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1 魔王になって異世界へ

初投稿です。

思い付きで書いたものです。

なので、誤字・脱字や文章としておかしい所が多々あると思いますが、寛大な心で読んでやって下さいませ。

 

 真っ白な空間で目が覚めた。

 周囲には何もなく、それがどこまでも続いているように見える。

 まるで、ゲームや小説の『神』や『御使い』を名乗る存在が現れて、死んでしまった主人公にチート能力を授けてくれる場所のようだ。


「ここは、どこだ?」


 俺がキョロキョロと周囲を見回していると。


 《ここは、世界と世界の狭間にある空間だよ。後継者殿》


 背後から少年のような幼い声が聞こえてきた。

 振り返ると、想像していたような人型の人物は存在せず、バスケットボール位の大きさの黒い光球がユラユラと漂うように浮いていた。

 声の主はお前か、と指をさせば、光球は「正解」とでもいうようにピカピカと明滅する。

 というか、どうやって喋ってるんだ?テレパシーか?


「狭間の空間?後継者?どういうことだ?」


 全く意味がわからない。


 《まぁ、気持ちは分かるけど、少し落ち着きなよ。今から説明するからね。》


 混乱する俺に光球はそう言って話し始めた。

 俺はそれを黙って聞く。

 まず、この場所は光球が作り出した異空間らしい。

 で、光球の正体は、とある異世界で勇者に倒された魔王の魂。

 魔王の魂は、この世界に満ちる月の魔力が最も強くなるタイミングを狙って術を発動させた。

 それが、魔王の魂と力を継承するにふさわしい器をこの空間に誘う、というもので、それに俺が引っかかったということらしい。


 ん?ということは。

 俺は死んだのか?


 真っ白な異空間で神やそれに準じる存在。(俺の場合は魔王の魂だが)

 魔王の魂の継承は、いわゆるチート能力の譲渡だとして。

 これで異世界に転生、なんて言われたらゲームや小説でお馴染みの展開と一緒じゃないか。

 何か、非日常的な事は起きないものか、とは思ってたけど。

 まさか、我が身に起きるとは誰も想像できまい。

 いくら考えても思い出せないが、何らかの理由で死んだ可能性は高いな。

 事故死?病気はなさそうだけど、事件に巻き込まれたとか?

 そんなことを考えていたら光球が話しかけてきた。


 《君はまだ、死んではいないよ》


「へ?」


 間抜けな声が漏れてしまったが、死んでいないと聞いて安堵する。

 まだやりたいことがたくさんあるのだ。


 《でもね。君は私の、魔王の魂と力を受け継いで新たなる魔王にならないと死ぬよ?確実に》


 と、とびきりの爆弾を投下してきた。

 脅迫か。上げて落とすとか悪魔か?!いや、魔王だけども。

 心の中で文句を言っていたら、光球がその理由を教えてくれる。


 《君はね、ここに生身のまま来たんだ。もう、まもなく私の力は尽きる。そうなればこの空間は崩壊するだろう。ここの外は空気もないし、重力は君のいる世界の数十倍だ。そんな場所では生身の、脆弱な人間は生きていけないだろう?》


 確かに光球がいう環境では人間は生きていけない。

 どうやら、選択肢は初めからなかったらしい。


「……受け入れたら、俺はどうなるんだ?」


 器というくらいだから意識まで乗っ取られるのだろうか?

 それは、嫌だな。


 《大丈夫。君の人格は残るよ。私の役目は、後継者殿に魂の力を譲渡する事。役目を終えれば、そのまま吸収されて消えてしまう。今までとの違いは人でなくなるから寿命が数万年単位で伸びること。肉体の強度が上がること。あとは、見た目が少し変わるかもね》


