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マブダチ☆

諒輔兄ちゃんと別れ、教室に戻ると隼斗くんに尋問されました。


「大丈夫だった?何もされてない?一体なんの用だったの?」

「あ、こないだの屋上の事・・・。その、会話聞かれてて・・・」

「うわ、マジで!?ゴメン!俺のせいだね」

「ううん、諒輔兄ちゃん心配してくれてて。優しいとことか変わってなくて懐かしかったよ」

「・・・そっか。良かったね」


一瞬隼斗くんの顔が曇った気がしましたが、すぐにいつもの隼斗くんに戻ったので気のせいだったみたいです。


お昼休みのチャイムが鳴り、隼斗くんが購買に向かおうとしたので声をかけるよりも先に隼斗くんのシャツの裾を掴んでしまいました。


「!?」

「あ、ご、ごめん!今日お弁当2つ持ってきたから隼斗くんと食べようと思って・・・」

「えっ?俺に?やべぇ・・・すげぇ嬉しい・・・なんか裾キュッとかすげぇ可愛いし・・・」

「えっ?咄嗟に掴んじゃった!ごめん」

「んーん、何この可愛い生き物っ」


隼斗くんがガバッと私の肩を抱きました。

わぁぁぁ、近い!

私の頭をわしゃわしゃと撫でています。


「は、隼斗くんっ・・・」

「おい、隼斗、やめてやれよー」


石破くんが助け舟を出してくれましたが、隼斗くんは尚もわしゃわしゃしてきます。


「ハヤゴロウと呼んでくれ!よーし、よしよし!」

「わわわわわわ・・・」

「こうしてみると、ミズキが小動物に見えてくる不思議」


忠元くんもやってきてこちらを見て一言言いました。


「た、忠元くぅ〜ん、み、見てないで助けてよぅ〜!」

「いや、俺は愛でる方を選ぶ!!」

「えぇぇ〜〜〜?」


皆、ヤンキーだけどいい人だな。ヤンキーだけど。


「そういやさ、来月文化祭あるじゃん?俺らバンド組んでやらねぇ?今、生徒会の方で野外ステージのバンド募集してんだよ」


石破くんが天然パーマの髪の毛を格好つけてクシでとかす仕草をしながら言いました。

あ、この学校にもちゃんと生徒会があるんですね。無法地帯なとこだから、そういう組織すら無いと思ってました。


「文化祭は女子も来るからな、目立って損はねぇよ!」

「おっ前・・・アッタマいいな!!」


石破くんの考えに忠元くんが同調しています。目的はどうであれ、すっごく楽しそうです。


「わぁ、皆のバンド楽しみだな」

「何言ってんだミズキ。お前は強制参加だよ」

「えぇぇ?お、俺?楽器なんて出来ないよ!」

「タンバリンとかカスタネットとか持って歌ってればいいからよ」

「歌・・・かぁ・・・」

「隼斗も勿論やるだろ?」

「んー、ミズキがやるならやるけど」

「じゃぁ決まりだな!!」

「ちょっと待って!俺、やるって言ってないじゃん!(笑)」

「だからお前は強制参加だって言ったろ?(笑)」

「「「「ハハハハハッ」」」」


ふふふ、みんなで何か想い出になる事するのっていいな。


「じゃー、今日から放課後練習な」

「あっ、ごめん。石破くん。今日は姉が迎えに来るから・・・」

「おねーちゃんも一緒に来ればいいじゃん。隼斗(彼氏)も居るんだし」

「い、いや。朝からちょっと機嫌悪いからホントごめん」

「じゃー、明日からにすっか」


わー、そう言えば隼斗くんが彼氏の設定だったっけ。ミズキの前でそれ言われたらますますミズキ怒りそう・・・。俺はヤローとはつきあわねぇって!!って。

隼斗くんは石破くんと忠元くんからお弁当を死守しながら全部食べてくれました。美味しかったと言って貰えて嬉しかったです。


放課後、生徒会にバンドの申請をしてくると言っていた石破くん達と別れ、隼斗くんと一緒に校門まで歩きました。

校門には既にミズキ・・・と沙都子が居ました。さ、沙都子!?なんで?


「お、お待たせ。ミサキ・・・。今日はお友達も一緒なんだね」

「ちょっと、ツラ貸せ?ですわ!」

「えっ!?」


沙都子ってば、生粋のお嬢様がそんな言葉使っちゃダメだよっ!

ミズキを見ると、ミズキはプイッと顔を背けました。なんなの?この状況は!?


