シュタイナー伯爵 セルマンとアマンダ 1
セルマンとアマンダの出会いです。
二人の出会い ~ ヴィアンカとの出会い、伯爵の忠告、ヴィアンカの付き添いで深みに嵌って、オスカーとアマンダの会話を経て、アマンダとの対峙までを書く予定です。
それほど長くならないようにするつもりですが、興味のない方には、退屈かもしれません。
この部分は、飛ばしてもさほど影響はない、と思います。
セルマンは、アマンダと初めて会った時のことを思い出す。
春爛漫の、侯爵家のガーデンパーティーで、二人は出会った。侯爵家嫡男であるセルマンと、主だった貴族の令息、令嬢たちとの親睦を図るための会で、侯爵夫人であるセルマンの母は、子供の好みそうな菓子や、飾りを手配し、なおかつ付き添いの母親方も楽しめるよう、もてなしの準備を調えた。
しかし、子供たちの親睦を深めるとは表向きで、未来のシュタイナー侯爵夫人を見定めるためであることは、招待客全て共通の認識だった。
令嬢とその母は、主催者である侯爵夫人と、その令息が一通り挨拶を受けたのを見計らって、早速売り込みを開始する。当然だ。シュタイナー侯爵家は、家柄、地位、権力、財産と王国でもトップクラス。売り込んで損はない。セルマンは、その整った容姿も相まって、あっという間に令嬢に囲まれてしまった。
10才にして、何でもそつなくこなす術を身に付けていたセルマンは、如才なく令嬢方の相手をしながら、侯爵の言葉に従い、それとなくアマンダの様子を追っていた。実のところ、母である侯爵夫人が趣向を凝らしたこの会は、彼女ただ一人のために開かれたものだったからだ。
「そうね。つまらない、わ」
しかし、当のアマンダは、パーティーの感想を聞いたセルマンに向かって、そう言い放つ。主催者の息子に対して、なんという暴言。子供とはいえ、社交の場に出るような年齢の令嬢としては、全くあり得ないほどの礼儀知らず――――と判断しつつも、待てよ、と冷静な声が囁く。
母親と共に、主催者への挨拶を済ませた彼女は、母に何事か告げると、さっさと庭の片隅のベンチへと行ってしまい、そこから動こうとしなかった。母であるシュタイナー伯爵夫人も、それ以上は何も言わず、娘のことは放置して自身の社交を続け、時々確認するように目を向けるだけ。異様と言えば異様だが、父の言葉を思い出す。
父は、彼女の噂を、一通りセルマンに話した後、言ったのだ。
「未来の侯爵夫人に相応しいか、おまえの意見が聞きたい」
さりげなく彼女の隣に座ったセルマンは、どうも、普通の令嬢とは違うらしいと感じ、普通なら使わない言葉で挑発した。
「このパーティーは、母上が趣向を凝らしたんだけど、君の好みではなかったみたいだね」
これはこれで、結構な非礼だ。❝君の態度は、失礼だ❞と、面と向かって糾弾しているのだから。どう対応するのかと思ったら、その非礼は、更なる非礼で返される。実にあっさりと返り討ちにされた瞬間だった。
このままでは、引っ込みがつかないし、彼女の為人も判らない。だから、更に質問を重ねる。
「それでも、花は好きなんだ?それとも、庭に興味があるの?」
このベンチは庭を見渡せる位置にあり、アマンダの視線は、先ほどから咲き誇る花々や、庭園全体を見ており、そこにいる人々に興味がないことは、一目瞭然だ。だからと言って、花や庭園に興味があるようには見えないが、それでは会話が続かないし、彼女がどういう人なのかも、わからない。
いつもなら、自分から話さなくても、相手が勝手にあれこれ喋ってくれる。こんな風に、相手の出方を窺いながら、立ち去られないように、興味をそらさないように話題を振ったことは、一度もない。セルマンにとっては、新鮮な体験でもあった。
そして、少しの沈黙の後、返ってきた返答は、これまた意表を突く言葉だった。
「嫌いじゃないわ、キレイだし。それに――――煩くないから?」
キレイ、はともかく煩くないとは、どういう意味か。きれいでも奇麗、でもなくキレイ・・・このニュアンスも気にかかる。だいたい、沈黙したということは、結構な意味が含まれているとみて、間違いないだろう。
齢8才にして、この回答。どちらが見極められているのか、わからないな――――。
つい、見つめてしまうと、アマンダは、悪戯が成功したかのような表情で、彼を見ていた。
その瞳は、何より雄弁に彼女の言葉を語っていた。
――――――この意味が、貴方にわかる?――――――
アマンダ、昔から人を煙に巻くのが得意です。
しょっちゅう教育的指導を受けるので、誤魔化すために身につけたものでしょうか。




