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ひとり旅  作者: 田中浩一
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「高速道路を見に行くか?」伯父さんが僕を誘ってくれました。犬の「エス」の散歩がてら町の中にできつつある、高速道路を見に行こうというのでした。

伯父さんは母の兄。僕は夏休みにおばあちゃんとその伯父さん家族の住む家に泊まりがけで遊びに来ていたのでした。

鹿児島県姶良郡加治木町。見渡す限りの田んぼだらけで、僕たちは、エスを先頭に田んぼのあぜみちを近道して、高速道路に近づいていきました。

そばで見ると、土台の斜面はとても急でしたが、エスは軽々と、伯父さんもなんとか上がっていきます。僕はまるで山登りのように腹這いになって上がろうとしますが、滑り落ちそうになりました。その時、伯父さんの大きな手が僕の手をつかみ、引き上げてくれました。とても大きく、力強く、温かかった、伯父さんの手・・・。

上にあがると、まだ中央分離帯もできてない状態の何もない砂利道をしばらく、鹿児島市内方面に向かって歩きました。

「いつできるんだろうな?」伯父さんがなぜか怒ったように言いました。どうやら、この道路ができることが嬉しくないようでした。

僕らは見晴らしのいい高速の上から、小便をして帰りました。家に着くと伯母さんが笑顔で迎えてくれました・・・・・。


ガタガタと鍋の蓋の鳴る音で目が覚めた。 味噌汁のいい臭いがした。見慣れない天井を見上げていた。そうか、お祖母ちゃんチだ。母は先に起きていた。

「浩一もご挨拶しなさい」

体の下敷きになってたせいで痺れている左手を振りながら仏壇の前にいく。そこには白黒写真の笑顔の、伯父さんの顔があった。癌だった。

いとこのお兄ちゃんとお姉ちゃんも起きてきて、お祖母ちゃんと伯母さんと、七人での朝食となった。背の高いよく喋る伯母さんが、

「夕べは眠れたね?」と、あの日と変わらぬ笑顔で聞いてきた。僕はご飯を頬張っていて喋れない代わりに大きく頷いた。

「うん、そんた、良かった!お代わりしやんよ!」伯母さんがおかわりを促したが、朝からはそんなに食べれなかった。

10時を回った頃から他のいとこもやって来て、ビー玉遊びやら自転車で町を走り回ったりした。天気は良かった。真っ青な空に魔法のランプから出てきたような入道雲が緑の山々に影を作っていた。僕はいとこのお兄ちゃんと二人乗りで探索していたが港にも走っていき、お兄ちゃんが堤防ギリギリを走っては僕を怖がらせた。有名な滝にも泳ぎに行った。あっという間に、日がくれていた。それまで青空だった空は茜色に染まり、真っ白だった入道雲は赤と黒に塗り分けられた。山々は自分達の影を長々と作っていた。

折り畳まれた提灯がそれぞれに配られた。年かさのお兄ちゃん達は長い一本の竹竿を前後に担いでその間にいくつかの提灯をぶら下げた。

お盆だった。ほかの家々からも下駄をカランコロン鳴らしながら 出てきた。お墓に着くとお姉ちゃんが 、

「おうちにつく前にロウソクが消えたらまた、やり直しだからね」と、言った。

お墓からロウソクに灯をともした提灯を持って家路につく。上手に歩かないと、提灯が揺れて中の灯がゆらゆらと揺れた。まるで、「揺らすな、上手く運べ」と、ご先祖様に言われているみたいだった。家に着くと、ところ狭しと提灯をぶら下げた。

夕御飯は大勢で、楽しくて豪華な食事だった。高い壁から見ているお爺ちゃんや伯父さん、その前のご先祖様たちもみんな、写真のなかで笑っているかのようだった。

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