「あ、じゃぁ、こっちも友達連れてってもいいかな?」


私は目で隼斗くんにSOSを訴えました。

隼斗くんは察してくれた様で


「じゃー、カラオケでも行きますか」


と言って自然な動作でミズキと沙都子の背中を押してカラオケボックスへと向かいました。

なんか隼斗くん、手慣れているなぁ。チャラい印象は伊達じゃなく、女の子の扱いのエキスパートっぽいです。

まぁ、隼斗くんほど格好いい人だったら、女の子が放っておかないよね。きっと。

皆に優しい隼斗くん・・・。


ズキンッ


うっ、なんだろ、胸が痛いよ・・・。


カラオケボックスの個室に入ると、沙都子が口を開きました。


「単刀直入に言わせて頂きますけど。何をやっているんですの?ミサキ」


沙都子がこっちをまっすぐ見て、ミサキと言っています。


「何年一緒に居ると思っているんですか!この方がミサキでは無いって事くらいわかりますわよ!」


今度はミズキを指差しています。


「どうして話してくれなかったのです?アタクシはミサキにとって親友ではなかったのですか?」

「心配かけたく、なかったの。こんな事言って気味悪がられたり・・・嫌われたくなかったから・・・っ」

「嫌ったりする訳がないでしょう!?アタクシを見くびらないでくださいませ!!」

「沙都子・・・」

「嫌うどころか心配で心配でたまりませんわよ!粗暴な殿方の居る学校にミサキが通ってるなんて・・・。今すぐにでもアタクシのお父様にお願いして別の学校に転校させたいぐらいですわ」

「ちょ、ちょっと待って!あのね、最初は怖かったけどみんな結構いい人たちばかりでね、アタシこの学校に通うの楽しくなってるんだ・・・」

「隼斗が居るからじゃねぇのか?」

「えっ?」


それまで黙っていたミズキが口を開きました。


「隼斗と離れたくないんじゃねぇのー?どうせそういう、くっだらねぇ理由だろ」

「ち、違うよ!来月は文化祭だから、皆で一緒にバンドやろうねって・・・だから・・・っ、くだらなくなんかないっ!!ミズキのバカっ!なんでそんな意地悪言うのよ!!」


私は勢いで席を立ち、カラオケボックスから飛び出しました。


「ミサキ!お待ちになって・・・!〜〜〜この、阿呆っ!ヤキモチも大概になさい!!」

「あーぁ、二人とも出て行っちゃったねぇ。『なんで』ってそりゃぁ、好きな子がライバルと一緒の学校に居るのが許せないからだよねぇ?」

「テメェ・・・」

「おっと、八つ当たりは勘弁してよ。つーか、・・・テメェの好きな女を泣かしてんじゃねぇ!」

「・・・・・・・・・」

「お前のせいでミサキちゃん1回死んでんだろ?俺だってハラワタ煮えくり返ってんだけど」

「・・・っ!!」

「まぁ、ミサキちゃんを何度も傷付けた事、死ぬほど反省しなよ」




私は繁華街から離れ、土手沿いを全力疾走していました。

ミズキのバカバカ!!もう口聞いてあげないんだからっ!


「ミサキー、、待、って、ハァハァ・・・」


ハッとして後ろを振り向くと、沙都子が追いかけて来ていました。


「沙都子・・・、その制服じゃ走りづらいよね・・・」


私は沙都子に走り寄って、よろける沙都子の身体を支え、そのまま土手の芝生に並んで座りました。


「ふふ。今のミサキは力が強いんですね・・・」

「ミズキの身体だからね!・・・あの、沙都子・・・ごめんね。アタシ自分が傷つきたくないからって沙都子の事信じてなかった・・・」

「ミサキ・・・もう、いいんですの。大変な目に合いましたわね」


沙都子が私の背中に手を回してポンポンとしてくれました。


「さっき、一緒に居た人にも同じ様に慰めてもらったの。私がミサキだって知っても変わらず優しく接してくれる・・・」

「ええ、見た目はアレですが、ミサキを見る目が優しかったですわ」

「沙都子に今感じている気持ちと、隼斗くんにしてもらった時感じた気持ち、同じ様で違う様な・・・」

「その方の事、気になっているのですね」

「そう・・・なのかな?だとしたらミズキが言ってた通りだよね?・・・アタシ、ミズキにバカって言っちゃった!」

「もう!ミサキはどこまでお人好しなんですの?あの阿呆が言った事は気にしなくてもいいんですのよ!いいですの?ミサキ。周りに振り回されちゃダメですの。しっかり自分の気持ちに向き合わなくちゃ、ですのよ」

「自分の・・・気持ち・・・。うん。そうだね。アタシずっと周りの目を気にしてばかりだったよ。ありがとう沙都子!」

「とんでもないですわ。当然の事ですのよ。だってアタクシ達・・・ええと、そう!マブダチ☆ですからね」

「沙都子・・・、そういう言葉は使っちゃダメだよー」


本当に沙都子には感謝しなくてはなりません。

沈みゆく夕日を眺めながら私は沙都子に一つ、お願いをしたのでした。

今回もお読みくださり、有難う御座いました(^^)

9/20会話文の「」の表示ミスを修正しました。

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