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6座-3

だけど困った事に、もう2時間ほどで5が付く星座が上がってしまう…!夜明けまで6時間だ!

草むらをかき分けて進む、整地された場所を進みたいのはやまやまだけど、人手が入った場所はどうしても“魔力”が薄くなってしまうとフリュが教えてくれたので今は雑木林を猛進中というわけ

虫は飛ぶし、鋭い葉っぱで顔は傷だらけ、悲鳴をあげてすすむわたしを後ろで笑うのはフリュだ

「どうしよう…あと3時間!──絶対にみつけてやるんだから!」

「……いいですね~戦う乙女というのも、いやあおしい“魔王”になってくれたらいつだってこのフリュがお守りしますのに」

「いま、その話はなし!泉よ泉!その先にはお金!さらにその先には食べ物よ!」

「ああなお素敵ですよ~!」

「あ!」

ぱちゃりと踏んだのは確かに水に間違いない、足元の草をかきわけるとそこにはわずかにひろがった水たまりがある、一瞬雨水でもたまったものかと思ったが、よくみるとぽこぽこと地面から空気が漏れ出ている、ということは……

「湧水だ!ねえここはどう?フリュ!」

屈んだフリュは一掬いすると「よかったですね!」と肩を叩いてくれた、クロノグラフを確認するとちょうどその時刻を指示そうとしているとこころだ、急いでカバンから銀の盆と型を取り出すと祈るように水を見つめる

きらきらと銀色に光る水面に地の底から金色の粒子が溶け込んでいく、“迷いの森”の泉とは様子が違うけど、きっと今だ!

迷わず水を掬って盆に入れる、手をかざすとパチパチと火花が散ると深い赤色に染まりやがてとろみを帯びていく

「やった……!」

涙が出そうだったけど、ぐっとこらえて型に流す。何度も何度も繰り返す、湧水が冷たくて徐々に手の感覚がなくなってきてもかまわなかった。やっぱりわたしこの作業大好きだ!

「フリュありがとうね!フリュがいたからここまでこれたよ」

「───いいえ~ぼくも良いものが見れました」

カバンにどんどん増えていくテンプがちらちらと光って笑いあった二人を幻想的に照らしていた。


「さて、これから町に戻るのですね~帰り道は行きほど時間はかからないでしょう、まっすぐ進めますからね」

「うん」

フリュの言うとおり帰りは、野宿で一泊した朝方だった

町の外れの墓地に向かうには、町の中を突っ切るしかないわたしだけだったらそこまで目立たないはずだけど、フリュは目立ちそう……やっぱり迂回するしかないかな

正直、家に帰るのも怖い気もする……ルーナの化け猫顔がよぎり思わず身震いする。

「わたしは遠回りして家に帰るね、フリュはどうする?」

そういえば彼に家はあるのだろうか??“悪魔”にだって生活があるはずなのにすっかり抜けている

「そうですねぼくもあまり家を空けておくわけにはいかないのでそろそろ帰り……ああ、マナちょうどいいちょっと付き合ってくださいよ!」

「ええ!?」

有無をいわさず腕をひっぱるとフリュはずんずんと町の中に入って行ってしまう

「──フリュ!」

「ほら!面白いものが見れますよマナ」

数名の騎士に引きづられて行く女のひと、押さえつけられているのは母親だろうか、それを遠目で見ているのはこの町の人??

「一体…なに?」

「あの様子からすると“悪魔”狩り、ですかね~」

「“悪魔狩り”……?」

すると、引きずられている女性は“悪魔”だというの?母親のほうは殴られたようで顔中血まみれにしながらも娘の名を叫んでいる

さらに細い悲鳴があがると、髪を掴まれ引きずりだされたのは幼い男の子だ、一体何が始まるの??騎士等が丸太に何かをくくり付けたそれを必死で立てていた…幼い男の子も丸太にくくりつけられている。母親と父親の名を呼んで泣いてる──

やがて二本の木が立つと積み上げられた藁に火が放たれた───女達の悲鳴が大きくなるたびに火の勢いも増しているかのよう

生きたまま焼かれる?これは何?

「フリュ……彼らを助けてっ!あるんでしょう!?助けられる力がっ」

「“魔力”ならありますよ、でも何故人間を助けなければいけないのです??」

「何故って……“悪魔”だからあんなこと…同じ仲間じゃないのっ??」

「いいえ、“悪魔”ではありませんよ?まあ多少“魔力”はあるのかもしれませんけど──いいですか世間知らずのお嬢サン。この世ではああいった事は赤子が産声をあげる数ほどに転がり起きているんです、一人二人助けた所でどうにもなりません」

だめだ……まったく価値観があわない、目の前で“悪魔”でない子供が人が殺されていくのを黙ってみてられない!

一歩踏み出した所で両肩を強く掴まれる。

「きゃああああああ」

数名の騎士が女性に群がり衣服を引きはがしていく、真っ白い乳房が、手が、肩を、足を掴んでいる。

助けようとした母親は後ろから抜き刃した剣によって頭を割られ、あたり一面に血の海が広がった、ごうごうと燃える火柱にはもうあの男の子を探すことさえ困難にしている

「どこへ行こうと?まさか、彼女を助けるつもりですか??彼女の身代わりになる覚悟があるんですか──ほらよく見て」

涙で濡れた頬を後ろから掴みあげられる、見たくない!見れない!なのに視線は目の前の惨劇をうつしてしまう、下卑た笑いをあげながら女性の身体を蹂躙しつくす男たちは入れ替わり立ち替わり彼女を責め立てる

「彼女を助けますか?」

ぽんと背中を押され地面に崩れ落ちる、こんなの現実じゃない!夢見てるんだ!本当の私は日本で寝てるに違いない!誰か助けて!助けて!!

人を殺す“人間”と誰も助けない“悪魔”、わたしはどちら側…?“悪魔”みたいに見殺しに出来ない、人間のように殺す事も出来ない、だったらわたしは………


「────一人ぼっちだ………──」


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