26.進み行く道①〈ブラッドリーside〉
〈ブラッドリーside〉
そのあと俺がどうしたのかというと。
特に何かしようとはしなかった。
騎士科と家政科は隣の建物だし『普通に友だちとして話せたら良いな』くらいにしか思ってなかった俺は『グイドの友だち』と『メルシー嬢の友だち』なんだから、そのうち会って話す機会もあるだろうと、呑気に構えていたのだ。
しかしその予想は裏切られる。
入学したてでも騎士科の訓練は厳しく、演習で学外の荒地や森に入る合宿が度々行われていた。
だから中々ほかの科と交流できず、疲れてるから休みの日に遊びに行くのも億劫で、グイドですらまともにメイシー嬢と逢えてない。
それがやっと落ち着いてきたのは、入学して半年くらい経った頃だった。
「なぁグイド。メイシー嬢の友だちで、子爵の五男でも良いって言ってくれる子、いない?」
サミュエルの言葉にグイドが顔を顰めた。
顔にデカデカと『こいつ何言ってやがる』って書いてある気がして、俺もさすがにサミュエルを憐れんだ。
「サミュエル。お前、ここの家政科って何習っている所か知ってて言ってるんだろうな?」
「家政……うーん。よく分かんないけど、屋敷の管理とかそういうのができるように成るんだろ?」
「ほう。話は変わるが……サミュエルは将来どうなるつもりなんだ?」
「えーと、どっかの騎士団に入って……そのうち騎士伯でも貰えたらラッキーな感じか?」
何を聞かれているか分からないサミュエルが、それでもボソボソと答える。
それを意に介さず、グイドは俺にも視線を寄越した。
これは俺も答えろって事か?
「俺は……そうだな。一番良いのは近衛に入って手柄を立てる事だろうけど、それは難しいだろ?」
「手柄を立てるのが難しいのか? ブラッドリーでも?」
サミュエルが不思議そうに聞いてきた。
* * * * *
サミュエルは本当に疑問に思ってるんだろう。
こいつは俺のことを過大評価し過ぎてる。
「近衛って、王城と……出ても王都の中で働くのが殆どだろう?」
「知ってるよ。馬鹿にしてんのか?」
「してない。説明してる」
俺に気圧され、奴はグイドに助けを求めている。
俺はもう良いかと話すのをやめた。
するとグイドが俺を見て……しかたなさそうにため息を吐いた。
どうやらこの先はグイドが引き継いでくれるらしい。
「近衛は城で王族を守ってる。でだ……。手柄立てるにはどうしたら良いと思う?」
「手柄かぁ……。うーん。王城内に入った賊でもとっ捕まえるとか?」
「物騒だな……」
「じゃあ、王族警護の時に、暗殺を未遂にするとか?」
「……悪化したぞ」
「え? そうか?」
でもまぁ、そういう手柄がないと普通は爵位までもらえない。
そして当たり前だが、王都のど真ん中でそんな事が滅多に起きるとは思えないし。
たとえ城内に間諜が入ることが有ったとしても、それは『秘密裏に排除』が基本なので、捕まえたくらいでは叙爵されないと思う。
サミュエルが言うように賊でも入って、大立ち回りした結果、揉み消せないくらいの大ごとになれば、その事件の印象を薄くするために英雄を作るとかもあり得るので、可能性がゼロではないだろうが……。
儚い夢で終わるだろう。
「でも近衛なら階級が上がったら騎士伯はもらえるだろ?」
「……騎士伯爵だけで良いのか?」
グイドがサミュエルに聞く。
言外で『褒賞での叙爵でないと、屋敷や金品は付いてないから、貴族らしい暮らしができないぞ』と言われているのだが、サミュエルに果たしてどこまで伝わるか……?
「ダメなのか?」
俺とグイドは同時に肩をすくめ、顔を見合わせた。




