37.エピローグ〈ケビンside〉
〈ケビンside〉
半年後。
ケビンは久しぶりに父の別宅を訪れていた。
「アン、久しぶり。その後、義母上の様子はどうかな?」
「今朝は一週間ぶりに足枷を外していただけたようです」
「あれ? 確か先月は十日くらい、ベッドに繋がれていたような……?」
「はい。あの時は出入りの宝石商と親密なお付き合いがあったようで……」
「そうだった、そうだった。……で? 今度は何をしたんだい?」
面白そうな話だったので、嬉々としてアンに詳細を求めたら……。
アンには『困った坊っちゃま』だと、半分呆れた目を向けられた。
「新しく入った庭師とお話していた所へ、たまたま大旦那様が通りかかったようで……」
「へぇ」
言いながら庭に目をやれば、二十歳そこそこで、平民の割りに顔立ちの整った金髪の青年が庭木の剪定をしていた。
義母上が好みそうなタイプだ。
処分されない所をみると、何か理由がありそうだ。
まさか、もう少しエサとして使うつもりなのだろうか?
「彼女、懲りないんだね……」
「えぇ、今までの方はすぐに体調を崩したり、元気を失くされたりしましたでしょう?」
確かに……。
運悪く見初められ、連れてこられては、父の悪癖に耐えられず病んでいく。
その姿は気の毒以外の何物でもなかった。
だからこそ今回は特別に、好みを押さえた上でなるべくタフな子を俺の手で探したのだから。
「ですが、今度の奥様はかなり変わってらっしゃいまして……。自分で悪さをなさっても、お仕置きから少し経つと……すっかり忘れておしまいになるんです」
「……そうらしいね」
もしかしたらまだ逃げるのを諦めてないのかな?
この屋敷に、色仕掛けが効くような者は出入りできない事を知らないのかもしれないけど。
「今度の奥様は見上げた根性の持ち主でございますね。手を替え品を替え、何度も誤ちを繰り返してらっしゃる……」
「困ってるの?」
「いえいえ。大旦那様はその度に嫉妬なさりますから、これまでのように退屈なさる暇がございませんの。ですからとても助かっていますわ」
「それは素晴らしい」
「えぇ。今までは飽きてくると次に目が行ってしまい、怖くて若いメイドは雇えませんでしたから、本当に素晴らしい奥様です」
アンは朗らかに微笑む。
そこへ家令が姿を見せた。
「若様、良い所へ」
「おや、何かな?」
「いえ、若様の伝手で、見目の良い下働きなど居ましたら、一人ご紹介頂きたいのですが……」
俺は家令の顔を黙って見詰めた。
笑顔だが、目は笑っていない。
「えーと男……だよね?」
「はい」
「一人だけで良いのかな?」
「と仰いますと?」
「半年おきに新しく雇ったらどうだろう?」
「……それは願ってもない事ですが……よろしいので?」
「俺はかまわないよ」
「でしたらぜひ、お願いいたします」
「任せなさい。家内安全が我が家のモットーだからね」
そう言って笑うと、二人も顔を見合わせ微笑んでいた。
end
この作品を見つけて、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
そして私の拙い作品にお付き合い頂き、大変感謝しています。
少しでも『面白かった』と楽しんでもらえていれば嬉しいのですが……。
また他の作品でもみな様にお会いできるように、頑張って書いていこうと思っています。
読んでいただいたみな様に厚く感謝いたします。
紗奈(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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