ルードリヒ殿下の真実
悲恋ではありませんでした・・・
ルードリヒはその日告げた
幼い頃からの婚約者に。
婚約を破棄しようと。
ルードリヒは幼い頃から優秀な皇太子であった。
ルードリヒには幼い頃から
定められた婚約者がいた。
ローゼンバル公爵の愛娘。
コーデリア・マリア・ローゼンバル
漆黒の髪に白い肌。
リンゴのような唇に
桜色の頬の色。
コーデリアは幼い時分か甘やかな香りを放つ子供であった。
初対面の日ルードリヒは驚いて思った
なんて愛らしい御姫様だろう、と。
しかしこのお姫さまはとっても無垢で情熱的だった。
いつだってルードリヒに疑うことを知らない信頼に満ち溢れた瞳を向けてきた。
ルードリヒは困惑した。
たまに怖く思った。
だから言った。
「そんなに無理しなくっていいんだよ?」
だって君は僕を知らないじゃないか
知ったら嫌いになってしまうかもしれないよ?と。
ルードリヒのそんな言葉に耳を貸さず
コーデリアは純粋無垢なまま育った。
婚約者にあふれんばかりの信頼を向ける皇子様。
コーデリアはルードリヒの言葉を疑うことを知らない。
その頃のルードリヒは自分で自分の気持ちがわからなかった。
自分に無垢の信頼を向けてくるコーデリア嬢
彼女が愛しくて愛しくてでも怖くて憎らしくてたまらない
なんでそんなじ自分を信頼するんだ?
自分はそんな人間じゃない、と。
その頃王宮のお茶会で出会ったアーデライトは
そんなルードリヒの矛盾の混沌を
受け止めてくれる唯一無比の存在であった
殿下、殿下はそんな無理をなくってよいのです。
コーデリア様はルードリヒ殿下に多くを求めすぎです。
ルードリヒ殿下だってお辛い時がありますでしょう?
言葉巧みにほだされて
ルードリヒの言葉はアーデライトに傾いた。
その優しい紫水晶の瞳にいつまでもいつまでも溺れていたかった
最近コーデリアはそんなアーデライトを誤解して
嫌がらせをしていると近衛兵に聞く
ルードリヒは
少しコーデリアを追い詰めすぎたのかもしれないと考えた。
自分と同じ。
コーデリアだって
この国の未来を背負う王太子の婚約者として
無理な負荷をかけすぎたのかもしれないと
それ以外、あの可愛らしいコーデリアが
伯爵の娘を叱責する理由が思い当らなかった
コーデリアを少し解放させなくては・・・・・・・・
ルードリヒのその思いが
冒頭の言葉につながる。
その日王太子殿下は
幼い頃からの婚約者の王宮の
中庭に呼び出して告げた
「ごめんね、僕は君を好きなれない」
「僕らの婚約は解消しよう」と・・・・・