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20.ブリトニーは?②〈第三者side〉

本日2話目です。

〈第三者side〉




 ステファニーはこの話の内容をやっぱり知らないらしいと確信したカレンはニコニコしている。


 人の驚く顔が見たいカレンにとって好都合の相手だからだ。




「そんな人に嫁ぐなんて、誰だって嫌でしょう? だから中々相手が見つからなかったけど、それが(つい)に決まったって話なのよ!」


「えっ! 決まったの!?」


「それも、今までで一番若くてかわいいのよ」


「よくそんな人が、嫁ぐなんて決めたわね」


「まぁそうなんだけど、それが誰か聞いたら、ステファニーだって驚くわよ?」


「え? 私も知ってる人かしら?」


「そうよ。ねぇ、知りたいでしょう?」


「そうね、気になるわ」




 散々()らされたステファニーは、もうこれで聞かないという選択肢は選べない所まで来ていた。


 そんなステファニーにカレンは胸を張り、自信満々な様子で声を張り上げる。




「なんとそれが、ブリトニー・フォールンなのよ!」


「ブリトニーさん!?」




 ステファニーは驚き目を見開いた。


 求めていた最高の表情にカレンは笑いが止まらない。




「そうよ。この学園に通う、あのブリトニー・フォールン男爵令嬢!」


「だって、彼女はデニスと付き合ってたのに?」


「それが……彼女の家、今大変みたいなの」


「大変て? ……もしかして、事業が上手くいってないとか、そういう系?」




 フォールン男爵家は元々大富豪だった商人が準男爵となり、その後何代目かでやっと男爵に格上げされた家だったのだ。


 そしてブリトニーの父の代で、今度はその経済力に陰りが見え始めていた。


 だからこそ庶子(しょし)であったブリトニーを引き取り、彼女には『なるべく金持ちの息子と恋仲になって来い』と言って、最大限に士気を上げた上で学園に編入させたのだが……。


 良い相手と恋仲にはなるものの、中々婚約まで()ぎ着けられない彼女に(ごう)を煮やしていたらしい。




 * * * * *




 今回ブリトニーは父の言いつけを守り玉の輿の嫁ぎ先を確保し、なおかつ自分の好みど真ん中のデニスと結婚する気でいたのに、それがすべて流れてしまった。


 自業自得とはいえ、崖っぷちに立たされていた彼女は相当追い詰められた状態だったに違いない。


 そしてブリトニーの父親は彼女に知らせず、娘の釣書(つりがき)を悪名高き大富豪準男爵様に送っていたそうだ。


 その裏切りの結果、見事ブリトニーが見初められた。


 フォールン男爵はこの縁談に大乗り気で、ブリトニーの意思などお構いなく半ば強引に手続きを進めたのだとも噂されている。




 それはそうだわ。


 彼女だって嫌だっただろう。


 だってブリトニーはデニスが好きだったのだもの。


 もしかして、あの『第二夫人()』発言はここから来ていたのでは?


 だったらデニスもブリトニーも、かわいそうな事になってしまったわね。




 ステファニーが二人を気の毒にと思うのは当然で、この国は父親の勧める縁談を断るのは非常に困難だった。


 もし断れば大抵の場合修道院送りで、最低でも数年は出てこられなくなってしまう。


 若い娘の数年は、その人の人生を左右するには十分な時間だ。


 やっと出てきた時に婚期を(いつ)している者が大半で、結局は父が最初に勧めてきた縁談相手より悪い条件で嫁がねばならなくなる。


 つまりブリトニーが豊かな生活を捨てたくないならば、その大富豪に嫁ぐしか道は無いのだ。


 それに父親や相手方が乗り気で進めている以上、もうブリトニーに逃げ場は残されていない。


 しかしブリトニーは納得はできないに違いない。




 私は好きな人と結婚できる幸運を手に入れただけに、彼女には少し同情してしまうわ。


 あぁ、それでもブラッドとの結婚は変えたくないって思ってる私がいる。


 うーん。


 心は痛むけど、私がデニスと結婚してブリトニーさんをお(めかけ)さんにするのは、さすがにちょっと無理。


 ここは心を魔王にして、目を(つぶ)るしかないわ。


 でもそう言えば、デニスはどうしてるだろう?


 ブリトニーさんを好きだったみたいだから、こんな噂を聞いたら落ち込んでしまうかもしれないわね。


 まだ領地に居るみたいだし、ここは可哀想な()を慰めてあげるべく、たまには手紙でも書こうかしら?




 ステファニーは少しの(うれ)いを感じつつも、何か彼の気を引く品も一緒に届けてあげようと頭を働かせる。


 何だかんだ言っても、やっぱりデニスには甘いステファニーであった。


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