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7座-2

「あれか。ちょうどいい今しがたマナも全て 無事 完食したところだ」

「そうか……」

そうかじゃないでしょう!ベットにひしゃげてるわたしを見て無事とか思ってるんなら大間違いだ!うえ……気持ちが悪い…

「さあいい子だ、ゆっくり ここで 寝ておけよ」

一言ずつ区切るあたりが怖い。しかも顔面凶器で耳元に囁かれたらもう呪いにすらきこえてくる… おとなしくしていろ とだけ言い残して二人して一階へ行ってしまったそれにしても、あれ って何だろう?

「………よし。とてもわたしに関係ないようには思えないし行こう」

応接室?いや……調理場だ

「……だったんだ?」

「それはもう……僕がこの目で見たのですから」

んー?この声どこかで聞いた覚えが…それにしてもここからでは聞き取りづらい

「ちょっとまて」

ルーナは席を立つと、調理場の扉を閉めてしまう。ちぃ…ばれたか…しぶしぶ部屋に戻る事にする。わたしの部屋にと割り振られているのは日当たりもよくてベッドに小さい作業台が置かれてる。いつかここに本棚置きたいな、あとは…別にほしいものないな

作業台に置かれていたカバンを開けると、じゃらりとテンプがこぼれる

「見たことないくらい赤い……それに不思議にいつもよりたくさん作れてたんだなぁ」

大きさ順に並べていく、小箱はもうない

「どうしようかな…あ、そうだ」

カバンの中に入れておいたハンカチを割いて紐にすると縛っていく、売るときは箱にいれておいたほうが見た目もいいのでそうしたい所をぐっと堪える。すっかり仕分けも終わって手持無沙汰になる、クロノグラフも直したいけど…ネジがどこかに飛んで行ってしまったらしくベゼルは元に戻せそうもない

「本格的に職人っていうのも悪くなかったかな……」

「マナいいか?」

「うん、そうぞ」

扉を叩いたクルトは飲み物をもってきてくれたらしい「温かくしたから飲みやすいだろう」ってなんだかお母さんみたい、そうだ

「クルト、これ預かってくれない?もし危険でなければ売ってもらってもいいし」

作業台のテンプに目配せする。

「これは見事だ──短時間でこれだけ削ったのか??」

「ううん、実は“魔法”で作るの、条件が合った時に泉の水に“魔法”をかける、そうすると水が宝石にかわるんだけど、完全に石になる前にこの型に流すの」

型をクルトに渡すと、興味深そうにしている

「これは私でも出来るのだろうか?」

「どうなんだろう?フリュは“魔法”って言ってたから出来るのかな…でも私くらいだろうっても言ってたから──」

「なるほど……私が出来れば危険が減るとおもったが残念だ─とにかくこれは預かろう、ルーナともよく相談して使わせてもらう」

コップの代わりにテンプを盆に載せるとまた一階へとおりていく。“悪魔”って博識なのかな?ルーナもだけどフリュも何でもしってそう……ん?フリュ?

「ああ!さっきの声フリュだ!」

部屋を飛び出して調理場へ飛び込む、が飛び込んだ瞬間頭を鷲掴みにされてしまう

こわごわと見上げた先には、顔面凶器のルーナの笑顔が、怖すぎる!

「お前は俺の言う事が理解できないようだ、そうだ檻を用意しよう。可愛いお前によく似合う首輪もな」

「ルーナ?──わたし“魔王”なんですよね、一応……それを監禁とかどうかなって思うんだけど」

「やかましい家出娘で馬鹿娘を四六時中見張ってろとでも?」

すみません。返す言葉もない……今回の件は心底馬鹿な事をしでかしたと反省してるんです

「まあまあいいじゃないですか~こんにちはマナ~」

軽やかに手を振ったフリュは真っ白フリルいっぱいのシャツに鮮やかな青のタイをしている今日もいろんな意味で眩しい

「そうだ!フリュがどうしてここにいるの??皆と知り合いだったの?」

「皆というより、今マナの頭を掴んでいるフェルミのですね」

「……フェルミ?」

「余計な事をべらべらと舌を根元から引きづりだしてやろうか」

クルトが慌てた様子で マナの前ではやめてくれ! と青ざめていたがただの言葉遊びにも反応するとは真面目なんだな~

「やですよ~そんな怖い顔をなさって……まあマナこの方にも語れぬ過去の一つや二つあるのですよ、ね?」

「ルーナとは猫の俺にかってにつけた名であって、人である俺にも名があったというだけ、気にする必要はない」

テーブルの椅子にわたしを座らせると、フリュを蹴飛ばして自分がそこに座ってしまう。フリュはどうってことなさそうにしている。同じ“悪魔”同士仲がいいのかも

「それにしてもマナ、“魔王”になる決心、つきましたか?」

「え?」

全員の視線が集中して、穴でもあきそう……

「“魔王”であってくれたなら僕が助けれたかもという話し、の続きですよ~だって僕言いましたよね?『“魔王”になってくれたらいつだってこのフリュがお守りしますのに』ってあながち冗談でもなく本気だったんですよ。ああ~あのときに頷いてくれたなら強姦された女性も生きたまま焼かれた幼子も頭を割られた婦人も─それだけでない町中の人を助ける事が出来たかもしれません」

