表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぱーそなる・こんぴゅーた  作者: キタキツネ
1.変わりゆく日常
2/3

01 朝

 ――夜が明けた。

 カーテンの隙間から差し込む太陽の光が目に沁みる。


 時刻は朝の6時。

 普段なら爆睡しているだろう。

 だが、今日に限っては起きている。というか徹夜だったからな。


「うぅん」

 そう、こいつのせいで。


 女性に対しての免疫が全くない俺は、女の子が部屋にいるというだけで、ドキドキして大変だった。


 俺の住んでいるこのボロアパートは、いわゆる1K。つまり一部屋なのだ。

 そしてベッドにはリナが寝ている。

 一緒に寝ると言い出したので、無理やりベッドで寝かせて、俺は床で寝ることにしたのだが。案の定眠れなかった。


 変なことはしてないぞ? そもそもそんな度胸ないからな。


 一晩中ドキドキしていた俺は、寝不足も相まってとてつもなく疲弊していた。


 だが、それでも学校に行かねばならない。


 制服にすばやく着替える。

 ちなみに朝食は取らない派だ。


 何気なしにPCデスクに目を向ける。

 そこには本体が無くなり、接続されていないモニターと愛用のマウスしかない。


「はぁ、普段なら時間に余裕があるときはパソコンをいじっているのだが」

 マウスを持ち上げつつ、独り言。


「私をいじるとか、えっちですね」


 不意に後ろから聞こえた声に驚き、マウスを落としそうになる。

 いつの間にか背後にはリナが立っていた。


「い、いつの間に起きたんだっ」

「たった今です。マウスの操作に反応して、目が覚めました」


 それはまさにパソコンをスリープにしているときにマウスを動かしたときのそれだ。


「そうですよね~。時間があるときは私をいじってハァハァしてますもんね~」

「変な言い方するな!」


 ハァハァはしてないぞ。ちょっと気が昂ぶるだけで。


「でも、そうだよな。お前がパソコンだって言うなら、もう『リナ』はカスタマイズ出来ないんだよな」

 『リナ』、それは自作パソコンにつけた名前で、正確にはRIN-A168。


「そうでもないですよ? パーツを組み立てるのではなくて、教えるって方法ですけど」

「教える?」


 俺の言葉に頷き、

「機械が人間に置き換わった、つまり勉強することで私を高性能に、鍛えることで高速化できます」

 それはまるで人間と同じだ。


「なるほどな」

 つまりほぼ完全に人間に置き換わったと思ったほうが良いのか。機械を組み立てる、その楽しみが減ったことは残念だが。


「それで、隆也さま。お食事を頂きたいのですが」

 動くためにはエネルギーが必要。これは人間も機械も同じだ。


「ああ、適当にあるのを食ってくれ」

「隆也さまは朝食は摂られないのでしたね」


 そう言って台所に向かい、

「隆也さま、即席の物しか無いのですが」

「そうだな」


 普段はカップ麺か冷凍食品で済ませる。食事の時間すら惜しいからな。

 リナはムッとして、


「これでは栄養が偏ってしまいます。今日から私がお食事を用意させていただきます。今は即席で我慢しますが」


 女の子(元機械)の手料理という夢のような単語に、ドキッとしつつ、

「料理なんて出来るのか?」

「私のデータベースをなめないでください。インターネットの情報を網羅しているのですから」

 と、豊かな胸を張る。


「まあいい。俺は今日は早く行く」

 そう言って鞄を持って家を出ようとする。


「もう学校に行かれるのですか?」

「ああ。結城が新しい機械を持ってくるって言ってたからな。早く行かねば」


 玄関に向かいつつ、

「そういえばリナ、お前家から出ないよな?」

「え、えーっと」

「まあ家を出てもいいけど、火の元栓くらいは閉じてくれよ。じゃあな」


 そう言って家を飛び出した。

 俺は新しい機械を見ることにワクワクしてて、リナのことは深く考えていなかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