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8.本音を言っても良いかしら?

本日4話目となります。

 私は盛大なため息を()いて気を落ち着かせデニスに問いかける。



「世の中には好きと嫌いしか無いの?」


「……そんなことは言ってないだろ」


「私の中でデニスは、完全に親戚の一人よ。嫌いではないけど、好きでもないわ」


「なんで……? だったら、前は? 婚約者の時は、好きだったんだろ?」


「前は……」




 本当の私の気持ちを言ったら、デニスが傷ついちゃわないかしら?


 私はちょっと躊躇(ためら)って、ブラッドを見た。


 彼は私の気持ちも言いたいことも分かってくれているようで、困ったように首を傾げる。


 ブラッドの気持ちとしては、ここでハッキリ言ってしまえば良いと思っていると思う。


 でも、私がデニスを親戚の一人として扱っているから、私の気持ちを優先させようとして『どっちでも良いよ。好きにして良いんだよ』って言ってくれてるんだ。


 ブラッドの気持ちが嬉しくて、熱いものが湧き上がってくる。




「ブラッドリーの前で言い(にく)いかもしれないけど、ハッキリ言ってくれて良いんだ。ステファニーの気持ちを正直に言ってくれ」




 ブラッドの優しさに感動してるのを台無(だいな)しにされて、さすがの私もイラッときた。


 デニスから見たらもしかして、ブラッドを捨てるのがかわいそうで言えないようにでも見えたのかしら?


 よろしい。


 私の正直な気持ちが聞きたいのなら、存分に聞かせてあげようではないか。




「デニス。私、子供のころからずーっと思ってたんだけど……」


「そんなに前から……俺のことを?」


「えぇ。(なん)なら歩き始めたころから……かもしれないけど」


「なんだよ。それならそうと言ってくれてたら、俺だってもっと前にステファニーと婚約したのに」


「あなたのこと、出来の悪い()くらいにしか思ってなかったわ」


「はあ? ステファニー?」




 いままでにこやかに笑っていたデニスの顔が一瞬で(ゆが)んだ。


 今や真っ赤になって頭から湯気が出そうそうな様相(ようそう)である。


 だからって追撃を()めたりしない。


 私は長年に渡り心の中に(とど)めていた気持ちを解放することにした。




「聞こえなかった? デニスのお()りはものすごく大変だったって言ったの」


「ななな、何を言ってるんだ!」


「だから、結婚の約束がなくなって、私の役目をブリトニーさんが代わってくれるって聞いて、本当に嬉しかったのよ?」


「ステファニーさん。それ、どういう意味!?」


「う、嘘だ! だってステファニー、お前はいつだって『デニスはしょうがないわね』って、笑って俺の世話を焼いてくれてただろ?」


「そりゃあ、笑うわよ。せっかく私が想定内なら何とかなるようにって、こっそりお膳立てしてるのに、その予想の斜め上を行く失敗や問題を起こすんだもの。もう笑うしかないでしょう?」




 信じられないと、こぼれ落ちそうなほど目を見開く彼らを前に、私が肩をすくめてブラッドに大変さをアピールすれば、頭を()でて(なぐさ)めてくれた。


 それは『キミは悪くないよ。よくがんばったね。良い子いい子』って言ってくれてるみたいで……。


 その優しさが(じか)に伝わってきて心地良い。




 そうだ。


 私にはこういう癒しが必要だったんだ。




 がんばった私を褒めて、癒して、そして甘えさせてくれる。


 私……そんな人と結婚したかったんだわ。


 こんな時だけど、ブラッドの素晴らしさを実感できるなんて……。


 デニスもたまには役に立つのね。




「お、俺をバカにしやがって!」




 あら、こんな時ばっかり勘が良いわね。


 変なところで感心していると……。




「そうよ、ステファニーさん。それは言い過ぎでしょう」




 激しく怒るデニスに抱き付き、彼を(なだ)めながらブリトニーが口を出してきた。




「ステファニーさん! 本当に良いんですか? 幼なじみの婚約者で、ずーっと一緒だったんだから、欠点も知っていて当然だけど。良い所もたくさんあったでしょう? だからそれを思い出して?」


「デニスの良いところ?」




 私は思わず考え込んでしまった。


 本当に、咄嗟(とっさ)に何も出てこないなんて、そんなわけないわよね?


 ダメダメ、現実逃避しても意味ないわよ。


 何か一つくらい……。




「うーん……」


「何か言えよ。俺の良い所なんていっぱいあるだろう!」


「そうねぇ。多分あるはずなのよねぇ……」




 デニスは怒りで震え出し、ブラッドは何かに()えて肩を震わせた。


 何にも出てこない私と怒り心頭のデニスに焦りを覚えたのか、ブリトニーは慌てて胸の前で手を組み潤んだ瞳で訴えてきた。




「デニスが私を好きになったことが許せないの? だったらそれは私が謝るわ。私が好きだって言わなかったら……そうしたらデニスだって……」


「いえいえ。そうじゃないわ。それにもう、私にはブラッドっていう素敵な婚約者が居るのだし、むしろ感謝しているくらいなんだから」


「そんなの……そんな強がりは言わなくても良いのよ? 私、デニスの()()はあなたにお返しするわ。大丈夫。今からだって間に合うわ」




 グイグイ来るブリトニーに私は気圧(けお)されていた。


お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければブックマークや下の【☆☆☆☆☆】をタップして、応援いただけたら嬉しく思います。

今後もみな様に気に入っていただける作品作りを心がけようと思っていますので、よろしくお願いします。


本日は複数回投稿を行なっていますので、話数をお間違えの無いようにお願いします。

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