9.
(※ミランダ視点)
私は約一か月かけて、シェリルの行動を観察していた。
彼女がいつ、どこへ行くのか、その行動パターンを調べていた。
そして、その行動パターンを把握したので、私は次の行動に移ることにした。
待ちに待った、シェリルへの報復である。
雨が降っている中、私は夜道を歩き、ある建物に到着した。
そして、誰にも目撃されていないことを確認して、その中に入った。
敷地はそこまで広くはないが、三階建ての雑貨屋で、品ぞろえが豊富な人気の店だ。
今は営業時間外で、誰もいない。
私は不法侵入したわけではない。
私はここのカギを持っている。
この店のオーナーだからだ。
カギを持っているのは、私とこの店の店長だけである。
さあ、いよいよ、彼女に報復する時間が近づいてきた。
私は明かりを点けず、暗い建物の中を進んだ。
目指す場所は、この建物の屋上である。
しかし、アクシデントがあった。
私はつまずいて、よろめいた勢いで台に手をぶつけてしまった。
そこそこの勢いでぶつかったせいで、台の上に置いてあったガラスの置物が床に落ち、粉々に砕けてしまった。
「あぁ、もう……」
置物が割れた音は、おそらく外を歩いている人には聞こえていない。
雨が降っている音でかき消されているはずだ……。
今は立ち止まっている場合ではない。
もうすぐシェリルが現れる時間なのだ。
私は屋上を目指して歩き始めた。
「ふぅ、着いたわ……」
階段を上り、屋上に到着した。
大通りに面した方へ私は向かった。
そこから見下ろし、シェリルの到着を待っていた。
しばらくすると、街灯に照らされ、こちらに近づいているシェリルを確認した。
彼女は細い裏通りに入ったので、私も裏通りに面している方へ移動する。
そこから見下ろしていると、予想通り彼女は本屋に入った。
彼女が入った本屋と、今私がいる建物の間には細長い道しかない。
ここからなら、彼女を狙うことができる。
私は手に、レンガを持った。
本屋から出てきた彼女に、ここからレンガを落として当てるのが、私の狙いだ。
彼女が今日、この時間に、この本屋に来ることはわかっていた。
彼女は毎週水曜日のこの時間に、この本屋に来る。
今日は雨が降っているが、先週も雨が降っている中現れたので、今日も来ると思っていた。
私がいるところは暗いので、周りからは私の姿が見えない。
本屋の出入り口には明かりが灯っているので、シェリルが出てくればすぐにわかる。
私はレンガを構えたまま、シェリルが本屋から出てくるのを待っていた。
そして、ついに彼女が出てきた。
私は持っていたレンガから手を離した。
レンガはどんどん落下していく。
「ふふ、計画通りね。うまくいったわ」
レンガが当たった彼女はその場に倒れ、動かなくなっていた。