実習
あれから3人は、よく行動を共にしていた。
そして今日。今日は魔法の実習がある。戦闘用だ。それには、危ないので学校以外の講師に来てもらい、練習中はずっと指導と見張りをしている。
だが、5組は例外。魔法のレベルが低い、とみなされ講師がこない。いつもの担任だけだ。
それでも、問題が起こる事は全くない、といっても過言ではない。特に5組は。
だが、今回は、今回だけは違っていた。
実習は、午前中を使って行われる。出席番号順に対戦相手が決まり、それぞれ2つのコートにわかれ、行われていた。
真・春はAコート。美奈はBコート。
ここで魔法について。真たちが使う魔法は、呪文を唱え、魔法式を組み立て発動するもの、呪文を唱えずとも発動できる魔法に別れている。基本は呪文を唱えない。
それは、如何に早く魔法式を構築させ、如何に強力な魔法を発動するかが試される、ということだ。
そして、真が次の番、というところまで来た時に、事故は起こった。
「いけっ」
「くっ」
前の組では防戦が続き、試合が長引いていた。そして、ここで決まる、というところ。
片方が最後の決め手の魔法を発動する。すると、もう片方が抵抗するために攻撃を繰り出そうとした。
それは、ぶつかれば大爆発するもの。2人が繰り出した魔法は両方とも火属性のものでもあった。
いくら落ちこぼれの生徒の魔法でも、他の生徒たちも被害は免れない。
「きゃぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁ!」
そんな悲鳴を上げる人もいた。
真は咄嗟に前にでた。
「真っ」
「坂原さん!?」
春と美奈の声が聞こえた。その他の生徒たちも、真が爆発の中、飛び込むのを見て思わず声を上げた。
真は涼しい顔。相変わらずの無表情。
だが、その表情が皆に見えるはずもなく。
真は、何もない手を何かを持つ手に変える。そして、
「来い、MAGIC BOOK」
と呟いた。すると、ふっと真の手に現れる本。
「守護神『SYURA』」
真が小さく唱える。
一瞬の出来事。爆風が生徒たちの間を駆け抜ける。
「きゃっ」
尻もちをつく子もいるくらい、風の勢いは強かった。それから、春と美奈は顔を見合わせ、爆発の方へ駆け寄る。
だがそれに及ばなかった。煙の立つ中から1つの影が。
2人は同時に叫ぶ。
「真っ!」「坂原さん!」
それは2人の予想通り、真だった。真は試合をしていた2人を抱えていた。そして、無傷。
他の2人も、無傷だった。
「2人とも、皆は?」
冷静な口調で尋ねる真。その質問には春が答えた。
「全員無事。それより真はどう・・・」
「ならよかった。この2人は気絶している。運ぶのを手伝ってくれないか」
真は尋ねようとした春の言葉を遮り、そう述べる。
そうして3人は保健室に2人を連れていった。
まだざわめきが収まらない生徒たちに向かって、担任は声をかける。
「み、みんな、実習を、再開しておいて・・・ください」
本当は始めると危険があるのでやってはいけないのだが、担任は慌ててそう言った。そして、足早に実習室を後にする。
残された皆はぽかんとしながらも、一旦実習を中断する。
担任よりもしっかりしている生徒たちだった。
保健室。
2人をベッドに寝かせ、横の席に座る3人。
「真、ほんとに大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ」
春は真の無事を再確認する。
美奈も尋ねる。
「あ、あのっ、坂原さん。どうやって爆発を・・・?」
我慢できず、単刀直入に聞いた。
だが、真は口を閉じたまま。少しして、何かを口にしようとした瞬間。
ガラっ
扉を開ける音。
3人は同時に振り返る。
ドアから入ってきたのは見知らぬ生徒。いや、1度だけ、観たことがある。そう、入学式で。
彼女は――
「大丈夫だった? 実習室で事故・・・? があったって聞いたんだけど、あっ、ごめんね。びっくりしたよね。私、昨季 京香です。生徒会長だよ」
彼女は生徒会長。2年生だ。3人の京香に対する印象は、気さくな人。
「それでー、えっと、爆発を抑えた、っていう子は・・・」
「あ、はい」
さっきまでぽかんとしていた3人だったが、京香に問われて我に帰り、真は返事をし立ち上がる。
「君、名前、なんていうの?」
「坂原 真です。1年5組です」
「ありがと。じゃ、真くん。どうやって防いだか、教えてくれない?」
京香に聞かれ、一瞬口を閉ざし、また開く真。
「あれは・・・火属性の魔法を構築し、爆発を抑え込みました」
「・・・ふぅん。なかなかすごいことだよ。どうしてそれだけの実力を持ちながら5組なのかな? あ、別に5組を差別してるわけじゃないんだよっ、これは」
真はMAGIC BOOKのことを適当に誤魔化す。
それを聞いた京香はまた質問し、勘違いされないようにあせって付け足す。
「今回がたまたまだった、ということです」
「確信がないのに飛び込んだんだ?」
「何もしない方が俺は嫌だからです」
「ふふふ。いい度胸だね♪」
もう一つ質問した京香は、満足したかのように満面の笑みを浮かべた。
「怪我なくてよかったわ。ありがとう、真くん。じゃ、またね」
そう言い残して、保健室を後にした。
ちなみに担任は、いそいで職員室に行き、校長に説明していた。普通は1番に生徒の安全を確認するのだが・・・。こういうところが、5組の担任に回された理由だろう。
それはさておき、
「真、すごいね。ほんとに5組? あの説明も、ほんとなの~?」
ふっふっふ、と言いながら聞いてくる春。傍から見ればだいぶ失礼な気がするが、真としては事実なので何とも言い難い。
「・・・ああ、本当、さ」
「あやしー」
さらにニヤニヤする春。真は半ば本気で冷や汗がでそうだった。
本の名前が安直なのはお許しください・・・(-_-;)