表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

まさかの襲撃

 今日も、いつもと変わらぬ平和な日。


 に、なるはずだった。


 それは午前中の休み時間。唐突にやってきた。




 真たちは教室で休み時間を過ごしていたのだが、急に音が鳴った。


 パン、パン、パン。


 その音に、誰かが呟く。


「これ、って、じゅ、銃の音・・・?」


 銃声。


 全員がパニックに陥る。


「どういうこと!?」

「怖いっ」

「なんで銃なんか」

「助けて!」


 騒ぐ皆の声。休み時間の為、先生はいない。つまり騒ぎを収める大人がいない。

 皆の不安ばかりが積もっていく。


 その時、ガラリと音を立てて教室のドアが開く。


 入ってきたのは2人の男だった。


(な、なんだ・・・? 見覚えが・・・?)


 その瞬間、真は頭に衝撃を覚える。思わず頭を抱える。


「真? どうしたの? 大丈夫?」


 春が真の様子に気づき、小声で話しかけてくれる。


「あ、ああ。大丈夫」


 真は何とか返事をするが、頭痛は収まっていない。

 やせ我慢だとわかっているが、春もそんなことを気にしていられる場合でもなく、思考を切り替える。


 すると2人の内の1人の男が。


「きゃっ」


 春の腕をつかんだ。無理矢理立たされる。

 春が小さく悲鳴を上げた。


「な、何すんのよ!」


 春は今にも飛び出しそうな心臓を必死に抑え、文句を言う。


「何って、可愛いから人質に取ろうかなって思って。そしたら俺の楽しみ増えるし。あとで君も楽しみにしてなよ」


 にたにたと気持ち悪い笑みを浮かべて春を値踏みするように見つめる男。

 春はぞくっと背筋に悪寒を覚えるが、気丈にテロリストを睨みつける。

 だが、テロリストの態度は変わらず、余裕の笑みを浮かべている。


 すると、1人のクラスメイトが魔法を放とうとした。隙を見出して逃げようとでもしたのだろうか。とにかく助かりたかったのだろう。


 そして魔法が発動――――されなかった。


「っ!」

「魔法を発動されては困る。まだ殺すわけにもいかないからな」


 先ほどまでおとなしかったペアの男が、クラスメイトの手首をつかんで魔法を途切れさせたのだ。

 手刀をくらわされ、クラスメイトはおとなしく気絶した。


 その早業をみてクラスメイトたちは恐怖し、おとなしくなる。


「じゃ、こいつは貰っていくぜ」


 そしてテロリストたちは春をどこかへ連れて行こうとする。


「待て」


 そこで待ったをかけたのは勿論真。


「あぁ? なんだよ」


 春を掴む男が振り返る。


「そいつを連れて行くな。連れていくなら俺にしろ」


 真は威圧的なテロリストにビビる様子もなく言った。


「はぁ。出たよ。クラスに1人はいる、自己犠牲が好きなやつ。面倒なんだよねー」


 がしがしと頭を掻きむしった男は、イライラしているように見える。


「お前連れてっても何の意味もないから。利益ってもん考えてもの行ってくれよ」


 蔑むように見られる真。春がかっと怒りだしそうだ。


「いや、そうだな。お前もついてこい」


 その時、片方の男が真に言った。


「え、はっ? 何言ってるんだよ」


 春を掴んでいる男は驚いて反論する。


「2人とも連れていく。もしかしたら、こいつかもしれない」

「なっ、まさか・・・」

「面影がなくもない。6年前のあいつと――」


 皆はテロリストたちが会話しているのを聞いて逆に困惑している。

 が、真は違った。その言葉で頭痛の正体が分かった。


 ふつふつとこみあがる怒り。久しぶりに()()()()()怒りだ。


(お前らが、両親を、妹をっ)


