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乙女心と侠気(おとこぎ)

私が一昨日の夜に起こった事を話すと、さすがに隼斗くんは驚きましたが、すっかり変わってしまった性格に違和感があったため、なんとなくは信じてくれました。


「で、今ミサキちゃんがミズキの身体で生活しているんだね?」

「はい・・・。ごめんなさい」

「いや、ミサキちゃんが悪い訳じゃないから。・・・でも、本当にミサキちゃんなのかな?」


隼斗くんはそう言うと、私の顔を覗き込みました。


「隼斗くん、近い・・・ですっ!」


ミズキ以外の殿方の顔を至近距離で見た事が無いのでとても恥ずかしいです。

今自分がどんな顔をしているのか検討もつきません。


「あぁ、本当だ。ミサキちゃんだ」

「え?」

「ミサキちゃん、困ったことがあったりすると必ずスカートの裾掴む癖があったなぁ、と思って。今も変わってないね、その癖」


はっ、本当です!私今、正にズボンを握り締めています。


「隼斗くん、アタシも知らなかった癖をよく知ってましたね・・・」

「俺、朝、言わなかったっけ?ミサキちゃんは俺の初恋の人だって。俺さ、ミサキちゃんの事好きだって気付いてから、いつもミサキちゃんの事を見てた」

「あっ・・・。その事、とか、どこが、す、好き、とか無理やり聞き出した感じでごめんなさい」

「別に良いけど。結果的に本人に直接告れた訳だし。で?俺にチャンスはあるの?ミサキちゃん?」

「えっ!えぇぇぇ・・・、あの、その・・・」

「はははっ。照れてるミズキを見て可愛いって思うなんて俺も終わってんな」


そうでした。私はミズキの身体なんですよね。

でも・・・。

何か分かりませんが、隼斗くんに信じてもらえたという安心感からか涙がポロポロこぼれてきました。


「隼斗くん、ありがとぉ・・・」

「ミッ、ミサキちゃん?えっ?えっ?」


隼斗くんは辺りをキョロキョロして、誰も居ないのを確認すると、私をぎゅっと抱きしめました。


「は、隼斗くん?」

「ミサキちゃん、大丈夫、大丈夫だから。ミサキちゃんがミズキの姿だろうと俺が傍に居るから!俺がミサキちゃんを守るから!」

「隼斗くん・・・。でも、隼斗くんが変に思われちゃうよっ・・・」

「まわりのやつらになんて、どう思われたっていいよ。俺、ミサキちゃんの力になりたい。ホラホラ、俺のシャツで涙拭いちゃえ!」

「隼斗くん・・・ふふ」

「ミサキちゃん、笑った」


ミズキ、隼斗くんが同じ学校で良かったよぉ〜。

隼斗くんの腕の中で、あ。これ、はたから見たらBLっぽくないですか?なんて呑気なことを考えてしまっている私でした。


「ミサ・・・キ?だって・・・?」


屋上の入り口から丁度死角になる場所に先客が居たことなんてこの時の私には知る由もありませんでした。




放課後私は隼斗くんを連れて自宅へと向かいました。


「ミズキー?だだいまー」


玄関を開けてミズキを呼びました。


「ミサキお帰りっ」


ミズキが部屋のドアをバンッと開けてダダダダッと階段を降りてきました。


「ちゅーっス!ミズキ。元気そうじゃねぇか」


ミズキは玄関先の隼斗くんに気付くなり、眉間にシワを寄せました。


「は!?何で隼斗を家に呼んでんだよ!?」

「まー、まー、まー。落ち着けよ。ミズキ」

「えっ?アレ?おい、ミサキ!なんでコイツ俺の事ミズキだって知ってんだよ!?」

「それについては説明するから、とりあえず上がってもらおうよ」


アンタだって素で私をミサキって呼んでるじゃないって言葉は頑張って飲み込みました。


私は隼斗くんをリビングに案内してソファに座ってもらい、お茶の用意をしにキッチンに向かうと二人が言い争いを始めました。


「お前、ミサキに近付くなって言っただろうが!!」

「あれはミサキちゃんじゃなくてお前の身体だもーん」

「ミサキに近付く悪い虫はソッコーで駆除しねぇとなぁ?」

「あぁ!?上等だよ。やってみろよ?ミ・サ・キちゃん♪」

「ストーーーーーーーーップ!!ミズキも隼斗くんも落ち着いて!喧嘩はダメだからね!」


