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シュタイナー伯爵 秘書 2

伯爵と、強気な秘書の会話です。

先代から仕える切れ者の秘書は、主人よりも20才近くも年上なこともあって、結構言いたい放題しています。


 シュタイナー伯爵は、客人の来訪の連絡を受けて、メインダイニングルームへと向かっていた。

 今日の昼食を共にするのは、カーライル卿。公私ともにかかわりの深い相手。本来ならば、家族と共に迎えてもおかしくはないが、今日は内密の話があるため、二人だけのうえ、食後のティータイムは、人払いの指示まで出してある。


「旦那さま」

 遠慮がちな声と共に、切れ者の秘書が、メッセージカードを差し出した。無言でカードを開くと、流麗な文字で、たった一言。


  ――――――どうぞ、納得できるように―――――


 誰が、でも、誰のために、でもなく、どうしろ、でさえない。ただ、()()()()()()()()

 そうきたか。つまり、これは、(アマンダ)からの挑戦状だ。あの娘は、どう収めるのかお手並み拝見、と煽っているのだ。もちろん、自分の意見を変えるつもりなどなく、そのうえで、誰もが納得のいく結末を望んでいる、という意思表示。

 込められた意味を考えれば、これ以上ないほど傲慢で尊大、無茶ぶりの丸投げもいいところだが、たった一言に凝縮されたそれは、なんと寛大で、懐深い響きさえ持つことか――――!

「これは、丸投げと言うやつですね」

 案の定、秘書から的確な指摘が来る。

「どうするおつもりですか?」

 澄ましているが、その声は、大変ですねえ、と茶化しているような響きがある。

 わかっている、これは自分が招いたことだ。ここ数年、忙しさにかまけて不穏な空気を見逃した。否、()()()()()()と、甘く見ていたら、痺れを切らしたアマンダに、機先を制された。

 婚約解消を仄めかされてから、約一年。結果は概ね既定路線に収まったが、途中経過が予想と違いすぎるうえ、長女(アマンダ)の傷は、全くの計算外。周囲の状況とアマンダの行動力を見誤った、痛恨のミスだ。


「どうもこうも。相手がいる以上、一人で決定できることは、それほど多くはない。せいぜい選択肢を考えるくらいだ」

「おや、こちらも丸投げですか」

 いちいち、癇に障る発言に、思わず顔を顰めるが、咎めたりはしない。

 切れ者の秘書は、実は、ことが起こる数か月前に、家令や家政婦長の報告を、鵜吞みにするのは如何なものか、と進言していた。しかし、その時、出資している研究機関の開発が、今後の経済発展に大いに関わってくることが見込めたため、方々への根回しや、さらなる研究の展望に超多忙だった伯爵は、気にかかってはいたものの、後回しにしてしまい、悔やんでも悔やみきれない。

 客観的、かつ忌憚のない指摘をする秘書は貴重なうえ、意見を聞き流した結果がこれでは、多少の嫌味で済めば、安いものだという認識がある。

「しかたがない。誰もが納得できる結果、がご希望らしいからね」

「まあ、そういうことにしておきましょう。悪くはない判断ですしね」

「お褒めに与り光栄だね」

 しれっと主人に判定を下す秘書に、僅かに肩を竦めて答え、カードを渡すと、何事もなかったように踵を返す。

 

 起こってしまったことを、いつまでも悔やんでいても、仕方がない。考えようによっては、諸々の歪みを一気に片付ける機会でもある。これからの計画を思い浮かべながら、次女の婚約者が待つ昼餐の場へと赴いた。

 




    



次回は、伯爵とセルマンの会話になります。

アマンダの要望を受けて、二人の愛を後押しするのか、誠実さに欠ける行動を咎めるのか、それともどっちつかずの玉虫色に落ち着くのか、まだ決めかねています。

ちょっと更新に時間がかかるかも・・・です。

頑張りますので、よろしくお願いいたします!



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― 新着の感想 ―
[良い点] アマンダが傍観者に収まったこと。 父親の思惑がまだはっきりしないうえに、「信用できない語り手」であるアマンダが(母親がセルマンの気持ちに気づいたと言っても、アマンダがそれとなく話したからだ…
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