表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/37

3.お見合い

本日3話目です。

 あれからブラッドリーとは、学園内でたまに顔を合わせれば話をするようになっている。


 すると彼はメイシーの婚約者グイドと仲の良い友人だと判明した。


 それからはブラッドリー、グイド、サミュエルと、メイシー、シンシア、そして私の六人でお昼を過ごすほど仲良くなった。


 そしてある日のお昼休み。




「あれ、また会ったね」


「あら、ブラッドリーも売店?」




 一緒に並び始めた私たちは、その日のことや友人の笑い話をし、その日も一緒に食事をすることになった。


 最初はたわいの無い会話が続いていたが、グイドが次の休みにみんなで出かけないかと誘ってきた。




「あ〜ごめん。俺行けない。実家に呼ばれてるんだ」


「えぇー! なんだよ、そんなの断ってみんなで遊ぼうぜ?」




 サミュエルがブラッドリーに食い下がったが、彼はどうしても外せない用事なのだと断っていた。


 そこで私も、これは今しかないと思い口を挟む。




「私も実家に呼ばれてて……ごめんね」


「そうかぁー。ステファニーもか……残念」


「でも、ステファニーは仕方ないよ」


「デニスのせいで色々あるのでしょう?」


「うん……まぁ……」




 メイシーやシンシアが擁護(ようご)してくれたので助かった。


 だけど、みんなと一緒に遊びたかったと残念なのは私も同じ気持ちだった。


 そんながっかりしている私にブラッドリーが話しかける。




「実家の用事って、そんなに気乗りしない事?」


「え? あ……そうね。あまり楽しみにはできないっていうか……」


「ふーん」




 なんだか不機嫌そう?


 いや、もしかして慰めてくれようとしてたの?


 それを私は分からずに無下(むげ)にしてしまったのかしら?




「あの、えーと。でも、嫌じゃないから。うん。ちょっと堅苦しいのが苦手っていうか……。ね? だからその……気にしてくれてありがとう」


「……おぅ」




 良かった、怒ってない。


 ブラッドリー、気を悪くしたかと思ったわ。


 私はそれでも『みんなは遊びに行けて良いなぁ』と思って、ちょっと後ろ髪を引かれたまま、おじい様の待つ実家に帰省したのだった。




 * * * * *




 今の私は学園が休みの日に婚約者探しのため、おじい様の探して来たお相手とお見合いを繰り返す生活をしていた。


 候補者全員に会ってから誰にするか決めると言われていて、この日がやっと最後の一人だった。


 そしてその場に現れたのは……。




「ブラッドリー!?」




 心臓が止まりそうなほど驚いた。




「ごきげんよう、ステファニー嬢」


「あ……ごきげんよう、ブラッドリー殿」


「やっぱり相手が誰だかわかってなかったんだ?」




 ジッと見詰められ、言い逃れは出来そうもなかった。


 この瞬間なぜ今日はおじい様が同席しないのかとか、そう言えば名前を教えてもらってなかったとか、変だと思っていたこと全てに納得がいった。




「どうして……昨日も会ったのだから、教えてくれれば良かったのに」


「いや、最初は言おうかとも思ったんだけど……今日の見合い相手に全く興味なさそうだったから、少し驚かしてやろうかと……驚いた?」




 悪戯が成功した子供のようにニカっと笑われて、すっかり怒れなくなってしまった。


 だって婚約者を決めなければダメだと分かっていたのに、今度もまた家の都合で決まるんだろうってタカを括って、相手のことなんて知らなくても良いって放置していたのは私なんだから。




「でも、どうしてブラッドリーが? あなた長男だって言ってたでしょう?」




 そうだ。


 長男は家を継ぐのだから、グランデ辺境伯家に婿入りは無理なのに……。




「あぁ、俺の父は騎士伯なんだ。だから俺が継ぐものは何も無い」


「えぇぇ! それなら……本当に?」


「本当に俺は、ステファニーの婚約者候補だよ」




 こうしてブラッドリーのドッキリ作戦は成功したのだった。




 * * * * *




 この日の夜。


 私はおじい様との晩餐(ばんさん)で、見合い相手について聞かれることになる。


 もちろん候補者の中から私が選んだのはブラッドリーだった。


 おじい様も彼を気に入っていたらしく、だからこそ最後にブラッドリーと会わせたのだと笑っていた。


 彼は剣の腕だけでなく、学業の成績も良いらしい。




「デニスは子供の時から見ているから、多少出来が悪くてもかわいくてな。つい甘やかしてしまった」




 おじい様が言うには『馬鹿な子ほど可愛い』がそのまま当てはまっていたようで、デニスが頼りなくても私や優秀な側近を揃えることで、何とか補えると思っていたらしい。




「デニスのヤツ、剣の腕だけは良かったからな。辺境を守るためにはそれがあれば何とかなる」


「それは私もそう思っていたので……」


「しかし、その分ステファニーには領地経営の勉強を詰め込んでしまった。すまなかったな」




 眉尻を下げたおじい様に私は微笑(ほほえ)んで首を振る。




「謝ることないわ。私も勉強は嫌いじゃなかったんだから」


「そう言ってくれるか。まあ、今度の相手はそんな心配はない。お前はもうそれほど勉強しなくても、無理ない程度で構わないよ。ワシも肩の荷を降ろせそうだ」


「デニスも好きな人と結婚できるし、これで良かったのよ」




 私たちはこの結果に納得し、満足していた。


お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければブックマークや下の【☆☆☆☆☆】をタップして、応援いただけたら嬉しく思います。

今後もみな様に気に入っていただける作品作りを心がけようと思っていますので、よろしくお願いします。


本日は複数回投稿を行なっていますので、話数をお間違えの無いようにお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