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不完全な蘇生と魔剣の登場




(御主人様(マスター)、お目覚め下さい!)



……ん~? 煩いな、もう少し寝かせて……



(仕度はすっかり整いました。 どうか、お目覚め下さいませ!!)



……いいじゃん。 あたしはもう死んだんだから、このままずっと寝てても。


(御主人様!!!)


ああもう! わかったわかりました!! 起きればいいんでしょ、起きれば!!





「むにゃ?」


あたしは石畳の上で横になったまま、ゆっくりと目覚めた。

体が硬い……。 まるで寝返りも打たずに寝てしまった後みたいに、全身がぎこちない。


「あれ? ……ここどこ?」


上体を起こして周囲を見渡す。 なんか身体がおかしい……異物感って言うの?


円形の広間は静寂に包まれていた。 壁際に等間隔に、ぼんやりと白い光を放つ大きなガラス玉みたいなのがあって、それが広間を照らしている。

あたしの周りの床には、何かをぶちまけた様な赤黒い染みが広がっていて、さらにその周りに黒い鎧が部品ごとにバラバラになって転がっている。 上まで光は届かないみたいで、天井は暗くて見えない。


ええと……?


あたしは、ゆっくりと思い出す。


……えーと? 確か今日は冒険の初日で、アイツらと迷宮に潜ったら本性出されて、そんで装備にお金に全部奪われて更に色々奪われそうになったから、スキを見て逃げたら落とし穴に落ちた……


うん、ちゃんと思い出せるじゃん。 あたしは寝ぼけてなんかいないよ。


そしたら、よりによって真下に黒い剣があって……あたしは? あれ?


ぼんやりと暗い天井を見上げる。

あんなに高いとこから落ちたのに、あたし生きてる? ……奇跡?


そうそう、あの剣はどこだろ? 絶対刺さるって覚悟したのに……


あたしは剣を目で探して……それが深々と自分の胸に突き刺さっているのを発見した。


「ヒッ!?」


変な声が出て、一瞬で眠気が吹っ飛んだ。 パニックになりそうなのを必死で抑えて、胸元を改めて見下ろした。 剣はあたしの胸の二つの膨らみの、ちょうど真ん中に刺さっていて、柄の部分が手に取れる位置にあった。柄の真ん中に嵌め込まれた紅い宝玉が、明かりを反射して不気味に煌いている。


えーと……この剣、結構長かったよね。 で、柄がこんな位置にあるって事は……


あたしは恐々背中に手をのばし、指先が背中から突き出た刀身に触れるのを感じた。 あたしは今度こそパニックに陥った。


ウソ!? 剣が刺さったまんま……てか、貫いてる! 異物感の正体はこれか……てかそうじゃない!! こんなん刺さってたらあたし死んじゃうじゃん!! でも死んでないってか痛くもないし、どうなってるの!? えーと、えーと、まずどうしたらいいの? お医者……は居ないし、ああお金取られたんだっけ。 じゃあ、あたしずっとこのまんま? いったいこれからどうしたら



御主人様(マスター)、お目覚めになりましたか」


不意に渋い男の声が何処かから聞こえて、あたしはパニックから復帰した。 え?今のだれ? どこ?


(わたくし)は此処で御座います」


その声は、明らかにあたしの胸に刺さっている剣から聞こえてきた。


「剣がしゃべった!?」


「はい。私はインテリジェンスソードで御座いますので、会話は造作も御座いません」


剣はあたしの言葉に冷静に返してきた。 その渋いけど、柔らかくもある口ぶりと丁寧な口調にあたしは不思議と落ち着きをとりもどした。


「そう……なの? で、御主人様って誰のこと?」


「勿論、貴女様で御座います」


「はぁ!?」


あたしの戸惑いを察したのか、剣はまず自己紹介から始めた。


「申し遅れました。私は、“魔剣セバスチャン”と申します。 属性は闇、主に所有者を保護し、サポートする能力を有しております。 “血の契約”により、御主人様に御仕えすることになりました。 以後、御見知り置きの程を」


「待って! 契約なんて、あたしして無いんだけど!」


「偶然とは言え、私と御主人様の間に契約は交わされました」


「どう言う事?」


戸惑うあたしに、セバスチャンは事の次第を説明してくれた。

もともとセバスチャンはこの迷宮の魔王の所有物で、魔王が幼い頃に未熟な剣技をサポートするのが目的だったらしい。

しかし、魔王はセバスチャンのサポートを煩わしく思ったようで、魔剣との間に交わされた血の契約を反故にして、この広間に封じたのだと言う。


「血の契約は、誰との契約も結ばれていない状態で、柄にある宝玉に自らの血を与えた者と交わされます。 私は契約を交わした所有者を御主人様として、御仕えする様に造られております」


でも、新たに所有者が現れないまま数百年の時が流れ、休眠状態にあった時にあたしが天井から落っこちて、剣に貫かれて宝玉どころか剣全体に血を注いだ事で、非常に強力な契約が交わされたのだと言う。


「私は先代の魔王様を初めとして、数多の魔王や上級魔族にお仕えして参りました。 ですが、契約に自らの心臓まで捧げた方は一人も居りません!」


そりゃあ、そうでしょうね。


「ここまでされた御主人様に全身全霊で御仕えしようと思った矢先に、先ず御主人様から“死にたくない”との思念が伝わって参りました。 それで出来る限りの手を尽くして、どうにか蘇生に漕ぎ着けた次第で御座います」


「なるほど」


要するに、セバスチャンはあたしを生き返らせてくれた訳か。 あたしはセバスチャンにお礼を言った。


「恐縮で御座います。 ただ、私は闇属性故に蘇生は専門外で御座いまして、それで止む無くゾンビ化と言う方法を取らせて戴きました」


「良いって良いって。 死んでた所を生き返らせてくれた訳だし、ゾンビくらい……え?」


今なんて? ゾンビ?


誰が? ……あたしが!?


「左様で御座います。 今の御主人様は、私の魔力による仮初めの命でどうにか完全な死を免れている状態で御座います。 くれぐれも私から遠く離れないで下さいませ」


あっさり言うな! 折角生き返ったと思ったらゾンビ!?


あたしは呆然と自分の体を見下ろした。 なるほど、目覚めた時には気づかなかったけど、改めて見ると色々と違っていた。

まず、ちょっと自慢だった血色の良い健康的な肌は、灰色がかった生白い不健康な色になってしまっていた。 おまけに所々に青黒い変な筋(後で血管と言う物だと教えてもらった)が透けて見えてるし……。

手足やお腹には、赤黒い傷跡が付いている。 地面に叩きつけられて、グチャグチャになったあたしの身体を、セバスチャンが魔力で掻き集めて再生させてくれたけどこれが限度なのだそうだ。


床に落ちていた鎧の小手を拾い上げて、顔を映してみる。

セバスチャンは頑張って身体を再生させてくれたのは本当のようだ。 黒い金属の表面に映るあたしの顔は、整然とまったく変わらない。

でも、目の下にいかにもゾンビらしいクマが出来てしまっていた。


身に着けてる服はビリビリで、ニーソックスまで所々破れている。

グチャグチャに腐乱してはいない物の、あたしの格好は何処に出しても恥ずかしくない、立派なゾンビその物だった……

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