国立魔法高等学校 入学式
晴れた暖かな日。四月一日、国立魔法高等学校入学式。
式は終わっている。様々な人が訪れ、親が生徒と話していたりしている。訪れる人々の輪をかき分けて進む、高校生がいた。
名札には一年五組と書かれている、今年の新入生。だが、その顔は無表情。
普通ならエリート校に入学でき、喜びに顔をほころばせるはずなのに。彼の顔は平均より少し整っているが無表情なので印象に残らない。そして黒髪に黒目、ピシッと着こなした制服。何にしても普通。
こんな普通な高校生普通じゃない。そう思うだろう。そう、普通ではないのを隠すため、普通を装っている。
いかにも小説。だが、本当にそうなのだ。その理由は後程・・・。
彼が向かうのは教室。1-5だ。一応新入生は担任から学校の説明を受けに教室にはいかなければならない。が、まだその時間には早すぎる。それでも、彼は教室へ向かう。
ガラリ、と音を立てて教室のドアを開ける。だが、思わぬことに先客がいた。彼女は窓に背をもたれ、なんとも絵になる美少女だった。彼女はさっぱりとしていてなれやすい、そんな印象を与えてくれる。
彼は教室に入るのを少しためらった。すると先客の彼女は、
「どうぞ、このクラスの子、だよね」
「ああ、そうだ。君も?」
「ええ。始めまして。私、宮田 春。よろしくね」
「坂原 真。よろしく」
2人は簡単な自己紹介をし、互いに席につく。
先客の彼女、春は、彼、真に話しかける。
「どうしてこんな早くに?」
「それは君も・・・宮田さんも同じだろう?」
「春、でいいよ。私は親が急用。ここに入った知り合いの友達もいなくて話し相手なしだったから来ただけ」
「そうか」
「ねぇ。知ってる? ここ、5組は落ちこぼれ、って言われてるのを」
そう、この学校でも上下関係がある。優秀な順にクラスが決められるからだ。
1組はダントツ優秀な生徒が集まり、2組は優秀、3、4組は普通、5組は落ちこぼれ。
1~4組は5組をけなし、落ちこぼれ、と罵る。
そんな世界に、この学校もなっているのだ。
「噂程度には」
「真は、嫌じゃないの?」
「特には気にしてない。気にしても仕方がないだろ」
「ま、それもそうね。真の言う通り。真、これから仲良くやっていこうね」
「ああ、よろしく」
その会話が終わった時、教室に他のクラスメイトが入ってくる。ちらほらしたと思えば、どっと押し寄せてきて、すぐに全員がそろった。
担任教師が入ってきたが、いかにもやる気のない先生だ。よれよれのシャツを着てだるそうにため息をつく。
これは生徒もやる気をなくす。
そして出席をとり、生徒もだるそうに気落ちした感じになり返事をしていた。
休み時間。
真と春は教室で話していた。それと同時に、春が美少女ということもあり、少し注目されながらも教室の雰囲気が柔らかくなった気がする。
すると、1人の女子が話しかけてきた。
「あの・・・」
控えめな少女で、なんだかもごもごしている。
「どうしたの? え、と・・・美奈ちゃん」
春は先ほどの出席で、女子、高原 美奈の名前を覚えていた。
「え、えっと、坂原さん、ですよね?」
意外にも、話しかけられたのは真だった。
「ああ、俺だが・・・」
「なんだ、真か。で、どしたの?」
ちぇっと可愛らしく言う春。
「あ、あの、坂原さんは、このクラスの成績では1番と、聞いたので・・・」
「そうだったのか?」
「真、見てなかったの? クラス発表のところに、クラスでの順位もはってたじゃん」
「・・・見ていなかった」
「でも、このクラスで、だからねぇ」
「まぁな」
「そう、ですよね」
3人ともシンとなる。
「あ、美奈ちゃんだって2番だよね」
「宮田さんも3番、でしたよね」
「へぇ、2人ともすごいんだな」
「1番は真じゃん!」「1番すごいのは坂原さんですよ!?」
2人の突っ込みが真にはいる。
「仲が良いんだな」
無表情ながらもいう真。2人は顔を見合わせて、
「ふふっ」
と吹き出す。そして、
「よろしく。美奈ちゃん。私のことは春でいいよ」
「よ、よろしくです。春さん」
微笑みあう2人だった。