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シュタイナー伯爵 アマンダ 5

少し長くなります。

相変わらず、腹の探り合いをしています。

飽きてしまったら、すみません


 しかし、父からは、思ったような反応が来なかった。

「君がいるのに、なぜ僕がわざわざ、養子をとる必要がある」

「お父さま。私は、しばらく結婚はしたくない、と言っているんですけど?」

「別に構わないよ。結婚するにしろ、養子をとるにしろ、特に急ぐ必要はないだろう」

 これには、アマンダは、心底驚いた。

 アマンダは、もうすぐ21才になる。あと2年もすれば立派な嫁き遅れだ。今だって、条件のいい男性は大抵婚約者が決まっている。二男、三男と言え、貴族の有望株は、さっさと将来を決めてしまうものなのだ。

「私の手伝いをしたいのなら、事業をひとつ任せられるくらい、本気でやってもらわなければ困る」

「いいのですか!?」

「ただし、君が伯爵家(我が家)の跡取りだ。それなら、許可してもいい」

「わかりました」

「優秀な補佐を二人つけよう。新しい事業を考えているから、まあ、ちょうどよかったかな」

「ありがとうございます。頑張りますわ!」

 嬉しそうなアマンダを見て、シュタイナー伯爵は、安堵のため息を吐く。納得できないとなると、何をしでかすかわからない娘だ。とりあえず、家にはとどまりそうで、何よりだ。残る問題は―――――。


「君との話は、これで終わりだが、少し聞きたいことがあるから、エレナ、と言ったかな、君の侍女。彼女をよこしてもらいたい」

「エレナを?」

「それと、ヴィアンカの侍女、メアリ。彼女にも伝えてくれ」

「彼女たちが何かしました?お叱りなら、エレナの主人である、私が聞きますけど」

「聞きたいことがあるだけだよ」

「私に聞かせられないようなことですか?」

「アマンダ。彼女たちは、君達に仕えているけど、雇い主は私だよ」

「お父さまが、そんなに家庭に興味があるなんて、意外です」

 何を企んでいるのか、軽くひっかけてみる。

「これでも家長だからね。()()()()()()()()()()()いろいろ贈ったつもりだが」

 ・・・・・・負担をかける度?一瞬、何かが引っかかり、表情が動いた。

「そうでしたわね。高価な品を、ありがとうございました」

 しまった――――――!慌てて取り繕ったが、もう遅い。こんなあからさまな感情の動きを見逃すほど、甘い相手ではない。引っかけたつもりが、見事に引っかけられた。

「いいや、あの程度じゃ済まないことが、よくわかったよ。やはり、前提が違うと、色々不都合が生じるらしい」

 端正な顔に、穏やかな笑みを浮かべる父を見て、アマンダは、致命的な失敗を悟った。

 まずいまずいまずい―――――!何だかよくわからないが、何かがものすごくまずいことだけは、わかる。侍女に何を確認するつもりだったのか知らないが、自分の態度が、何かの確信を与えてしまったらしい。ものすごく、嫌な予感がする。


「お父さま。まさか、ヴィアンカを領地へやったりしませんわよね?」

 アマンダは、恐る恐る確認した。正式にセルマンと婚約したヴィアンカを、領地へ追い出すなんて考えられないが、この父なら十分あり得る。

「もし、そうなっても、君が婚約者に戻ることは無いから、安心したまえ」

 全く安心できないことを、サラッと口にする。訊いたのは、そこじゃないから。

「お父さま。はじめに言いましたけど、私の理想は、()()()()なんですよ」

「それは、()()()()()()()()()()()のかな?」

 何があっても―――――意味深な言葉。とりあえず、即答する。

()()()()()()()()()()()()!」

「・・・・・・」


 さすがに呆れているが、構うものか。ここまで言えば、いかに()()()()()()キツネ()と言えど、誰一人領地送りになどできないはずだ。さらに、

「もう済んだことに拘るのは、建設的ではありませんわ。しつこい殿方は、嫌われましてよ」

 アマンダは、ダメ押しとばかりに、父の一番嫌いな言葉を、上から目線で言ってやる。

「君の寛大な意見は、よくわかったよ。考慮しよう」

 ため息を吐き出して、ソファに身を沈めた父を見たアマンダは、一息ついたが、次の言葉を聞いて、がっくり来た。

「とりあえず、侍女を呼んでくれ。確認を怠っては、正しい答えが出ないからね」

 甘かった。だけど、父の顔を見て諦めた。澄ました表情はいつも通りだが、その眼には、強い光がちらついている。こんな時の父は、決して引かないことをよく知っていたし、何より、アマンダ自身が、もう限界だ。何の情報もないのに、これ以上の探り合いは不可能。

 そんな娘を見て、シュタイナー伯爵は、宥めるように告げた。 


「心配しなくても、少し話を聞くだけだよ。彼女たちに問題があるわけじゃないから、安心したまえ」

「年頃の娘に、おかしなことを言わないでくださいね?」

「そんなことはしないから、早く呼んでくれ」

 娘の頭の中で、自分はどんな人物像なんだと不満に思ったが、口に出してはそう言って退出を促したのだった。




伯爵編、結構長くなりそうです。

本編より長いかも、です。

本編は、一番印象的な場面を抜き書きしたせいで、こうなっています。

ご了承ください。


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