シュタイナー伯爵 侍女エレナ 2
「い、いえ―――そんなことは・・・・・・」
エレナは、セルマンの態度を思い出す。
屋敷を尋ねて、真っ先にアマンダに微笑みかけ、挨拶をする。常にアマンダを気遣い、優先して、ヴィアンカには、自分から話しかけることさえ、そう多くはなかった。
アマンダは、蕩けるようなまなざしで妹を見る、と言ったが―――――エレナが見た限り、確かに強い眼差しだと感じたが、見つめ合うようなことも無く、むしろ、目が合うとすぐに逸らしてしまって、悲しそうな顔でそれを追うヴィアンカ――――――。
そう、エレナは、アマンダが言い出すまで、そんなこと想像さえしていなかった。だけど――――。
「そんな素振りは・・・、ありませんでした。・・・・それでも、アマンダ様がそう仰ってから、よくよく見ていると―――――」
「つまり、言われなければ、気づかなかった?」
混乱して黙り込んだエレナ対し、更に問う。重要な事であり、完全に客観的な意見が知りたかったのだ。
「では、アマンダが言わなければ、君は、自分でそのことに気が付いたと思うかい?」
「それは・・・わかりません・・・・・・」
エレナから見たセルマンは、ヴィアンカのことで呼び出されることさえなければ、アマンダを一番に考える、理想的な婚約者だった。
たびたびお茶会が中止になっても、二人は、よく、他家からの招待などで、夜会や園遊会、美術館などに出かけていた。そこでも理想のカップルと言われていて、エレナとしても鼻が高かった。
そういえば、そんな時は、どことなく屋敷の中がざわついていた。そのくせ、誰に聞いても理由がはっきりしなくて、妙な気分になったものだ。
―――――もし、ああいう時、ヴィアンカが発作を起こしていたのだとすれば―――――?
エレナは、セルマンとヴィアンカが二人でいるところを見たことはおろか、聞いたこともなかった。ただ、いつもお茶会を邪魔するかのように、発作を起こすヴィアンカに対して、よい感情を持てるはずがなかった。呼ばれると、さっさと中座して、戻ってこない婚約者も同様だ。
アマンダにひた隠しに隠し続ける姿勢は、どう考えても邪魔者扱いしている、若しくは馬鹿にしているとしか、思えなかった。
おまけに、他家が絡むと呼び戻さないなんて、ますます馬鹿にしているとしか、考えようがないではないか―――――!
それなら、この屋敷でも呼ばなければいいのだ、姉の婚約者を、何だと思っているのか―――!
カッとしたエレナは、つい、伯爵に反論する。
「・・・・・・ヴィアンカ様を愛しているとか、いないとか、そんなこと関係ありますか?」
感情を抑えつけているせいで、我ながら、地を這うような声が出た。でも、そんなことはどうでもいい。
「お体が弱いのは、お気の毒だと思いますけど、お二人が会う時に限って、発作を起こしてはロンサール様を呼び出して、アマンダ様には何も知らされず、戻ってこない。挙句の果てに、デート中に一人放り出されて・・・、婚約者として、不誠実にもほどがあります!そんな方と結婚なんて、絶対にあり得ませんっっ!」
「なのに、いざ婚約解消となったら、慌ててゴネまくるなんて―――、だったら、初めからヴィアンカ様に構わなければいいんです!」
「大体、そんなことを許すなんて、常識を疑いますよっ‼」




