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川岸にて

作者: ParticleCoffee
掲載日:2020/10/11

 川岸に腰を下ろし、クーラーボックスを地面へ置いた。

 シャツの袖をまくり、左手で水面をバチャバチャとたたく。

 強弱をつけ、音を立て、大きく波を起こす。

 そうしていると、水中をゆるゆると泳ぐ影がこちらへ近づいてくる。

 徐々に、徐々に、近づいて、手に触れる――寸前水から手を引き抜く。

 その手を追って影が水面から顔を出す。

 すぐさま首根っこをつかみ、水中から引っ張り出した。

 それは『エキゾチックショートヘア』というネコだ。

 とても独特の顔つきをしている。

 その顔は不満でもありそうにも思えたが、この品種自体がそんな顔だった気もする。

 地面にゆっくりと下ろすと、ネコは、プルプルとカラダをふるわせて水をはらう。

 ネコにたいして、クーラーボックスへ向かうようにうながす。

 観念した様子でニャーと鳴き、クーラーボックスへとスルリと身をしずめた。

 ボクはふたたび水のなかへ手をツッコんだ。

 さきほどと同じことをしていると、二匹目はすぐに現われた。

 今度のエモノはゆったりとした動きで近づいてくる。

 余裕をもってつかみ上げるが、水を吸った体毛がとても重い。

 長毛のキジトラ、見た目に雑種のように思えた。

 強くなでつけるように体毛の水を絞ってやり、クーラーボックスに近づける。

 先住のエキゾチックショートヘアと数秒顔を見合わせると、仲良くクーラーボックスにおさまった

 ――あともう一匹ぐらいほしいな。

 最後にもう一度、水中に手をいれて水面を大きく荒らげる。

 警戒され始めてしまったのか、 3匹目はなかなかにきてはくれない。

 しばらくして、ようやく影が近づいてくる。

 いままでの二匹よりもはるかに大きい、大きすぎる。

 速度は遅いが、この大きさは手に負えないかもしれない。

 ――つづけるべきか、止めるべきか。

 そんなボクの迷いを感じ取ったのか、影は速度を上げて、一気に距離を詰めてくる。

 おどろき、すぐさま手を引き抜く――と、同時に鋭いツメが横薙ぎに空振った。

 大きく後ろに飛び退いたボクの前に、それが姿をあらわす。

 それはライオンだった。

 幼獣と言う時期は過ぎているが、成獣と言うにはまだ幼い。

 ライオンとボクはにらみ合いの形となる。

 ボクは、目を合わせたままゆっくりと、後ろへと下がる。

 ライオンも、ソロリソロリとこちらへ近づいてくる。

 しかし、ライオンの歩みはクーラーボックスへ向かっていた。

 先住の二匹と鼻を突き合わせたかと思うと、クビの裏側をくわえて二匹をクーラーボックスの外へと放り出した。

 ライオンは両前足をクーラーボックスへと突っ込む。

 つづけて後ろ足もいれようとするが、ツメの先ほどしかスキマはなかった。

 がんばって押し込もうとするが、クーラーボックスがミシミシと音を立てるばかりだ。

 追い出された二匹はライオンの周りを回りながら、

『自分のサイズを考えろ』

『壊さないでよね』

 と、責めるように鳴き立てる。

「それは無茶じゃないかな」とボクも言う。

 ライオンは、シュン……としてうなだれてしまう。

 クーラーボックスから出ると、身をひるがえし、悲しそうに水中へともどっていった。

 その姿を見送り、ボクはひとまず安堵のため息をもらした。

 いつのまにか二匹のネコも、クーラボックスへともどっている。

 なんだかどっと疲れてしまった。

 ――今日はこれぐらいにしておこう。

「じゃあ、帰りますよー」

 とネコの頭をなでつけながら声をかけた。

 返事をしているかのようにネコが鳴いて答える。

 しかしその鳴き声は、一方のネコは『ヤメロー』と、もう一方のネコは『ヤレー』といっているように思えた。

 そのとき、ボクはすぐに気づくべきだったのだ。

 背後から、ボクの首筋をかみ砕くべくせまり来る強靭なキバに――

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