 自分の人格が残ると聞いて安心した。

 あと、光球がいうには、俺にはほぼ底無しに近い魔力があるらしい。

 歴代最強の魔王になるだろうとのこと。

 異界レベルの転移が可能な能力もあるそうで、日本と異世界を行き来することも可能だそうだ。

 異世界に行っても特にやるべき事はなく、自由に過ごしていればいいようだし。

 俺はもうすっかり受け入れる気になっていた。

 何か、大切な事を忘れているような気がするが、本当に重要ならそのうち思い出すだろう。


「分かった。魔王になる」


 《ありがとう。では始めるよ》


 光球は俺に近づき、吸い込まれるように体の中に入っていく。


 《君の生に、幸多からんことを》


 光球のその言葉を最後に、空間が割れたガラスのように少しずつ崩れていく。

 それと同時に、黒い靄が体を覆い、俺の意識は深い闇の底に沈んで行った。




 ******


  草と土の匂いで目が覚めた。

  まだぼんやりした視界のまま上体を起こし、周囲を見回す。

  辺りには俺の足首くらいの丈の草が生えており、それが絨毯でも敷き詰めたかのように地平線の向こうまで広がっている。

  太陽の光は柔らかく、頰を撫でる風は心地良い。春のような暖かさでひなたぼっこ日和だ。


「ここは、どこだ?」


  おそらく異世界なのだろうが、周囲は人っ子一人いない大草原である。

  日本ではないかもしれないが、外国のどこかにはこの絶景がありそうで、本当に異世界なのか確証が持てない。

  何か判断材料は、と上を見上げて確信した。


「……間違いなく、異世界だわ」


  空には太陽らしきものが二つ浮かんでいるし、距離があるはずなのにはっきり見える、空に届きそうな塔。その周囲を悠然と泳ぐ空飛ぶクジラの姿。

  明らかに、地球ではない。

  異空間でのやり取りは夢かと思ったが、現実のようだ。

  太陽が高い位置にあるから、たぶん昼頃だろう。

  日が暮れるまでに街か村、とにかく人がいる場所にたどり着きたいところだ。

  まずは魔王になって、何が出来るようになったのか確認しよう。


  俺はダメ元で「ステータス」と念じてみる。

  すると、目の前に半透明の板が現れた。


  レベル1


  名前:レント・クロカミ

  年齢:19歳

  種族:人間?

  職業:魔王(他には見えない)、ニート

  HP :10160

  M P :ほぼ底無し


  スキル

  星間転移(ロック:解放条件→⁇?)

  道具箱アイテムボックス

  鑑定

  言語自動翻訳

  通貨自動変換

  MP自動回復(毎秒1%)


  固有スキル

  【店舗】


  属性

  光、水、無、風、地、火、闇(全属性)


  魔王って職業なんだな。

  種族も?付いてるけど一応人間だし、隠蔽効果あるみたい だからたぶん簡単にはバレないだろう。あと、この世界の 言語を翻訳してくれるのも助かる。

  俺、外国語覚えるの苦手だし。

  通貨の自動変換も嬉しい。

  異世界間を行き来する小説でも通貨の換金は苦労するところだ。

  この世界中どの国でも通貨は共通って訳じゃないだろう。

  地球だって国や地域によって違うわけだし。

  転移は、ロックがかかってる。

  すぐには行き来できないみたいだ。

  まぁ、そんな簡単にはいかないとは思う。

  解放条件が分からないのはまだいいが、ヒントもないのはきつい。異世界生活の難易度が上がった。

  それはさておき、他のスキルはゲームでもよく見かけるから分かるとして、【店舗】ってなんだ?

  早速、鑑定してみよう。



【店舗】

  地球に店舗がある店の商品が買える。

  支払いは魔力とお金。魔力だけでも購入可能だが、魔力消費量は大。

  購入したアイテムは道具箱アイテムボックス内に出現。買えば買うほどポイントが貯まり、そのポイントで利用可能な店が増やせる。



  現在の利用可能店舗:スーパーヤスイ

  所持金:1200000円

  ポイント:0


  ……これって、チートじゃね?

  金が減る気しないんだけど。

  俺の魔力はほぼ底無し。消費量は増えるけど、支払いに魔力を使えば所持金を減らすことなく購入できる。で、道具箱アイテムボックスは容量無限で時間経過もなし。

  つまり、水や食料を買いまくれば、絶対に飢えて死ぬことはない。

  あとは安全な住処と服が手に入れば最低限は暮らしていける。日本に帰れなくても何とかなりそうだ。


  ……つまり、このままニートでもいいわけだな。


  来たるべき日(勇者と対峙)に備えて、レベルは上げないといけないだろうけど、自由に過ごせば良いって事だし。


  異世界でまったりライフ。うん、悪くない。


  記憶を探ってみるが、この世界に関する情報は『魔法の使い方』と『勇者が存在する』ということだけ。

  生活様式とか文化とか一般常識とか一番欲しい情報は一切ない。

  魔法があるんだからファンタジーな世界なのは間違いないだろうけど。

  小説だと勇者は様々な能力補正が入っていることが多い。

  勇者の相手とか、マジで面倒極まりない。

  けど、今のまま何もせずに過ごしていたらきっと瞬殺されるだろう。


  それは絶対に嫌だ。


  よし。俺は今この時をもって異世界まったり魔王ライフを満喫すると決めた。

  であれば、俺は強くならなくてはならない。平穏な生活を脅かされない様に。

  まずは人のいる所を目指し、この世界を知ることから始めるとしよう。


「そうと決まれば、まず腹ごしらえだな」


  早速、【店舗】を試してみよう。

  店舗と念じるとステータス同様、半透明の板が目の前に現れ、今利用できる店舗の一覧が表示される。まだ使えない 店舗はグレーで表示されるようだ。

  そこから「スーパーヤスイ」を選択すると、カテゴリー別に商品がずらっと並ぶ。

  値段は魔力と金両方使えば日本で買うのと同じ価格で購入できる。魔力だけだと約10倍だ。

  いくら底無しに近く、毎秒回復するからといって肝心な時に魔力がありませんでは困る。

  普段は金との併用で払おう。まあ、可能性はかなり低いだろうけど。

  今回は魔力だけを選択。

  惣菜のカテゴリーの中から梅と昆布のおにぎりを一つずつカゴに入れて購入ボタンを押す。

  途端、スゥーっと体から何が引き出される様な感じがした。おそらくこれが魔力なのだろう。

  道具箱を開いてみるとおにぎりが二つ、しっかり入っていた。

  無事成功したことを確認すると、ペットボトルの水と唐揚げを追加で購入し、この世界で初の食事を終えた。




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