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7.俺は辺境伯に成る!

本日3話目です。

 だけどここで一人、顔色を変えた人物がいた。




「え? どう言うこと? それじゃあ、デニスと結婚しても、辺境伯夫人には成れないの?」


「えぇ、そうね。デニスは子爵家の三男だから……」


「そんなぁ……」




 がっくり肩を落として落胆する彼女に、私もブラッドも顔を見合わせ困惑した。




「でも、デニスは剣の腕も良いし、何年かすれば騎士伯になれるわよ」


「騎士伯!? そんなのダメよ。デニスが辺境伯になるには、どうしたら良いの?」


「えぇ……?」


「条件は何? 教えなさいよ!」




 すごい勢いで聞かれてドン引きだ。




「だから、私とデニスが結婚する以外に、彼が辺境伯に成れる可能性は無いの。でもデニスはあなたと結婚するんでしょう? だからあとは、デニスに真面目に働いてもらって、騎士伯を賜るほうが現実的よ」


「もう、ダメなの……?」




 彼女はデニスと結婚して、辺境伯夫人になりたかったのかもしれない。


 でもそれは無理だと分かってしまった。




「じゃあ俺、ステファニーと結婚する。それで、俺は辺境伯になる!」


「なんだと!?」


「え? ちょっと待って、二人とも」




 デニスのとんでも発言にブラッドの堪忍袋(かんにんぶくろ)()がブチっと切れた。


 ローテーブルを挟んで胸ぐらを掴まれたデニスと、射殺(いころ)しそうな勢いのブラッド。


 修羅場(しゅらば)待った無しの状況に、私は大いに慌てていた。




「ブラッド、気持ちは分かるから。一回だけ我慢してちょうだい」




 私の仲裁にブラッドは渋々手を離した。


 首元を(こす)ってヤレヤレ的なデニスにちょっとイラッとしつつ、もう一度彼の真意を聞き出そうとする。




「デニス、あなたなぜそんな事言い出したの? 私とブラッドはもう婚約が決まって、これからお披露目も控えてるの。分かってる?」


「そんなの、まだ発表前なんだから変更できるだろ? 元々は俺がステファニーと結婚するはずだったんだ。元に戻すだけなんだからいいだろ?」


「あ゛ぁ?」




 予想の斜め上を行くデニスの謎思考について行けない……。


 私は思わず天を仰いでため息を()き、怒り震えるブラッドの手を自身の手で包み込んだ。




「ブラッド……」




 激昂(げっこう)したブラッドを、何とか(なだ)めることに成功した私は、務めて冷静に語りかける。




「デニス? それだとあなた、ブリトニーさんはどうするの? 彼女と相思相愛だから、私との結婚を()めたんでしょ?」




 するとデニスは隣を見て、彼女の手をしっかり握る。


 そしてにっこり微笑み合った。




 これはいったい何が始まるんだろう?


 どうしよう。


 怖いけど見てみたい……。


 にっこり笑ったデニスは神々(こうごう)しかった。


 その彼が天使の微笑みのままブリトニーに話しかける。




「俺が辺境伯になるには、ステファニーと結婚しなくちゃならない。ブリトニー、キミなら分かってくれるだろう?」


「えぇ。私、わがままなんて言わない。デニスの()()になりたかったけど、それは諦めるわ」


「ありがとう、ブリトニー。そんなに俺のこと考えてくれるなんて、本当にキミは優しいね」


「良いの、私の幸せは、デニスの幸せの()にあるんだもの」




 私とブラッドはこのやり取りをお芝居でも見るような気持ちで見守った。


 私たちには理解できない。




「と言うことで、俺はステファニーと結婚することにするよ」


「「はぁ?」」


「え? そんなに驚かなくても。元に戻すだけだって」


「ちょっと良いかしら? 私はともかく、ブラッドをどうするつもりなのか、一応聞いて置きたいんだけど」




 私から剣呑な気配を感じ取ったのか、若干(じゃっかん)腰が引けてるけど、それでもこの怒りの度合いをまだ測りきれてないらしい。




「ブラッドリー? それは……。あぁ、そうだ。卒業したら、辺境騎士団で小隊長として迎えるのはどうだ? 学園出てすぐにだなんて、けっこう高待遇だと思うんだけど」


「そう。それじゃあ、私は?」


「ステファニー? だからステファニーは俺と結婚……」


「しません」


「は?」


「だって私、デニスを好きじゃないもの」


「え?」




 本当に驚いている彼に、私のほうがもっと驚いた。




「嘘言うなよ」


「嘘なんて言ってないわ」


「だって、いつも俺の後を付いて回ってただろ?」


「それは目を離すとすぐ何かやらかすから、見張ってただけよ」


「家族なんだから遠慮するなって言ってたし……」


「それは婚約者だったんだもの。将来結婚するって思ってる人なら、そのくらい言うでしょう」


「じゃ、じゃあ、俺が試合に勝った時とか、あんなに喜んだのは?」


「幼なじみに良い事があったら、普通の人は喜ぶわよ。むしろ喜ばない人のほうが少ないと思うけど?」


「だって、すごく褒めてくれたし……嫌いな奴ならそんな事しないだろ?」




 それを聞いて私が(ひたい)を手で押さえると、ブラッドに『苦労するな(ポン)』と優しく肩を叩かれた。


お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければブックマークや下の【☆☆☆☆☆】をタップして、応援いただけたら嬉しく思います。

今後もみな様に気に入っていただける作品作りを心がけようと思っていますので、よろしくお願いします。


本日は複数回投稿を行なっていますので、話数をお間違えの無いようにお願いします。

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