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なくて七癖

隼斗くんに身バレした翌日。

昨日までとは違った朝を、迎える事が出来ました。

昨日までは不安で不安で気分も重たかったのですが、隼斗くんという、良き理解者が出来たのでヤンキー校に行くのもそんなに気負わなくなりました。


あの後ミズキは不機嫌なまま、自分の部屋に戻ってしまったのでアレから口を聞いていません。

しかし、毎日の日課のミズキを起こすというミッションは遂行しないとです。


「おーい、ミズキー!朝だよ〜!」


ミズキの部屋を開けると、既にミズキは起きていて、着替えをしていました。


「み、ミズキ?自分で起きれたの?凄いじゃない!おはよ〜」

「別に。いつまでもミサキに頼ってらんねぇからな」

「そ、そう?じゃぁ、私下に降りてるね」


うぅ、なんか不機嫌なの続行中かな?

身支度を終えたらしいミズキが下に降りてきました。


「今日はミズキも学校に行くんだね」

「・・・学校終わったらソッコーで迎えに行くから校門で待ってて」

「え?いいよー、家に帰るだけだから大丈夫だよ」

「これ以上変な虫がついたら嫌だから。朝飯要らねぇ。行ってきます」

「あ、ミズキ!・・・行ってらっしゃい」


うー。ミズキは過保護過ぎない?心配してくれているのは痛いほどわかるけど、ちょっと過干渉というか・・・。今の私はミズキの身体なんだし、どっちかって言ったらミズキの方が危ないと思うのだけどなぁ。

隼斗くんみたいに、私の親友の沙都子が味方になってくれれば良いのだけれど。

でも、沙都子に事情を話して気味悪がられたりしたら嫌だし・・・余計な心配かけさせたくないし・・・。


あ、考え事してたら、もう時間ー。

私も学校に行かなくちゃ遅れちゃう。

私はミズキが食べなかった朝食のお皿にラップをし、冷蔵庫に閉まいました。

もー!ミズキったらお弁当も持って行かなかったんだ!そうだ、これ隼斗くんに食べてもらおうかな。

私はお弁当を2つ持って、家を出ました。



私が壱之葉に通ってから気付いた事。

1、朝から来るヤンキーは意外と真面目

2、もれなくほぼ全員沸点が低い

3、昼から来るヤンキーは朝が弱いだけで学校に来てる時点で1とそんなに大差は無い


つまりは怒らせなければオッケーって事よね。

何が原因で怒りだすかわからないもんなぁ。

昨日はシャーペンの芯よこせ、よこさないとかで授業中に揉めてたし・・・。


「よぉーッス、ミズキ!」

「あ、おはよう隼斗くん」


学校では「ミサキちゃん」では無く、ちゃんと「ミズキ」と呼んでくれる隼斗くん。

お互いに目配せをして微笑み合う。なんか、二人だけの秘密って感じでドキドキします。



チャイムが鳴ると、席に座るなり机に伏せて居眠りポーズになる隼斗くん。授業、聞かないんだ。はは。

隼斗くんはあいうえお順で、隣の席なんです。

私が麻倉で、あ。隼斗くんは風城で、か。

隼斗くんではないけど、授業はもはや先生には期待できないので、予習復習の時間だと思う事にしました。私が教科書とノートを机に広げ勉強をしていると、


「よぅ、最近ミズキガリ勉じゃね?」


と、石破君が後から声をかけてきました。


「あ、テ、テストで悪い点取ると姉に怒られるから・・・」

「へぇ、こないだファミレスで会った姉ちゃんだよな?可愛かったなぁぁ〜。今度マジで紹介してくれよ、なぁ?」

「え、えと。その・・・」

「石破。悪いな。俺その姉ちゃんと付き合ってるんだ♪」

「えっ!?は、隼斗くん??」


寝ていると思っていた隼斗くんが、私達の会話を聞いていた様で会話に入ってきましたが、凄く問題発言です。


「ちぇーっ!なんだよ!お前こないだ久し振りとか言ってなかったか?」

「うん、その後告って付き合い始めたんだ♪付き合いたてホヤホヤだぜ!あ、ミズキにはまだ内緒にしてたんだっけ」

「う、うん。聞いてないよ・・・」

「なんだよ、隼斗!抜けがけしやがって!チクショーー!!」


石破くんが隼斗くんを恨めしそうに睨んでいます。


「まー、そういう事だからホラ、ミズキの勉強と俺とミサキちゃんの恋路の邪魔しない邪魔しない♪」


隼斗くんは石破くんにシッシッというジェスチャーをした後、再び居眠りポーズをしました。

は、隼斗くんと付合ってる・・・。わぁ!もしミサキ()に戻れたら私隼斗くんと付き合ってる事になるんだ!

