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31,それぞれの反応

〈第三者side〉




 ブリトニーがデニスと『運命の再会』をしてから、彼女はデニスを誘惑し(とりこ)にした。


 そんなに早く取り込まれるにはデニスにも原因はあったが、側近候補たちの再三の忠告にも耳を貸さず。




『ブリトニーは俺に、そんな嘘を()いたり騙したりしない!』





 そう一蹴したものだから、せっかくの側近候補者たちも見切りをつけたようだ。


 辺境伯と繋がりを絶やせない彼らの家は、大事な息子の代わりにデニスのお()りができる代理人──つまり次男以降の者を送り込んでくるようになった。


 それでもデニスが何か気が付くことはない。


 ブリトニーと遊ぶのを(とが)められなくなった分、良い人事だと思っていたくらいだ。


 ブリトニーのほうも、デニスは自分のモノになったと──これで辺境伯夫人になれると信じてやまない。


 結婚に関しては、地位と財力のある男性と条件がついていたため、もし学園を出るまでに誰かと婚約できなかったら、父親が見付けてきた縁談を受けなくてはならないと、薄々勘づいていた。


 だから、デニスと結婚することは、彼女にとって一石二鳥。


 何より彼女の夢が叶う、最高の結婚だった。




 * * * * *




 デニスとブリトニーが順調に逢瀬を重ねる中、学園内の交友関係はガラッと変わっていた。


 ブリトニーが狙っていた本命の令息たちは元々彼女のことは遊びでしかなかったので執着しなかった。


 彼らはそれなりに頭も要領も良く、彼女がデニスと付き合い始めた段階で手を引いて次の遊び相手に移っている。


 問題はブリトニーと今まで遊び歩いていた、二番手以下の令息たちだ。


 彼らは次にブリトニーを独占できるのは、各々(おのおの)『自分だ』と思い込んでいた。


 なのに本命と手を切ったブリトニーが選んだのは今までノーマークだったデニスだったのだ。




「なんだあいつ」


「この学園にあんな顔良いヤツいたか?」




 二人と偶然すれ違った男子生徒のグループがそれぞれ二度見した。




「俺のブリトニーが……」


「せっかく僕に回ってきたと思ってたのに、酷い……」


「そう思うならあいつに文句言ってこいよ」


「え? 嫌だよ」


「あんな細いんだし、お前なら勝てるんじゃないか?」


「お前知らないのか? あいつデニスだろ?」


「えっ! デニス!? あいつが……じゃあ無理かぁ」


「なに? あいつそんなにすごいヤツなの?」


「はぁ? 騎士科のデニスって言ったら、相当剣の腕が良いって……知らないのか?」


「うへぇ。あれが騎士科のデニス? 顔も剣も良いって、そんなのズルく無いか?」


「いや、ズルくは無いだろう」


「え? 何で?」


「……あいつは脳筋が多い騎士科でも、ズバ抜けて頭悪いらしいから……」


「……天は二物(にぶつ)は与えても、三物(さんぶつ)は無理ってか。ハハハ」


「それにあいつ、ステファニー嬢の婚約者だって聞いたぞ?」


「あぁ。それならきっと、あとで痛い目見そうだな」


「南の辺境騎士団は最強だしな。舐めたらヤバいって有名だもんな」


「そうか……。それなら俺は、あいつに天誅(てんちゅう)が下るのを楽しみにしてようかな」


「うん。見てるだけのほうが安全だしな」




 残念な彼らだが、馬鹿では無かったようだ。


 彼らがこの件に関して盛大に盛り上がれるのは、そう遠い未来では無い。




 * * * * *




 デニスはブリトニーと付き合う事で、多くの男子生徒から反感を買っていたが、本人の強さとある人物たちの暗躍(あんやく)により邪魔されない状態が続いていた。


 そしてデニスの婚約者として認知されていたステファニーのほうはというと……。




 昼休みのカフェテラス。


 人が多く席の確保に苦労していたステファニーに、声を掛けようと狙う者たちがいた。


 見た目から、きっと何処ぞの伯爵令息だろうと思われる三人で、ステファニーやシンシアに声を掛けようとしている所から、次男以降の婿入り希望者なのだろう。


 もう席を確保してあって、あとは声をかけ一緒に食べようと誘うだけだ。


 しかし、それは実行直前で阻止(そし)された。




「あの子たちに何か用か?」


「何だよ、邪魔すん……」




 振り返るとそこには黒髪の男子生徒と、その友人らしき白金(プラチナブロンド)の髪とレンガのような赤毛の男子が立っていた。




「あ……ブラッドリー先輩」


「グイド先輩とサミュエル先輩も!?」


「え? 先輩? 失礼しました!」




 三人が咄嗟に頭を下げる。


 彼らは同じ騎士科の後輩らしい。




「で、ここで何を?」




 三人は困惑して目配せし合っている。


 彼女たちに声をかけるのは不味かったのだとは分かるのだが、何が先輩たちの逆鱗に触れたのかは理解できていないらしい。




「こいつらはきっと、()()()()()()んだろう。な?」


「「はい!」」




 聡い二人は元気よく返事をした。


 しかし一人鈍い奴が混ざっていたようだ。


 彼はコーンイエローの明るい金髪のシンシアでは無く、蜂蜜色の金髪のステファニーに視線を向け。




「えーと俺らは、あの金髪の令嬢たちと……」


「ほーぉ……」




 ブラッドリーの低い声に三人の後輩はビシッと直立した。


 それに苦笑したグイドが優しく語りかける。




「シンシア嬢も、ステファニー嬢も、メイシーの友だちなんだ」


「え? あ、はい……」


「メイシーの友達だからね。やっぱりパートナーは、それ相応の人でないとね」


「そそそ、そうですよね、もちろんです。……な?」




 真ん中の一人がそう言うと、横の二人も首が取れそうなほどブンブンと頷いた。


 貴族の爵位より、学園内の上下関係に厳しい騎士科では先輩の言葉は絶対だ。


 そして(ほう)(れん)(そう)は速やかに、迅速に、確実に(おこな)われる。


 ()くしてメイシー・ウェイト伯爵令嬢、ステファニー・グランデ辺境伯令嬢、シンシア・オールディ侯爵令嬢の三人は、手を出してはいけない令嬢として彼らの中に浸透していった。


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