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7座-ルーナ

*******



相変わらず馬鹿で阿呆な娘だ。

俺が寝ていると思い込んだか、膝に頭を乗せて寝てしまっている。まったくどこでも寝れるのが羨ましいほどだ

幼いころよりそうであったと小さくため息を吐く、冷たくされながらも必死に興味を引こうとするマナをザードは見て見ぬふりをし、“魔王”にしないという大層な名目で軟禁した。

生きる上で最低限必要な食事、手足が伸びても取り換えのきかない洋服、足が大きくなり靴が入らなければ先を切り落とし買い与える事はなかった。

俺がマナのそばにいられたのはしつけも餌も必要ないとわかっていたからだろう。マナが何かを学ぼうとするのすら許さず、結局マナが文字を覚えれたのは俺がひっそりと持ち込んだ書物を教えたからだ。

マナは勘違いをしているかもしれないが、ザードが大けがを負ったのは十騎士と戦ったせいではあるが、もとよりザードがマナを捨て家族の元を訪ねたのがそもそものきっかけだったのだ。

『もう十分すぎるほどの時間をコレと過ごした……あとは一人で生きられるだろうわたしは家族の元へ帰る』

愚かしいほどにも限りがある。世との縁をきっているマナはどのように買い物をしていいのか、金の稼ぎ方、生活の仕方さえしらぬ。世には魔獣が蔓延るだけではないやつらはすでに“魔王”の制約から解き放たれ何十年と経過しているせいで獰猛になり誰彼となり襲う。マナに身を守るすべはないのだ

ザードは命からがらマナの元へ帰ってきた、マナは必死で看病したが。それでも最後までマナに一片の心さえ寄越す事はなかった。

マナに“魔法”の使い方を教えたのはザードが死んでからすぐの事だ、姿隠しのローヴは俺の“魔力”を練って作った───月に一度のテンプ作りのときは魔獣を追い払うために動いた。

『もう!ルーナ!この破廉恥ねこまたどこか女の人の所へいってたんでしょう!』

野次を飛ばされようとも真実をマナに教える気はない。


わたしが死んだら“魔王”の力はルーナに戻るのかな……?


馬鹿な事を言う。考えなかった事はないと言えば嘘になる。こんな娘に何が出来るのかとならばいっそこれを殺して取り戻せばいい──


名を呼び俺にすり寄る。家族だといい笑いかける。自分の服などよりまっさきに俺の心配をする。


こんな娘が重荷に耐えられるはずがない。

この娘に重荷を背負わせたくはない。

いつのまにか心は移り変わる、季節のように巡って巡って、マナお前はいつしか俺の娘になった。かけがえのない愛しい娘。

苦しませたくない、この世の理から離れせめて静かに生かせてやりたい

だが、現実は音もなくマナの背に張り付いた。

目覚めようとしている、長く時を超え、名もない、影もない娘が“魔王”になる。

マナ死んでなどくれるな、お前を失う事があれば俺は“魔王”になり何もしない破滅の道を選ぶだろう。迷うことなどないお前がいない星など意味をなさないのだから。


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