 6年前の事件、王宮が燃えた事件の犯人だ。


「・・・俺を連れていくならそいつを放せ」


 心を落ち着け、真は条件を出す。


「ダメだ。2人とも連れていく」


 だが、拒否された。

 これ以上はどうあがいても無駄だと判断した真は、おとなしくついていった。


 教室では、涙目になりながら2人の無事を祈る美奈の姿があった。



 体育館。


 テロリストたちが本拠地にしたのは体育館。

 2人はそこへ連れいかれた。男2人はテロリストたちのボスとみられる男に報告しにいったようだ。


 その間にも次々と運ばれてくる人質たち。

 そしてそれは女子ばかり。卑劣な(やから)が多い証拠だ。

 そこには生徒会長の姿も。


「真、大丈夫なの?」


 怖がっているのだろう。小声で話しかけてくる春。


「大丈夫だ。じっとしてれば、な」


 真は落ち着きながら安心させるように優しく言った。それを聞いて春は少し安堵したようだ。

 気を緩めた、その時。


「この子かい?」

「おそらくは」


 ボスとみられる男のようだ。後ろにテロリストたちが付き従っている。


「やぁ。初めまして。いや、君が僕の思っている通りの人物なら、久しぶり、だね。どちらかな?」


 口調は柔らかい。だが、それが逆に恐怖をあおる。春は身震いしている。


「・・・何のことか、はっきり説明してくれないとわからないな」


 真は静かに言う。思い出した怒りが声に出たかもしれない。

 真は今ここでこいつらを一斉に倒してやりたい、否。殺してやりたい気分になっている。


 それでも正体を知られる訳にもいかない。必死に我慢して抑える真。


「ん? 詳しく説明しようか? 困るのは君だと思うけどねぇ」


 ボスの男は挑発するように見下してくる。


 真は押し黙る。下手に発言するのは良くないと思ったからだ。


「6年前、僕たちは王宮テロを行った。その時、王、王妃、ともに使用人たちを殺害した」


 体育館にいた人質の全員が驚く。

 なぜそんなテロリストがここにいるのか、という疑問。そして、恐怖。


「だが、王子と王女はとりのがした。子供2人だからと侮って仲間を1人だけ送ったが、森林から仲間は戻ってこなかった。消息不明。3人ともね。

 それで最近になって見つけたんだ。王子らしき人物を。ここに入学したっていうから殺しに来た。

 名前は、


 坂原 真。


 どう? まだ説明が足りないかな?」


 始終にこにこと不気味な笑みを浮かべ語る男。

 皆は冷や汗を流しながらも、真の様子を伺う。


 真は、迷っていた。


(どうする? こいつらは違うと言ってもそうだと言っても皆を殺すし俺も殺される・・・どう乗り切るか、だな・・・)


 少しの間考え込んでから、顔を上げた真。


「答える前に俺以外を解放しろ。でないと答えない」

「うーん、どうしようかな」

「・・・・・・」


 真はそれ以上何も言わず黙る。

 男と見つめ合う、いや、にらみ合った後、男がおれる。


「しょうがない。1名だけ残し、他は解放しろ」

「・・・・・・」

「これ以上は譲歩できないなぁ」

「・・・わかった」


 真と男は最大限互いの要求をのみあった。

 これ以上は無理だ、と2人とも判断したのだ。


「じゃ、そこの女の子でどう?」


 男がさしたのは春。

 真はまた黙る。

 春も迷った眼で真を見ている。


「私が残る、ということではいけませんか?」


 すると後ろで声が上がった。


(会長・・・)


 真が少し驚く。だが、会長としての責任感からかと考え納得する。

 

 声を上げたのは生徒会長の京香だ。


「ま、いいよ」


 男は軽く了承する。正直誰でもよかったのだろう。


 他の人質が解放されたところで男がもう一度尋ねてきた。


「さ、君は、誰だ?」


 男の質問に、真は立ち上がってから答えた。


「俺は、国府宮 真(こうのみや しん)。この国の、王子だった者だ。お前たちの言った通りな」


 京香も覚悟はしていたのだろうが驚いたようだ。


「やはり君か。自分から言ってくれて助かったよ。確かめる手間が省けた」


 男は微笑んでいった。


()れ」


 瞬間、テロリストたちが飛び出してくる。真を殺しに。


「がっ」

「うぁっ」


 だが、真の方が早かった。


 テロリストたちが次々に倒れていく。


「な、なにが起こって・・・」


 ボスの男は仲間が倒れていく様子に驚愕している。


「これで、お前が最後だ」


 ボス以外の男たちを倒してから、男に告げる。


「っ、お前は、一体何者なんだ!?」


 切羽つまりながら叫ぶ男。知っていても、問わずにはいられなかった、というところか。


「俺は――坂原 真だ」


 真が答えた瞬間、男の意識はとんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