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8座-4

手をかざすと何か透明な壁のようなものが身体にのしかかる、膝立ちになっていたわたしも見えない何かに押しつぶされて床につっぷしてしまう、これが“力”?

フリュはかろうじて動けているようだけど、左腕にパーディナルの剣を受けているせいでじゅうじゅうと肉が焼けている

「あぁ……息が……!」

呼吸すらもつらくなってきた

「マナもう少し耐えろお前の“魔力”根こそぎ借りるぞ、フリュお前のもな」

「……ルーナ?」

「わたくしの“力”にかなうはず、ない!……っ!」

ルーナが右手を下から上に持ち上げると、次第に重さが引いていく。けどどんどん身体中が冷えてく。部屋が……建物が軋みをあげて揺れ始めると異常な事態に騎士達も気付いたらしい

「くっ……どういう事か……おまえも“悪魔”いえ、その黒髪黒目“魔王”!?」

「え?」

「マナすみません、ぼくの“魔力”が少なくなったせいで元にもどってしまってます」

未だに戦闘態勢にある騎士を相手にしながら謝る、確かに手にとった髪は黒にもどっている

その間に建物が揺れたせいで天井のガラスが割れ破片が雨のように落下してくる

とっさに無防備なクルトを抱きかかえるようにして破片から守る。

盛大な舌打ちとともに突風が巻き起こるとガラスは全て粉のように霧散してしまう。

「このまま天井を開ける、フリュ!クルトとマナを抱えろ」

どんどん揺れが大きくなっていくすでに立っていられないほどで、さすがのヴァイスも片膝をついている

「そうはさせない!その男はわたくしの物!!」

鼓膜を突き抜けるほどの高音がしたかと思えば、幾つもの光の球体が現れルーナを襲う

肩へ左脚へ脇腹へあたるたびに大きくルーナの身体が抉られていく

「ルーナ!!」

傾いた身体を支えようと両手を伸ばす、突然びしゃりと顔面に血が飛び散る

ぽっかりとあいた頭の穴からは醜く歪んだヴァイスの姿が見えた

膝に崩れ落ちたルーナの身体は血だらけで───

「ふっふふふ!──さあクルト“魔王”を殺すのだ!!」

「ルーナ……?ルー……」

首に温かい物が触れた瞬間、強く圧迫されたと気付く。誰なんて問う必要なんかない後ろに居たのはクルトだけ……!

「あっ──くぅっ!」

「“悪魔”よ 動くな!動けばそこのやつと同じ目にあうぞ!」

際限ないのか光球が発現するとフリュの周りにピタリと張り付く。

ルーナ!ルーナが死んでしまった!

『──俺は同じ時をお前と生きる』

嘘!嘘だ!信じない!涙が勝手に流れてくるのは悲しいからじゃない!苦しいからじゃない!ルーナが流した血だまりに涙が落ちる

パチッ

ジッ───ジジジッ

火花が散るそれはどんどん、血から血へと伝線していく、やがてそれはクルトや騎士達にも移り部屋中がまばゆい閃光に包まれると、絶叫が響き渡る……まるで地獄のふたをあけたような惨劇が広がった


壁や天井にだらりと垂れ下がった肉片

転がった頭部から見える白い物

真っ赤に染まった部屋

ふいに背後に重たい物がのしかかりずるりと床に転がった

「……クル……ト?」

黒こげになった身体は少しばかりの布地が残るだけでクルトの面ざしはない、それでもクルトだとわかったのは丁度胸の位置にあった、赤いテンプがあったから──

「わたしが 作った テンプ……」

「ああ、さすがマナ──見事ですよ!」

「……見事?これが?」

体半分を失ってもまだ立つフリュは満面の笑みを浮かべ手を広げる

「ルーナもクルトも……それに人間まで殺してしまった!!」

「おや、さすが“金の聖女”まだ辛うじて息はあるようですね~」

何かの塊まで近寄ると、ごろりと転がす。

「……ナ……マナ落ち着け……」

「!ルーナ!?」

覆っていた顔をあげると、たしかにそこには見慣れた顔がある 頭は欠けているけど確かにルーナだ

「ルーナ!その怪我は、どうして生きてる……のっ」

「心配かけてすまないな、久しぶりだったから身体を元に戻すのに手間取った……」

思い切りルーナに抱きつく

「どうしようどうしよう!わたし殺してしまった!!」

「……ああそうだな……女のほうは虫の息か……クルトはどうだ?」

怖くて見れない!がたがたと身体が勝手に震えて動く事も出来ない

「どれ、ん?んー……微かに身体は温かいですねえ」

はあっとルーナが深く息を吐く

「マナ。マナ良く聞け。間もなく聖女から“力”が“器”を求めて身体を離れるだろう──クルトをあたらしい“器”にするか?上手く行けば息を吹き返すかもしれん」

ぐっと身体を離すと言い含めるようにけれど、性急に進める

「だが上手く行く可能性はほとんどない。強制的に“器”にするには極めて困難な状況だそれに“器”になれば“力”によって変貌する可能性もある。その時の覚悟はあるか?」

「お願い!お願いルーナ!クルトを死なせないで!!」

「………」

ルーナは転がった肉塊の一つを抱えてくるとクルトの横に並べる。

「手を貸しましょうか?フェルミ」

「ああ」

二人が手をかざすと、肉塊からグラグラと振動する黒い塊が浮き出てくる、それは空間を歪めながら不規則な形を作り出している。それは近くにあった二人の手を焼き、真っ白い骨がむき出しにしてしまう

それを何とかクルトの胸に入れようと二人が苦戦する、黒い塊が拒絶するのかクルトの身体が拒むのか……まるで反発しあう磁力のようにぐらぐらと揺れ動く

「くそっ……やはり無理か!?」

「なかなか……!」

お願い!お願いクルト……!!

「戻ってきて!!」


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