11.ブリトニーの提案
本日7話目です。
まさか辺境伯の座だけでなく、私のことまで争いの原因になってるなんて、どうしたら良いのだろう?
こんなに私が悩んでいるのに、目の前のブリトニーは楽しそうだ。
人がケガしたり、もしかしたら死んでしまったりするかもしれないのに、まったく心配ではないのだろうか?
「そんな悲壮な顔しなくたって良いじゃない。あんなカッコいい二人があなたと辺境伯の座をかけて争うのよ? 私じゃないのが悔しいけど、でも物語が現実になったみたいで素敵じゃない? これは女の子の夢よ!」
「何言ってるの? ケガしたり罰受けたりするかもしれないのよ? 心配じゃないの?」
するとブリトニーはキョトンとして。
「仕方ないじゃない。どちらも譲らないって言ってるんだもの。それに、デニスは強いもの。きっと勝ってくれるわ」
それには返事を返せなかった。
気持ちとしてはブラッドに勝って欲しいし、でもデニスが強いのも知ってるから。
そしてデニスから剣技を取ったら、彼はきっと自信を失ってしまう。
もしそうなったら、あの幼いころからの努力が報われない。
幼なじみとして、今のデニスじゃない彼を私は許容できないような気がするのだ。
また自分の思考の渦に囚われそうになった私の耳に、とんでもない話が飛び込んできた。
「私決めたの。あなたと結婚した人が辺境伯を名乗れるのでしょう? それなら私は二番目になるわ」
「に、二番目!? どう言うこと?」
「だから、一番はあなたに譲るわ」
「はい?」
「それで私は、デニスが勝ったら彼の第二夫人になるわ! 良い考えでしょう?」
「はぁぁぁ?」
私は驚いて首を回し、ブリトニーの顔を真っ直ぐに見詰めた。
彼女は薄っすら微笑んで私を見て……。
「ね? その時は仲良くしましょう?」
そう言って首を傾げる。
その瞬間、私の背筋を悪寒が走った。
正妻と第二夫人が仲良く?
この人なんて事を考えてるの?
「ブリトニーさんは……デニスが好きなんじゃなかったの?」
「好きよ」
「だったら、ほかの人と共有なんて嫌でしょう?」
「うーん。私といる時は、うんと私を愛してくれて、気前よく何でも買ってくれて、美味しいものも食べられて、好きに遊ばせてくれたら、それで良いわ」
「正妻が居るのに?」
「だって、例えばステファニーが正妻で、私が第二夫人なら、デニスはまさか『三人で一緒に過ごそう』だなんて言わないでしょう?」
「いや、言われても困るけど……」
「私から見えない場所でデニスとあなたがどう過ごそうと、私は構わないわよ? 私が自由にできるなら、そんなの些細な事だわ」
「私は嫌よ。それに私はブラッドと結婚するんだから、もしもなんてないわ」
「ふーん。そうか、ローマン様が勝つ事もあるのよね……」
その言い方が気に障った。
そしてブラッドを紹介した時の色香の乗った視線も思い出してしまう。
とっても嫌な予感がして、眉間にシワが寄った。
「そうだ。ローマン様が勝ったら、私を彼の愛人にしてもらうわ」
「ちょっと、何言ってるの?」
「まぁまぁ、どうせあなたの産んだ子が辺境伯を継ぐんだから良いじゃない。デニスなら第二夫人として別館に住まわせて面倒見てくれると思うけど、ローマン様はきっとそういうの無理よね? でもあなたが頼んでくれたら、愛人くらいにはしてもらえそうでしょ?」
「そんなのブラッドが良いって言うわけないじゃない。私だってお断りよ」
「あら、ステファニーって本当に箱入りのご令嬢なのね。世間ではこんなの普通で、私みたいに聞き分けの良い女って少ないのよ? ほかの嫉妬深い人と比べたら、私を選んだほうがずーっと良いのに」
私に理解できないことをベラベラ話されて、ショックで何も言えなくなった。
言葉の通じない外国人と話すほうがまだ意思の疎通ができそうだった。
「まぁ、気が変わったら教えて?」
言いたいことだけ言ってブリトニーは行ってしまう。
私はブリトニーの緩い倫理観と、私の知らない世界の話に頭を悩ませるのだった。
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今後もみな様に気に入っていただける作品作りを心がけようと思っていますので、よろしくお願いします。
本日は複数回投稿を行なっていますので、話数をお間違えの無いようにお願いします。
 




