなるはずです」

 今までの例から、あれだけの発作に、身体にかかった負担を考えると、おそらく高熱を発して、数日は生死の境を彷徨うことになる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――――。

 母である伯爵夫人は、娘を愛している。それは間違いないが、今、この状態で(ヴィアンカ)の死の、直接の原因が、(アマンダ)()あると()()()()()()()()()()()()()、感情の昂っている伯爵夫人(母親)が、冷静に対処できるとは限らない。感情が抑えられずに、アマンダを責めるような言葉を口にして、万一、ヴィアンカが死亡したり、後遺症が残ることになってしまったら――――母娘の関係に罅が入り、修復できない可能性がある。


 第一、伯爵夫人は、自分の迂闊さを責め続けるに違いない。

 

次話からは、セルマンとの交流をサラッと書いて、セルマン視点のアマンダとオスカーのお茶会に戻ります。

誤字・脱字報告、ありがとうございます!細かいところでやらかしてしまうので、とても助かります。


伯爵編、長くなりましたが、半分~2/3くらい来ました。この後盛り上がるのは、伯爵夫人のお話かな~と思っております。

頑張りますので、よろしくお願いします。

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