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敵のチートと絶体絶命

えーと……ここでメイちゃんがスケルトンと戦ってるときに、ローゼスの奴が魔法を撃ってきて角が折れ飛んだから……確かこっちに飛んでくのが見えたから多分この辺りに……あった!


あたしはメイちゃんの折られた角をやっと見つけて、メイちゃんの兜の部分に押し当てた。

待つことしばし……よし、くっついたみたいだ。 んで、魔力鞄(インベントリ)から予備のリボンを取り出して角飾りに結びつける。

リボンが何だか禁じられた力の封印みたいに思えてしまう。 まぁ、さっきの豹変ぶりを見てしまうとねぇ。


よし、これで元通り。 あたしはメイちゃんに手鏡を渡して確認してもらう。 喜ぶ仕草を見せるメイちゃんの機嫌も、どうやら元通りになってくれたみたいだ。


「そろそろ急ぎませんと、既にかなりの時間を消費しております」


セバスチャンの言う事ももっともだ。 あたしはセバスチャンに迷宮の地図を出してもらった。

例のサブ何とかを表す黄色い光点がまた一つ消えて、残りは四つになっていた。 それを受けてか宮殿最上階にある緑色の大きな光点が少し小さくなってる。

どうやらユーちゃんが上手くやってくれているみたいだ。 じゃあ、あたし達もお役立ちアイテムを回収してとっとと合流しますか。

善は急げ! あたしはメイちゃんと一緒に宝物庫の扉をブチ破った。


……


「なんか、思ったよりも少ないなぁ……」


宝物庫の中身は、その部屋の広さに比べてかなり少ない印象を受けた。


「ぐぬぬ、オート何とかめ。 上手い事を言って騙すつもりだったってワケ?」


「それは無いでしょう。 元々ここは先代の魔王が所持していた宝物庫です。 その時の財宝は、恐らく魔王を討伐した勇者が持ち去ったのでしょう……勝者の権利です」


「おのれ、昔の勇者め……なら、この宝箱は?」


「恐らくはダグウェルの物で御座いましょう。 あの闇妖精(ダークエルフ)はこの宮殿を拠点にするつもりの様でしたから、魔界から私財をここに持ち込んだのでしょう」


なるほど……あ、ホントだ。 宝箱にダグウェルの紋章……三つ首の竜が刻まれてる。

それにしても、この宝物庫を一杯に出来ないなんて、ダグウェルも結構裕福じゃなかったんだなぁ。


「新興の魔貴族であった様ですので、まだ蓄財にまで手が廻らなかったのでしょう。 ともあれ、急いで役に立ちそうなアイテムを探さなければなりますまい」


おっと、そうだった。 あたし達は手分けして宝箱を次々に開けていったけど、中身は金銀財宝や美術品の類ばっかりで、今すぐに役立ちそうなマジックアイテムの類は見つけられなかった。

参ったな。 これじゃ、とんだ時間のムダ遣いだ……とは言えども、ダグウェルには色々と酷い目に遭わされたし、そもそもアイツがここで余計な陰謀を練らなければあたしもゾンビに成らなかったワケなんで、とりあえず迷惑料として目に付いた宝石や装身具は戴いて魔力鞄に放り込んでいった。


……我ながら、冒険者ってのも因果なお仕事だなぁ。


さて、残りはニコラスをブッ絞めてから回収するとして、残った武器庫はどうしよう?

宝物庫がアテが外れてしまったし、これじゃ武器庫も推して知るべきってヤツだろう。 それに、そもそも武器庫をアテにしたのは、ダグウェルとの戦いで失った魔力弾やメイちゃんの槍を補充する目的があったからだ。

