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絶望と希望

機械巨人(ニコラス)はまだ台座に繋がっている(コード)パイプを引き千切って、ゆっくりと台座から降りた。 逃げ遅れた闇鬼畜族(ダークオーク)が踏み潰されたのも気付かず(気に掛けず?)上機嫌で高笑いを始めた。


「アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハ!! どうです、この姿は? 中々のモノでしょう!! 最高の気分ですよ! まさに魔王に相応しい姿とは思いませんか?」


「まったくその通り、最後にみっともなく倒される魔王役には相応しい姿よね」


あたしは後ずさりしながら、せめて挑発だけはしてやる。 その返事として、巨人の身体から無数の線が触手みたいにこっちに飛んできた。

とっさに身をかわして背後に下がる。 線の群れはさっきまであたし達が立っていた場所の床を打ち据えて、石畳を粉々に砕いた。


「口の聞き方に気を付けて欲しいですね。 今の僕は魔王の魔力と自動迷宮造成機(ダンジョンツクーラー)の機能を取り込んだ、まさに“大魔王”と言っていい存在なんですからね。 大人しく降参するなら命を助けるだけでなく、慰み者として大事に飼ってあげますよ? うふふふふふふふふふふ」


最悪だ。 変態が強大な力を手に入れて手が付けられなくなってる。 とりあえず、あたしはユーちゃんを目で探した。

……いた! 線で出来た右手に握られて、更にその手から延びた線に絡め取られて、そこから逃れようと必死でもがいている。

何とか助けようと考えてるあたしに気が付いたらしく、ニコラスはこれ見よがしにユーちゃんを握った手をあたしに突きつけて来た。


勇者(コレ)を返して欲しいんですか? ダァァァァァメですよぉぉぉぉ! コレは僕の一番の肉奴隷(おきにいり)にするんですからああああ!! 勿論、オマエも可愛がってあげますよ腐れゾンビ女。 生意気な女共を圧倒的な力で支配して蹂躙する! あぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁ、堪りません。 知ってますか? イセカイって所ではこう言うのを“チーレム”って呼んだそうです」


知るかそんなの! そんな言葉がまかり通ってるイセカイってのも、ロクな所じゃなさそうだ。

ってか、わざわざユーちゃんをこっちに向けてくれるとは好都合! あたしはセバスチャンを構えて飛びかかろうとしたけど、横からメイちゃんがあたしをいきなり押し倒した。 その頭上を物凄い速さで金属の管が掠め飛んで行く……あと一歩遅れてたら頭を砕かれてたに違いない。


「あ、ありがとメイちゃん」


あたしはメイちゃんに肩を借りて起き上がる。 一方のニコラスは、巨大な全身をぎこちなく震わせながら誰かに悪態を吐いている。


「クソ! もう少しで仕留められたモノを! この身体はもう僕のモノなんだから、諦めて大人しく僕の言う事を聞け!」


そう言いながらもニコラスは身体を震わせるだけで、一歩も動けないみたいだった。 その様子を見てセバスチャンが分析する。


「どうやら、自動迷宮造成機と制御回路役の魔王との同化がまだ完全に上手く行っていない様ですな。 同調が完了していない今がニコラスを仕留める最後のチャンスでしょう」


……とは言ってもどうしたモノか。

あたしが攻めあぐねて考えてる間に、広間の空間にまた火花が走って魔族の群れが召喚された。 しまった! 慌てて手近な幽甲冑(ゴーストメイル)をメイちゃんに集めて貰って円陣を組んだ。

でも、さっきまでの戦いで半数近い仲間を失ってしまっていた今では、数での劣勢は明らかだった。


「完全に同調を完了させるまで、魔族共(コイツラ)と遊んで貰いましょう。 あと、勇者(キミ)も大人しくしてて下さい」


「んああああっ!?」


そう言いながら、ニコラスは手にしたユーちゃんの身体を線でキツく締め上げ始めた。

どうにかして止めさせたいけど、魔族の群れに阻まれて前には一歩も進めない……状況は絶望的と言って良かった。


でも、ここまで来て諦めたくは無い。 ユーちゃんも助けたいしニコラスも倒したい!


そんで蘇生してメイちゃんやアーちゃん、そしてセバスチャンと一緒に迷宮(ココ)を出るんだ!!


絶対に諦めない! あたしはゾンビ、最も貪欲で前向きなモンスターだから……ん?


……あたしはゾンビ……


……あ。


閃いた! 策と呼べるシロモノじゃないけど、もう他に手を考える時間も無い!

あたしは皆に手短に作戦を伝えた。


「無茶です! ……が、他に手立てはありますまい。 畏まりました、不肖このセバスチャンがお嬢様の無事を必ず御守り致します!」


「お願い! メイちゃんとアーちゃんもサポートよろしく!」


メイちゃんは肯くと、幽甲冑を率いて魔族の群れに突撃した。 たちまち怒号と血しぶきが乱れ飛ぶ修羅場が現われる。 あたしはその背後で加速(ヘイスト)の巻物を読んで活動速度を倍増させた。

そして、アーちゃんは有らん限りの力であたしの表面に闇の瘴気を集めて、防御力と再生能力を限界まで高めて貰った。


この無謀な突撃戦法があたし達の最後の希望だ! あたしはメイちゃんに合図を送って一気にダッシュした。


「メイちゃん、今!」


あたしの合図でメイちゃんは竜巻(ツイスター)の魔法を発動させた。 広いとは言え、閉鎖された大広間で発生した魔法の竜巻は縦横に荒れ狂い、巨体のニコラスと魔法に耐性のあるあたしを除いた全ての存在を床に薙ぎ倒した。


これでニコラスとあたしの間を阻むモノは何も無くなった。 あたしはセバスチャンを最大まで伸ばして次の指示を出した。


「セバスチャン、例のアレお願い!」


「畏まりました……お覚悟を!!」


次の瞬間、あたしノ身体を灼くようナ衝動と苦痛が走っタ。 コレはあの感触……アア、苦しい!

苦しイ? 何が? そリャ決まってる。 お腹が……が……がががががガがガガガガがッ!


……


()ガガガガッガガガ餓餓餓餓餓ガガガガガガ餓餓餓餓餓ァアアアアアアアァァァァァッ!!」


モウ我慢出来なイ! アタシは肉の臭いを求メて、魔剣を振り上げながら雄叫びヲ上げて鉄屑(ニコラス)に向かッテ飛び掛カった。

明日(9/4日)はお休みします。

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