「やめろ!」

頬を殴られた気分──クルトのどなり声が耳鳴りみたいに響く。町中の人達の命が“魔王”にかかってるの?まるでその言い方は“魔王”が守るべきだったって言われてる気がする

「──“魔王”って何なの……?人に仇なすのが“魔王”“悪魔”じゃないの?」

ルーナは軽く息を吐くと

「……この世にある誤りの最たるものが“魔王”と“悪魔”だ。この星を覆う世界、天界の理から説明しなければならん、気が遠くなるほどの太古のさらに昔、天界には数多の神が存在していた。それらは様々な姿で存在し、神達は永遠とも言える時を生きていたがあるとき一つの神が蝕まれ落ちた…」

「落ちた?」

「死んだと解釈してくれていい。落ちた神はとても愛情深い神であったため我が身に多くの生命を宿していた、だがこれこそが神を蝕む原因となったのだ。欲深く、残忍。多くの神は次は己の番かと恐れおののいた、一人、また一人と神は己の穢れを払った」

「穢れって命ってこと?」

そうだ と頷くとルーナは丸で見てきたかのように朗々と語りだす

「そして神は永遠となるために自身の命までをも払おうとした」

「神様は……永遠には生きていられないから、命をすてて永遠に生きようとしたの?つじつまが合わないよ」

「そう、命という枷を外し、穢れから遠ざかることこそが神達の望み。誰にも侵される事がない、ただそこに在り続けることこそがそうだと信じている。そして──ここにも神がいる」

びっくりして三人の顔を順番に見ていく、見た限りじゃ誰だかわからないけど神様がいるってこと?

「ここだマナ。この世界こそ神だ」

「この世界───?」

「この世界は自分の中に住まう穢れを全て払いおとしたいのだ。神が手順を誤ったか気が急いたのか定かではないが──“魔王”とは神が殺ぎ落とした穢れ“悪魔”とは“悪魔”から生まれた生命だ」

「でもまって神様が穢れを殺ぎ落としたってことは、この世界は死んだって事じゃないの??」

「それは違う、命は“器”を変えるのみでその本質はかわらん、死と生を繰り返し、神の中で巡る、神は先に己の穢れをはらってしまったがために永遠を手に入れる事がかなっていない、ゆえに───」

「まて……では“魔王”とは神の…いや神…?」

「クルトちょっとまってよ、じゃあわたしは 神ってこと?全然違うよ!良く見てよわたしはただの人だもの」

それには納得したように頷くクルトにわたしもほっとする。“魔王”だけじゃなくて神様なんて言われたらどうしようかと思った…。

「マナは確かに次世の“魔王”ですよ、ちゃんと“器”を有しています」

フリュが期待のこもった目をよこす

「“器”って…ルーナ?」

「“魔王”の命すなわち神の命とは永遠に近い、だがある条件の元で命が次世に移る、“器”がかわるだけで命そのものは変わらん。なんの因果かまったくの別次元にいたマナに

“魔王”の命が注がれてしまったのだ、だがそれは不完全だった……俺から移行されるはずだった命は互いに共鳴し、まだ強く“魔力”が残る俺の世界へとマナは引っ張られた」

「まって!ルーナ……それは…ルーナが“魔王”ってこと?」

テーブルの上で握ったこぶしが馬鹿みたいに震えてる。

「完全な“魔王”ではない、俺達は命を分け合っている状態だ」

「──だめ!!!」

わたしが突然叫んだせいで、見目麗しい顔が三つ──そう!鳩が眼つぶしくらった…鳩に豆を食らわした…ん?とにかくそんな顔してる

「ストップ!一時中断!頭がおかしくなりそう!──続きはまた明日でおねがいします!」

「ああ頭の弱いマナも素敵ですねえ~」

「………育て方を間違えたか。」

「私も賛成だ……」

各々が溜息をこぼしてはいたが、わたしの頭の弱さにめんじて続きは明日にしてくれるというのでベッドに潜り込んだわたしは、ルーナが話してくれた事を頭の中で繰り返した。

もっと聞きたい事がたくさんある…けど一度きちんと気持ちを落ち着けないと大事な物を見落としてしまいそうで怖い。


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