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4.

 アイザックが到着したことで、少しばかり私も緊張していた。

 私は、遠目に彼の様子を見ていた。

 屋敷に到着したアイザックは連れの執事と共にボディチェックを受けていた。

 これも父上が私のために提案してくれたことだ。

 少々やり過ぎな気もするが、私の安全面を考慮してのことである。


 この屋敷には、誰も凶器を持ち込めない。

 これで、以前のような騒動も起きない。

 父上は心配し過ぎな気がするけれど、私のことを考えてくれているのは素直に嬉しかった。

 アイザックたちはボディチェックが終わったあと、屋敷に入っていった。

 私はマッチョくんと二人で庭を散歩して、再びテラス席でコーヒーを飲んだ。

 その頃にはようやく、マッチョくんの威圧感にも少し慣れてきた。


 夕方になったので、私たちは屋敷に入った。

 すると、アイザックの執事が血相を変えてこちらに走ってきていた。

 マッチョくんは少し警戒した様子で私の隣に立っている。


「あ、あの、わたくし、とんでもないことに気付いてしまいました!」


 執事が震えた声で話し始めた。


「もしかすると、私の勘違いなのかもしれないのですが、実は──」


「おい! 何を話しているんだ? そんな奴と話す暇があるなら、正装に着替えるのを手伝ってくれ!」


 執事の話は、タイミング悪く現れたアイザックによって遮られた。

 ……というか今、私のことをそんな奴呼ばわりした?

 やっぱり反省なんて、していないんじゃないの?


 アイザックは右手で松葉杖をつきながら、執事と共に去っていった。

 そのまま転んで左足も怪我すればいいのに……。

 おっとっと、ついついブラックな部分が出そうになった。

 和解するという目的を忘れてはならない。

 我慢、我慢っと。


 ディナーまでもう少し時間があるので、私たちは時間をつぶすことにした。

 ちょうどチェスの駒があったので、私はマッチョくんとテラス席で対戦することにした。

 結果は私の勝利。

 アイザックにあんな奴呼ばわりされて少々機嫌が悪かったけれど、綺麗な勝利を収めたことで、すっかり私の機嫌は直っていた(あとで聞いた話だけれど、この時のマッチョくんは接待プレイをしていたらしい。できる男だ)。


 調子をよくした私は、もう一度マッチョくんと対戦しようとしたのだけれど、その時……。


「あああああああああ!!!!」


 突然、屋敷の中から叫び声が聞こえてきた。

 マッチョくんと目が合う。

 確かとはいえないけれど、さっきの執事の声のように聞こえた。

 私は声が聞こえた方へ駆け出す。

 マッチョくんもついて来た。


 そして、叫び声が聞こえた部屋に到着すると、メイドとアイザックが部屋の前に立っていた。

 私は二人の横を通り過ぎ、部屋の中を覗いた。


 そこには、お腹から血を流して仰向けに倒れている、執事の姿があった。

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