それがメイちゃんの怒りのパワーアップで飛び道具と槍の問題が解決したからには、最早武器庫は後回しで良いんじゃないかと思えて来た。


「いつまでもユーちゃんを一人に出来ないし、武器庫は後回しで……」


そこまで言いかけた時、宝物庫全体を揺るがす程の強い振動が走り、あたし達はいきなりの振動でバランスを崩して床に転倒してしまった。

振動は収まるどころか益々強くなって行き、上の方から重いものが動いたり崩れたりする様な音が立て続けに響いて来た。


「なに!? 何が起きてるの!?」


あたしは起き上がる事もままならず、床に這いつくばったままセバスチャンに聞いた。


「解りません。 現状では何とも……いえ、お待ち下さいお嬢様! 只今、先程の補助オートマトンから念話が入っております……御繋ぎ致しますか?」


え!? オートが今更何を? いや、今は何でもいいから情報が欲しい。


「おっけ、すぐに繋いで」


「畏まりました」


一瞬の間を置いて、あたしの頭の中にオートの声が直接聞こえて来た。


「予想外の事態が起きた。 恐らくこれが最後の通信になると思う」


「一体何が起きたの!?」


「奴らは、既に掌握している宮殿の改造機能を悪用して、急速に宮殿の内部を作り変えている。 具体的には壁を次々に作り出して各所の通路や扉を完全に閉鎖し、残りのサブジェネレータ及び最上階に物理的に辿り着けない様に細工を施した」


「何ソレ!? そんなのってアリなの!?」


「アリでは無い。 我々自動迷宮造成機(ダンジョンツクーラー)は、どんなに迷宮を複雑化させる事は出来ても、攻略不可能な構造の迷宮を造成する事は仕様で出来ない様になっている。 これは明らかに不正(チート)行為による物だ」


ニコラスめ、どこまでも腐ったヤツ。 いや、まずはどうやって上階に行くかをオートに聞かないと。 ニコラスをボコにするのはその後だ。


「残念ながら、現時点で我々補助オートマトンでこの不正行為を排除する事は不可能だ」


「ちょ!?」


「メインオートマトンに対する不正アクセスを排除しない限り、我々に出来る事はこれ以上の迷宮の不正改造を出来るだけ推し留めることしか出来ない。 もしもメインオートマトンが完全に掌握された場合、奴らはこの迷宮を何の制限も無く拡張・改造が出来るだろう。 例えばこのフロアを丸ごと崩落させて諸君を一瞬で押し潰すことも可能になる。 そうすれば我々にも……いや人族や魔族、勇者でさえも迷宮に立てこもる限りニコラスに指一本触れる事は不可能だ」


つまりそうなったら、ニコラスは迷宮に居る限りは無敵ってワケか。


「更に地上の都市や城の真下にワザと脆弱な迷宮網を構築し、地盤の崩落で地上の建築物を自在に崩壊させる事も可能になる。 もっと言えば、自在に通路を延ばして地上に入り口を造る事で、神出鬼没に自分の兵力を自在に展開出来るだろう」


それでいて、ニコラスは自在に相手を攻撃出来て、更に城で街でも壊し放題って……チートもいい所じゃん! 何か止める方法は無いの!?


「残念ながら、我々にはこれ以上の不正アクセスに対抗して更なる迷宮の不正改造を防ぐしか手立てが無い。 しかし、それも時間稼ぎにすぎない。 やはり唯一の手段としては、諸君の働きに期待するしか無い。 どうにかしてそのフロアから脱出して、しかる後にサブジェネレータを……」


いきなりオートの念話が途切れて、後は何も聞こえなくなってしまった。


「念話が途切れました……この地図を見て下さい、お嬢様。 宮殿の構造が先程より明らかに変化しております」


あたしはセバスチャンが映し出した地図を見た。 なるほど、フロアを繋ぐ階段や各ジェネレータの入り口を厚い壁が遮って出入りが不可能になっている。

あたし達はユーちゃんと合流するどころか、このフロアに完全に閉じ込められた形になってしまった。

やっぱり甘くみすぎたのかな? 欲を出さないでさっさとユーちゃんに合流していれば……


「いえ、遅かれ早かれニコラスはこの手段を講じていたでしょう。 どうか御自分を責めないで下さいませ」


……うん、ありがと。

でも、問題はどうやってココを出るかなんだよね。 やっぱり武器庫に行って何か探すか……


そこまで考えた時、いきなり天井が崩れて轟音と共に大きな黒い塊があたし達の前に落ちて来た。

ニコラスめ、あたし達を閉じ込めただけじゃ安心できなくて、念入りにモンスターを寄越してきたってワケ?

あたし達は崩落する天井から距離をとって、相手の襲撃を迎え撃つ為に武器を構えた。



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