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ヤンキー旋風

荒れた教室、汚い机・・・そして異様な匂い。

本当に同い年なのだろうかと疑いたくなる人々。


「よぉーっす!」

「おーっす!」


よくわからない挨拶が交わされています。

右を見てもヤンキー、左を見てもヤンキー、何度周りを見てもヤンキーヤンキーヤンキー!

わかってはいたけど何コレ、何でここだけこんなにも見事にヤンキーが揃っているの?

あ、あれかな?腐ったみかん方式みたいな?一人ヤンキーが居ると周りもヤンキーになっていくってやつかな?


それ、なんてパンデミック!?なんてバイオハザード!?


あぁぁぁぁ・・・怖い・・・怖いよぅ。


「よう、ミズキっ」

「ひっ!!!」

「ん?」


ふいに肩を叩かれて、口から心臓が飛び出すかと思いましたよ。

えと、この人は・・・


「隼斗くんだ!!おはよう!」

「お、おう、なんか元気だな」


よしよし、いい感じですね。

昨日ミズキに友達を教わりましたが、確実にわかるのは隼斗くんしか居ないですからね。

しかし、隼斗くん。左耳に5個位ピアスついてるし、髪の毛も金髪だし、本当にヤンキーになってしまったのね・・・。顔がいいだけに残念です。

でも、確実にわかるのは隼斗くんだけですからね、ベッタリくっついていれば大丈夫・・・ですよね?


始業のチャムが鳴り、席に着いたけどクラスの半数が空席でした。い、インフルエンザかなんかじゃないですか?学級閉鎖なみなんですけど・・・。


「・・・・・・で、・・・・・・でして、・・・・・・となります」


先生声ちっちゃ!これじゃ何を教わっているかわかんないよ。


「あ、あの。聞こえません」

「ひぃっ!すみません!!」


私は勇気を出して先生に訴えましたが、先生はビクビクして余計に萎縮してしまった感じです。


「みずきちゃん、先生いじめちゃダメだよぉ~!ギャハハハハ」


下品な野次が飛んできます。えっ!?何この状況・・・。

誰一人として真面目に授業を受けている人が居ません。

こんなんじゃ、ミズキの学業に支障が出るじゃない。よく2年生に進級出来たわね・・・。


“俺、ガッコの机に全部教科書置いてあるから”


って言っていたけど、教科書は落書きだらけだし、ノートも落書きだらけだし。あぁぁぁぁぁ!!もう、男子ってなんてガサツなの!!

