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18.

「あの、傘を盗んだこと、本当にすみませんでした! ほんの出来心だったんです!」


 私の傘を盗んだ彼女は、頭を下げて謝ってきた。

 ベッドに座っている彼女は、何とも痛々しい姿だ。

 頭には包帯を巻いていて、顔には痣ができている。

 倒れた時に腕の骨が折れたので、ギブスもつけている。

 命に別状がなかったとはいえ、大怪我であることは間違いない。

 さすがにそんな彼女を、責めることはできなかった。

 彼女はもう、罰を受けたようなものだ。


「もう、二度としないでください。いいですね?」


「はい! 本当に申し訳ありませんでした!」


 彼女は再び頭を下げた。


「それでですね……、今日ここへあなたに会いに来たのは、事件のことを伺おうと思ったからなんです。当時のことを、詳しく話していただけませんか?」


 私は彼女に尋ねた。

 彼女の証言をまとめた報告書は見たけれど、直接話を聞けば、何か犯人の手掛かりがつかめるかもしれない。


「はい、えっと……、あの日は、読みたい本があったので、雨が降っているなか本屋に行きました。そして、目的の本を買ったあと、店を出ようとしたら、傘立てにあった珍しい傘に目がいって、それで……、その傘を盗んでしまいました……。そして、本屋を出て傘を差してから、家に帰ろうとしていたんです。そうしたら突然、頭に衝撃が走って……、そのまま意識を失いました。そして、気付いたらこの病院にいました」


「そうですか……、突然衝撃が走ったと言いましたが、つまり、犯人の姿は見ていないのですよね?」


「ええ、見ていません。顔どころか姿も見ていないので、性別や特徴なども、何もわからないのです。あの……、事故ということはないのですか? どこか近くの建物のレンガが崩れたとか……」


「いえ、事件に関する資料を見ましたが、近くにあのようなレンガが使われている建物はなかったようです。誰かがあのレンガであなたを殴ったのです。えっと、本屋を出た時に、誰かが近づいてくる気配とかはありませんでしたか?」


「いえ、気付きませんでした。あの時は雨が降っていたし、傘もさしていたので、それで分からなかったのだと思います」


「そうですか……」


 確かに雨のせいで音は聞こえなかっただろう。

 足音は大きくなるだろうけれど、あれだけ雨が降っていれば、それも聞き取るのは難しい。

 それに、傘を差していたせいで視界も少し狭くなっていた。

 しかし、傘を差していたおかげで、レンガで殴られた衝撃が少しは和らいだという側面もある。


 まあ、おかげで私のお気に入りの傘はボロボロですけれどね?

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