私はメンチを切り合う二人を宥めて、席につかせました。


「あっははははは!外見はミサキちゃんだけど、中身はほんっとミズキのまんま!」


隼斗くんがミズキを見て爆笑しています。


「あのね、お昼休みにミズキとのメールを隼斗くんに見られちゃって・・・ほら、メールでミズキが私をミサキって呼んだから・・・」

「はぁぁ!?お前本当何やってんの?」

「ご、ごめん。それが無くても、アタシの呼び方も間違ってたみたいだから遅かれ早かれ・・・」

「まぁまぁ!バレたのが俺で良かったんじゃん?明日からちゃんとミサキちゃんのフォローとかするしさ」

「そ、そうなの。隼斗くんが協力してくれるって言ってくれて・・・」

「隼斗が?ミサキの?フォロー?お前、それコイツが何の下心も無しに動く訳ねぇじゃねぇかよ」

「それはあり得ないよ!万が一下心あったとしても、身体はアンタじゃん。流石に間違いは起こらないよ!ねぇ、隼斗くん?」

「ん?・・・う、うん」

「ほらぁ!コイツ危ねぇよ!ミサキ、俺のケツは絶対死守しろよ!?」

「えっ?まさか!」

「いやいや、もうミズキじゃなくてミサキちゃんに見えてるもんな、俺。うっかり間違いを起こしてしまうかもしれない・・・」

「えぇー?信じてるよ?隼斗くん!」

「アハハハッ」


そんな他愛ない会話で私も、多分ミズキも少しはほっとしたんじゃないかな。当事者以外に理解者が居てくれるのはとても心強いもの。


「あ、そうだ!今日家ハンバーグなんだけど、良かったら隼斗くんも食べていってね」

「ミサキちゃんの手料理・・・幸せすぎる・・・」

「てめぇ、さっさと帰れ!てめぇなんかにミサキの料理はもったいねぇ」

「んだと?てめぇもシスコン大概にしろよ?」 

「あんだと?コルァ!!」

「コラァー!ミズキ!なんでアンタは隼斗くんにいちいちつっかかるのよ!」

「心配なんだよ!クソッ!俺も男の格好して壱之葉通うかな・・・」

「大切なミサキちゃんの身体を危険なヤローどもの前に晒すわけ?ま、黙ってミサキちゃんは俺に任せなよ。絶対に守ってみせるから」


隼斗くんは、よく『守る』って言ってくれますが、その度にくすぐったい気持ちになります。男の子ってこんなにも優しいんですね。明日から少しヤンキーにも優しい気持ちで接する事が出来るかもしれません。



ハンバーグが出来上がり、皆でわいわい食べました。

とても楽しかったです。

ミズキと一緒に、玄関先まで隼斗くんをお見送りしました。


「じゃぁ、ミサキちゃんご馳走様でした!また・・・明日ね」

「うん、宜しくお願いします」

「てめぇ。ミサキになんかしたらタダじゃおかねぇかんな!」

「ミズキ!もう!」

「未来の義兄ちゃんに向かってその口の聞き方はないなぁぁ!」

「てめぇなんか認めねぇからな!アニキぶってんじゃねぇよ!」

「もう!二人とも!最後までこうなっちゃうんだから!隼斗くん、気をつけて帰ってね!」

「うん、おやすみ。ミサキちゃん」

「無視すんなぁぁ!」



もう、本当になんでミズキはこんなにも隼斗くんにつっかかるのかしら。

私を心配してっていうよりも、何か意地になってるみたいです。


「ミズキー、ささっとシャワー浴びてきちゃいなー」

「なぁ、ミサキ」

「うん?」

「アイツはいいやつだけどさ、あんま頼るなよ」

「え、何で?」

「あんまり男を信用すんなって事!ミサキには俺が居るからいいだろっ!」

「ミズキ?心配してくれてありがと。ふふ。でもそういうセリフは好きな子が出来たときの為に取っておきなよー。姉弟で使う言葉じゃないと思うよ」

「俺はっ!!姉弟だって思った事なんて一度もねぇよ!!」


ミズキはそう言い残してバスルームへ走っていきました。


えぇー・・・?今まで私はミズキにお姉ちゃんて思われてなかったのー?・・・じゃぁ、妹?

難しい年頃なんだね、ミズキ。同い年でも隼斗くんはストレートな物言いだし、男の子って、謎すぎる。

今回もお読み下さり、有難う御座いました( ´ ▽ ` )ノ

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