イライライライラ・・・


「お、おい。ミズキのやつなんか今日えらく殺気立ってねぇか?」

「おぉ・・・。触るものみな傷付ける感じだな・・・」



結局最後までまともな授業は受けられませんでした。


「ミーズキ!今日ファミレス寄ってかね?」


隼斗くんが私を誘ってくれましたが、正直早く帰りたいのが本音ですのでお断りする事にしました。


「ごめん、パス」

「なんだよ、付き合い悪いな。昨日集会にも来なかったし」

「昨日から頭痛くて・・・」

「そーなんだ。だから今日様子変だったのか?じゃー、しゃねーか。また明日な」


隼斗くんは背中をポンと叩いて他の人を誘いに行きました。

悪い子では無いのよね。ガラが悪いだけで。


とぼとぼと校門まで歩いて来た所、セーラー服を着た女子にガバッと抱きつかれました。


「ミーズーキぃぃぃぃぃ!!女子高怖い女子高怖い・・・」

「ミズっじゃない、ミサキ!?」


自分の名前は呼びなれませんね。


「おい、あれ2年のミズキじゃね?なんで女に抱きつかれてんだ?」

「セーラー服可愛いなぁ」

「あれって聖スィーティリア女子の制服じゃねぇか?」


校門前で下校中の生徒の注目を浴び始めてしまいましたので、どうにかミズキを宥めて場所を移る事にしました。

ミズキの手を握り、学校近くのファミレスに来ました。もうこうなったら今夜の夕飯はここで済ませちゃいましょう。


「ミズキ、何かあった?ダメじゃない、アンタは今女の子なんだから!」

「だってよぉ・・・。お前のガッコのやつら、変な呪文みてぇな会話しかしねぇし、着替えん時は目のやり場に困るし、授業はさっぱりわかんねぇし・・・」

「あのね!私だって怖かったんだから!なんなの?アンタの学校は。今日一日まともな授業受けてないんだけど!」


そこまで言った時に、私達のテーブルのすぐ側を通った男子高校生に声を掛けられました。


「あれ?なんだよミズキ、俺の用事断って女連れてんの?」


あ、隼斗くんに誘われてたのすっかり聞き流していて忘れていました。


「あ、わりぃ。アネキがガッコでなんかヤな事あったみてぇで」


くっ・・・こんな言葉遣いなんてした事ありませんでしたが、どうでしょう。なかなかミズキになりきれていると思いますけど。


「あー、そっか!よく見たらミサキちゃんだ!ミサキちゃんちゅーっス!お久しぶりっス」

「あ・・・ちゅ・・・こ、こんにちは」

「だれだれ?俺らにも紹介してよ」

「ミズキのフタゴのねーちゃん」

「へー、似てるっちゃ似てるけど瓜二つではねぇな」


隼斗くんの他に、クラスの男子二人が居ました。

えーと、天然パーマ?の彼が石破くん、もう一人の釣り目の彼が忠元くんだったかな?


「ねね、お姉さん、今度お姉さんのお友達紹介してよ」

「ごめんなさい、私、男の人苦手で・・・っ」

「ほら、怖がらせちゃってんじゃん」

「じゃぁ、機会があったらでいいから、徐々に俺らで慣らしてこーよ♪」


と石破くんが何気にミサキ(ミズキ)の腕を掴もうとした時、スッと隼斗くんがその手を払いました。


「ミサキちゃん、怖がらせちゃってごめんね!こいつら女子が珍しくてしょうがないんだ。じゃぁ、俺ら向こう行くから。ほら、お前らも行くぞ!」

「おー・・・。じゃぁまたね〜」

「ミズキ、明日なー」


はぁ。やっとあっち行った・・・。隼斗くん、石破くんがミサキ(ミズキ)に触れない様に庇ってくれたよね?見た目は凄いナンパなヤンキーっぽいけど、女の子に優しいんだね。


「(ヒソ)ねね、ミズキ。隼斗くんて凄く良い子じゃない。隼斗くんなら家に呼んでも大丈夫だよ」


私はミズキに小声で話しかけると、ミズキは眉間にシワを寄せてムッとしました。


「アイツはいいんだよ!」

「どうしたの?仲良いんだよね?」

「それとこれとは別もんだ!いいの。家にはヤローなんて呼ばねぇの!」

「そ、そうなんだ」


とりあえず、私の事を思ってなんだよね?

その後のミズキは、あからさまに不機嫌になり、ファミレスから出た後も帰ってからもずっと、ムスッとしたままでした。


「ねぇ、ミズキ。アタシなんか怒らせるような事言っちゃった?」

「別に・・・」

「そう?じゃぁとりあえず、お風呂先入っちゃって〜。下着用意しておくから〜」

「ふ、風呂っ!?」

「いや、アタシも恥ずかしいけどお風呂はちゃんと入らなくちゃダメだからね。まぁ、ちっちゃい頃は一緒にお風呂入ってたし、ミズキ()に見られるならまだいいかなーみたいな」

「・・・そーかよ!俺に見られるのは平気なんだ?」

「や、あんま平気じゃないけど。弟だし」

「言っとくけどミサキ」

「は、はい?」

「俺もレッキとした男だかんな!!」


ミズキは私をキッと睨みつけると、ドカドカと足音を立ててお風呂場に消えていきました。

え・・・?ミズキが男の子だってちゃんと知ってるよ〜。弟だもん。女の子な訳ないじゃない。・・・思春期の男の子は扱いが難しいのね。


入れ替わり2日目。ヤンキー高校は怖いけど、翔くんが良い人だってわかったから、少し心配事が和らぎました。

出来る限り、目立たず大人しく空気の様に気配を消して、喧嘩に巻き込まれない様に過ごすしかないよね・・・。

今回も読んでくださり、ありがとうございました。

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