冥土の土産と最終形態
今回も書きかけで申し訳ありませんが、とりあえず出来た所まで投稿します。
前回分は、加筆させて完成させました。
あと、第1~第20部分までの目に付く限りの記述間違いを訂正しておりますが、内容に変化はありません。
遅くなりましたが、とりあえず加筆・完成させました
え? え? 何!? 確かにとっくにダグウェルが復活させたハズの魔王が姿を見せないな、とは思っていたけど、そんな所に居たの!? てっきりその魔王がニコラスの黒幕だと思っていたのに、切り札って何さ!?
「お嬢様、危険です! 楯を出してお下がり下さい! アーちゃん様、瘴気を最大まで集積させてお嬢様の防御を!」
「ウォオオオオオオオオン!!」
あっけに取られたあたしの回りに闇の瘴気が集まって、さらにメイちゃんがあたしの前に立ちはだかって護ってくれる。 それであたしも漸く魔力鞄から楯を取り出した。
次の瞬間、台座上の機械の開いた扉上の部分から強力な衝撃波が飛んで、敵味方の区別無く台座の前方にいる……あたし達を含めた存在に一斉に襲い掛かった。
「まずい!」
あたしは楯を構えて防御したけど、それでも完全に防ぎきれずに軽く吹き飛ばされて転倒してしまう。
アーちゃんの瘴気とセバスチャンの結界、それにメイちゃんの防御のお陰で大きなダメージは負ってないけど、周囲はかなり酷い有様になってしまった。
無事なのはあたし達とその周囲くらいで、あとはモンスターと魔族の黒焦げの死骸に……味方の幽甲冑の残骸が累々と転がっていた。
「まずいですな。 これで戦力の半分近くが失われました」
あたしはセバスチャンの報告に歯噛みしながら立ち上がる。 メイちゃんもどうにか無事だったみたいで、立ち上がるあたしの手助けをしてくれた。
……で、どこに魔王がいるって? あたしは改めて台座の上の機械を見て、言葉を失った。
機械の上部が扉みたいに開いてて、そこには老いた闇妖精の生首が苦悶の表情を浮かべて、無数の管と線に繋がれていた。 それはまるでクモの巣に掛かった蟲みたいだった。
ニコラスはザビーネを文字通りの杖にして縋りつきながら、表情だけは余裕のままに能書きを続けた。
「ご紹介します、この生首が復活した魔王です。 必要なのは頭だけなので後は切り捨てさせて貰いましたが、どうです? ちょっとしたオブジェみたいでしょう?」
「……どう言う事ですの?」
まだダメージが回復しきっていないユーちゃんがニコラスに聞く。 ヤツは痛みを堪えながらも余裕を取り繕って説明を始めた。
「ん~良いですね、この瀕死の敵を前にした圧倒的な優位性ってのは。 歴代の魔王や魔貴族が逆転の可能性を作って破滅しながらも、自らの企みを暴露したがる誘惑……今の僕には理解出来ます」
瀕死なのはアンタもでしょうが!!
「この魔王は勇者に倒される前に、復活の望みを掛けて自動迷宮造成機のメイン人造人格に自分の影響を不正に残していました。 魔王が死ねば機械との契約は切れますが、万が一復活したあかつきには、誰が機械を支配していようとも即座にコントロールの主導権を取り戻そうと言う意図だったみたいですね」
???
「要するに、離婚されて家を追い出された元夫は密かに家の合鍵を作っていた……と言う事で御座います」
な、なるほど。 あたしはセバスチャンの通訳にとりあえず肯いた。
「それを魔王の残党が記した記録から知ったダグウェルは、この計画の横取りを目論んで魔王を復活させてすぐに自分の支配下に置き、この通り自動迷宮造成機にアクセスを図る為の“部品”として機械に組み込んだと言う訳です。 それを更に僕が横取りさせて貰いましたがね」
あー……つまり、魔王の陰謀の上前をハネたのがダグウェルで、それを更にニコラスが横取りしたと。
これがこの迷宮を巡る騒動の全貌ってヤツか。 あたしはセバスチャンを構えてニコラスに言ってやる。
「グダグダと喋ってくれたけど、要するに後はアンタを倒せばこの騒動はお終いってワケだ」
「それはそうですが、そんなに上手く行くと思いますか?」
「ザビーネにすがり付いて立ってるのがやっとで、アンタに何が出来るっての?」
あたしがそこまで言うと、機械が不気味な音を立てて振動し始めた。 ユーちゃんは危険を察知して台座を飛び降りようとしたけど、高速で延びてきた線に全身を絡まれて身動きを封じられてしまった。
ええい、あの捕らわれっ娘ときたら!
そして線と管はニコラスにも絡みつき、こっちはそのまま身体を持ち上げられて機械の方に運ばれていく。 そして、機械の中ほどに魔王の首と同じように扉状の部分が開くとニコラスの全身はその中に収められて行く。
これが最後の奥の手か!? 何をするきか解らないけど、これを見過ごしてはいけない気がする。
あたしとメイちゃんは魔力弾と魔法でニコラスが機械に取り込まれるのを阻止しようとしたけど、台座にはまだユーちゃんがいる。 ここは早く台座に取り付いて機械を破壊するしかない!
でも、機械は天井や壁から伝達管を引き抜くと、それを巨大な触手みたいに振り回し始めた。
それは仲間のモンスターやこっちの幽甲冑を刎ね飛ばしながら、あたし達の方に高速で向かってきた。
「あぶな!」
あたし達は咄嗟にその伝達管を避けたけど、これのお陰で機械まで辿り着けない。 そうしている間にニコラスは機械の中に収められ、扉が閉じられてしまった。
次の瞬間、機械がひと際大きな振動を発して全体を揺るがして……そして、そのまま機械が台座から立ち上がった。
「なななな!?」
予想を超えた出来事に思わず変な声が出てしまったけど、見間違いなんかじゃなかった。
どうやら台座の部分に折りたたまれた機械の脚が隠されていたみたいだ。 そして、機械本体の両脇から線と管が延びると、独りでに編む様に縒り合わされて一対の腕に変化した。
それはまるで機械をデタラメに組み合わせて、どうにか人型にデッチ上げた金属の巨人みたいだった。
「うふ、うふふふふふふふふ」
完全に立ち上がった機械の巨人は、天井に頭をぶつけそうな程の大きさだった。 呆然と機械を見上げるあたしに、機械からニコラスの薄気味悪い声が聞こえて来た。
「どうです、もっと驚いてもいいんですよ? これが僕と魔王の最後の奥の手、さしずめ“最終形態”と言った所ですかね」
どうも九時前後に定期的に障害が発生してるみたいで、出来る限り投稿はしたいのですが、今後も投稿できるかは不透明です。
ご迷惑をお掛けします。
 




