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シュタイナー伯爵 侍女 メアリ

ヴィアンカの専属侍女、メアリのお話です。

実は、美しい伯爵夫妻とヴィアンカの大ファン。


アマンダに対しては、年齢が近く、同性ということもあって、完璧すぎて近寄りがたい、自分には縁のない人、と思っています。

本性を知ったら、えぇ~~っってなりそう。



 シュタイナー伯爵家次女、ヴィアンカの専属侍女メアリは、伯爵の執務室の前で、逡巡していた。

 侍女となって5年。雇い主である伯爵様とは、月に一度顔を合わせるかどうか、ほとんど話などしたこともない。直接の主人であるお嬢様とは、信頼関係が築けているはず―――何しろ、あまり人を疑うことを知らない、素直で優しいお嬢様なのだ。なのに、何故呼び出されたのだろう。

 ここ数か月、お屋敷は、長女のアマンダ様が事件に巻き込まれたせい、しかも、その原因がヴィアンカ様の発作と、アマンダ様の婚約者カーライル卿のせいとあって、大変な騒ぎだったけど、それもようやく落ち着いたと思ったのに。

 そう思いながら、立派な扉をノックした。


「突然呼び出して、すまないね。実は、ヴィアンカのことで、少し聞きたいことがあって、普段一緒に過ごすことが多い君が、一番詳しいかと思って来てもらったんだよ」

 優し気に微笑んで話しかけられ、そういうことか、と合点して、警戒心が緩んだ。

 お嬢様は、もともとお体が弱いうえに、少し前まで頻繫に、心因性のストレスによる心臓発作を起こして、領地で療養する話も出ていた。実は、それが原因で更に発作がひどくなったりもして、奥様の嘆きは、それはもう見てられないほどだった。

 アマンダ様の事件があった後は特にひどく、何度も発作を起こしては高熱が出る、を繰り返し、2週間近くも寝込んでしまったくらいだ。


 正直、()()()()()()()()()()()()()()、意識朦朧としながら何度も謝罪する姿を見たら、さすがにお気の毒になってしまった――――と考えていたら、ソファを奨められ、何故か秘書がお茶まで淹れてくれた。

 なんで?そこは、一番下位の自分が淹れるところじゃないの?まあ、それもおかしいんだけど。

 第一、たかが侍女風情が、当主と差し向かいでお茶を飲むこと自体、ありえない。しかも、結構高級な茶葉を使っている。またぞろ、警戒心が頭を擡げてくる。


 メアリにお茶を促しながら、優雅に一口飲んだ伯爵様は、おもむろに口を開いた。

「だいぶ塞ぎ込んでいたようだが、婚約も決まったことだし、少しは落ち着いたかな。君から見て、どう思う?」

 果たして、思った通りの質問だ。やはり、父として心配なのだろう。伯爵は、大変お忙しい方だ。ここは、あまり心配をかけないように・・・と考えていたら、

「普段あまり気に掛けてやれないからね。()()()()()()()()()()()()()聞かせてくれないか」

 と言われた。心なしか、❝正直な❞に力が籠っていたような気がして、メアリは、改めて雇い主を見て、直感する。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということ。そのためにわざわざソファに座らせて、高級なお茶まで出してきたのだ。


 ・・・・・・全く飲む気になれないんだけど。内心、盛大なため息を吐いた。


「お嬢様は、表向き落ち着いておいでですが、まだまだ気に病むことがおありのようです」

「原因は、何だと思う?」

「それは・・・やはり、カーライル卿とアマンダ様はとてもお似合いでしたので、ヴィアンカ様は、ご自分でよいのかと思っていらっしゃるようです」

「なるほど・・・。君は、()()()()が原因だと考えているわけだね?」

 メアリは言葉に詰まった。

 ソファに腰かけた伯爵様は、それはもう、優雅に微笑んでいらっしゃる。ザ・貴族!といった感じだけど、――――――美形の圧がこんなに怖いなんて、知らなかった!目の保養だと喜んでいた自分を、殴ってやりたい。

 それはともかく、メアリは、瞬時に理解した。

 ここで無難な答えをすると、お嬢様の状態にも気づけない、意向も正確に汲み取れない、おまけに雇い主の要求も見抜けない――――若しくは応える気がない役立たず、の烙印を押されるということを。

 シュタイナー伯爵家の使用人は、質がいいと評判だ。採用されるのは難しいが、待遇もよく、お嬢様の専属侍女ともなれば、それなりに勤めればそれはもう、しがない下位貴族の二女三女だって、薔薇色とまではいかないが、かなり明るい未来が望める。当主から能無しと思われるのは、得策ではない。


 だけど、()()()()()()()()()()()()()()()。しかたがない、腹を括ろう。


 ヴィアンカ様のことは、お気の毒な方とも思うし、とてもお美しく優しくて、僭越ながら大切に思ってきたけれど、実は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もあり、黙ってきたが、伯爵様の()()()には逆らえない――――。


 鬼が出るか、蛇が出るか――――。自分の言葉で不興を買うのは、一体誰なのか。

 メアリ自身なのか、奥様やお嬢様方なのか、はたまた使()()()()()()、なのか。



 見当もつかないながら、メアリは覚悟を決めた。雇い主(伯爵様)の、おそらく神経の削られるような質問に、()()()()()本音で答えよう――――そう決意したのだった。


 

 

少し長くなってしまいました。

優秀な侍女であるメアリ、憧れの伯爵様が、実は、結構怖い人らしいと知って、まぁ、理想の貴族ってそんなもんかぁ~と実感しました。

よって、結婚するなら、裕福な庶民が気楽でいいいわぁ~と決心したのでした。

デキる侍女は、少しばかりちゃっかり系、がコンセプトです。


次回は、アマンダの侍女、エレナ編です。

シュタイナー伯爵夫人の記述も、少し入る予定です。

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