石破くんを諦めさせる為の嘘だと思うけど、嬉しいと思ってしまいました。

私、隼斗くんに惹かれているのかな。

隣で居眠りする隼斗くんを見て、心がキュンっとするのは恋心なのかな?


休み時間に入り、廊下側のクラスメイトに呼ばれました。


「おーい、麻倉ぁ!なんか3年の先輩が呼んでっぞー」


え?呼び出し?えぇー・・・?行かないと、駄目だよね?

隣の隼斗くんを見ると、


「俺もついてくよ」


と言ってくれました。

なんて心強い事でしょう。

廊下に出ると、私を呼び出したのは諒輔兄ちゃんでした。


「よう、ミズキ」

「諒輔兄ちゃん!やっぱり諒輔兄ちゃんだったんだ!」


懐かしいな、こうして見ると諒輔兄ちゃんあの頃よりグッと大人っぽくなっています。


「ちょっと話があるんだけど、いいか?あ、そっちの友達は要らねぇ」

「え?」

「そんなに睨まなくても何もしねぇよ。少しコイツと二人で話したいだけだ」

「そ、そっか!隼斗くん、この人は幼馴染のお兄ちゃんだから一人で平気だよ」

「・・・・・・わかった」


隼斗くんは納得してないっぽかったですが、踵を返して教室に入っていきました。


「こっち」


諒輔兄ちゃんの後を追って歩く事数分。運動場の外れにあるどこかの部の部室みたいな所に来ました。


「ここは、放課後まで誰も来ないから安心しな」


諒輔兄ちゃんがふっと笑って私に座りな、と椅子を持ってきてくれました。

あ、この笑顔・・・。全然変わってないな。


「一昨日、さっきの男と一緒に屋上に居ただろ?」

「え?」

「あの時お前らからは見えない所に俺も居たんだけど」

「え・・・、あの・・・」


私は頭が真っ白になってしまい、言葉が出てきません。

まさか、会話とか聞かれていたって事でしょうか・・・。


「お前は・・・ミサキなのか?」

「っ!?」


やっぱり!ど、ど、ど、どうしよう?


「あの時、俺の聞き間違いかと思って色々考えてみたが、いっそ本人に聞いた方が早いと思って」


諒輔兄ちゃんが真剣な顔をしてこちらを見ています。

と、いうか、私の手元を見ています。

私の両手はしっかりとズボンを握りしめており・・・。


「その癖・・・」


ぎゃぁ!!諒輔兄ちゃんもこの癖知ってるの!?私以外の人には、そんなにメジャーなものだったんですか!?

どうやら、私は嘘がつけないみたいです。


「諒輔兄ちゃん・・・。うん。ミサキだよ」

「信じられないけど、確かにミサキだよな?」

「諒輔兄ちゃんがこの学校に居るのを知って、会いに行こうとは思ってたんだけど、ミズキみたいに振る舞えるか不安で・・・」


すると、諒輔兄ちゃんが私の頭に手をポンと乗せると、そのまま撫でてくれました。

この感じ、久しぶりです。私、諒輔兄ちゃんにこうやってしてもらうのが大好きでした。


「大丈夫だ。安心しろ。お前はお前なのだから、そのままで居ればいい」

「諒輔兄ちゃん・・・」

「俺が引越しをしてからずっと気にはなっていたが、部活やらで忙しくなって結局疎遠になってしまったな」

「寂しかったよ、諒輔兄ちゃんが引越しちゃって」

「あぁ、これからは気軽に会いに来い」

「うん!諒輔兄ちゃんもまた、家に遊びに来てね!ミズキもきっと喜ぶから」


嬉しいな。ミズキの身体になってなければ諒輔兄ちゃんと、こうやって、また仲良くなれなかったかもしれないもんね。

それにしても、私の迂闊さと言ったら笑えないレベルだよね・・・。

もう学校では入れ替りの話はしない様にしなくては、と肝に命じました。

今回もお読み下さり、有難う御座いました(^^)

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