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17.

「レナードさん! 私が捜していた物は、これですよ! 泥棒に、この傘を盗られていたんです!」


「ええ!? この傘、貴女の物なのですか!?」


 彼は驚いていた。

 私も、まさかこんなところに自分の傘があったなんて思わなかったから、驚いていた。


「あぁ……、お気に入りの傘なのに、なんてひどい……」


 傘はレンガが当たった衝撃で、骨が折れていた。


「えっと……、どういうことなんでしょう? どうして、貴女の傘がこんなところに?」


「被害者が倒れていた現場、この本屋に、実は私もいたのです」


「ええ!? どういうことですか!?」


「私、この傘を差してこの本屋に行ったのですが、店から出ようとした時には、傘がなかったのです。私の傘の代わりにほかの傘があったので、つまり、その人に盗まれたのです。こんな特徴的な色や柄の傘を、間違えるなんてことはないでしょう?」


「ええ、確かに、この傘はほかの傘とは間違えようがありませんね」


「ほとんど流通していない、オーダーメイドの傘なんですよ。お気に入りの傘だったのに、こんなボロボロに……」


「え、というか、待ってください。貴女、あの本屋にいたのですよね? 店から出る時に、事件があったと気付かなかったのですか?」


「それがですね、私が店を出たのは、こちらではなく、裏口から出たのです。ほら、あの日は雨がたくさん降っていたでしょう? そして盗まれたので、私は傘を持っていませんでした。店主さんもちょうど傘が折れたばかりで、貸してあげられなくて申し訳なさそうにしていました。そこで私はダメもとで、裏口を使わせてほしいと聞いてみたのです。裏口がある通りの方が、私の家に近いので。一度は泥棒の傘を借りようとしたのですけれど、なんだか私まで泥棒になった気分になりそうだったので、それはやめました」


「なるほど、裏口から出たから事件に気付かなかったのですね」


「ええ、もう、店から家まで猛ダッシュですよ。裏口から出たので多少距離を短縮できたとはいえ、まあ、結局はずぶ濡れで帰りましたけれど……」


「それはお気の毒に……」


「あぁ……、まさかこんな形で傘が見つかるなんて……。あ、傘が見つかったから、私はもう憲兵さんのお手伝いをしなくても構いませんよね?」


「え……」


「はは、冗談ですよ。……さて、状況から考えると、事件の被害者の方は、私の傘を盗んだ犯人だったわけですが……、その人、まだ病院にいるのですよね?」


「ええ、まだいますよ」


「では、被害者であり、また加害者でもあるその人に、会いに行きましょう」

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