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乱入と覚悟

無謀なのは解ってる。 とっさにでっち上げた作戦だから、上手く行くかどうかも解らない……でも、これを見逃すワケにもいかない。 一か八かに掛けるしかなかった。


落下の速度を落とす天使の羽を身に付けているので、かなりゆっくりと床に落下している。 これでは下の連中に狙い撃ちされるのは解っていた。 だから、まだ上にいるメイちゃんに魔力弾を連中に投げつけて目くらましをして貰う。


……蘇生装置にダメージが行かないように慎重にやって貰う必要があるんだけどね。


メイちゃんのコントロールが優れているお陰で、魔力弾は魔族連中とユーちゃんの間に上手いこと命中して派手に爆風を撒き散らす。


ダグウェルは案の定、あらかじめ結界を張っていたみたいで涼しい顔をして立っている。 だが、変態野郎(ニコラス)偽装魔人(ドッペルゲンガー)は、流石にダメージは負わないものの爆風の煽りを受けて床に叩き付けられた。

ユーちゃんのビキニアーマーは、まだ脱がされて無い状態だったので魔力による爆風を完全に防いでくれた。 まだ本人は呆然としていて事態を認識して無いみたいだけど。


「あ…アナタは」


「ボケっとしてないで、早く触手から抜け出して! メイちゃん次!!」


あたしの合図で再び魔力弾が放り投げられる。 魔力弾はこれで尽きてしまったけど、つまらない芝居には客席からモノを投げ込んでやるものだ。 ヘボ脚本家(ダグウェル)には反省して貰おう。

再び同じ場所で爆発が起こる。 蘇生装置に爆風が及ぶかもしれないからダグウェルを直接狙えないのがもどかしいけど、どうせ結界で護られてるんだから意味は無い。

それにこの爆風は目くらましだ。 あたしが奇襲をかけた相手はダグウェルじゃなくって……コイツだ!!


「ガフッ!?」


あたしは起き上がりかけた偽装魔人の頭上から、おもいっきりセバスチャンを叩き込んでやった。

ヤツはとっさに両手で攻撃を止めようとしたけど、そんな程度であたしの全力の一撃を防ぎきれるワケがなく、短い悲鳴を上げて腕ごと頭を叩き割られて絶命した。

これで、ひとまずは勇者の偽者を作られて、本物が変態の餌食になる事態は回避できた。 あとはお姫様(ユーちゃん)の救出だ。 変態とダグウェルを倒すのはそれからでいい。


「メイちゃん、来て!」


あたしは魔力鞄(インベントリ)から竜騎士の楯を取り出しながら、メイちゃんに次の指示を出す。

その時ようやく起き上がったニコラスがこっちを見て、驚いた表情であたしを指差した。


「あ……あなたは、あの時のゾンビ女?」


「お嬢様と呼べ!」


あたしはニコラスを蹴倒して、剣の切っ先を突きつけてやる。 このスキにメイちゃんが天使の羽で降りてきてくれれば、後は上手く行くハズだ。

不安なのはダグウェルだけだけど、まだ余裕こいて退屈そうにこっちを見下ろしている。 精々ボスキャラぶってろ! あたしはニコラスに視線を戻して怒鳴りつけた。


「さっさとあの悪趣味な触手を消しなさい!」


「お……脅しですか? まだ女勇者はこちらの手にあるんですよ? 彼女を淫界(ノクターン)に引き込まれたくなければ、早くその魔剣を捨て……」


「その前に、アンタが地獄に落ちる方が早そうなんだけど?」


「……そうですね、やっぱり人質を取るなんて人として間違ってますよね。 そう思って、ちょうど今消そうと思った所ですよ、お嬢様」


ニコラスは卑屈な笑みを浮かべて何かを唱えると一瞬で触手が掻き消えて、触手に身体を持ち上げられていたユーちゃんはそのまま床に叩き付けられる形になった。


「メイちゃん、その変態を見張ってて。 何か変なそぶりを見せたら、すぐ槍で刺しちゃっていいから」


あたしは合流したメイちゃんに変態の見張りを頼むと、床に倒れたままのユーちゃんに急いで駆け寄った。


「ユーちゃん、大丈夫?」


あたしは力なく床に伏していたユーちゃんを抱き起こした。 幸い触手は身体の表面を弄っただけなので、目だったキズは無いみたいだった。

彼女は力なく顔を上げると、弱気な表情であたしを見て戸惑ったように呟いた。


「アナタは腐敗の……いえ、シネル? なぜワタクシを?」


「言ったでしょ、あたしはゾンビなだけで敵じゃ無いって。 それに目の前で触手に絡まれて淫界送りとか、同じ女の子として放っておけないでしょ!」


「あ……」


ユーちゃんは何かを言いたそうだったけど、口をつぐんで俯いてしまった。

まぁ、魔族に騙された上に、さっきの触手に身体中弄られたショックがあるだろうから無理も無いか。 それにしても、気丈で高飛車だった彼女が、うっすらと涙を浮かべて俯いてる表情も中々……って違う!


「落ち込むのは後で! まだ黒幕が残ってるでしょ!」


あたしは未だに悠然とこっちを見下ろしてるダグウェルを指差した。 最後の一人になっても、ここまで何の手出しもせずに余裕を崩さないのが不気味だったが、ここまで来てしまったらもう最後までやるしかなかった。


「魔族退治は勇者の使命でしょ! ほら立って!」


あたしはユーちゃんを助け起こすと、傍らに落ちていた聖剣を拾って……


「あっつぅ!?」


「ウォオォン!?」


手に火傷を負ってしまい、あたしと一緒に巻き添えでアーちゃんまで悲鳴をあげた。 ごめん。

その様を見て、ユーちゃんが軽く吹き出した。


「イーブルバスターは聖剣ですから、アナタには扱えませんわ。 御免あそばせ」


そう言って彼女は聖剣を拾い上げると、あたしに微笑みかけてきた。 ……かわいい、こんな優しい笑顔もできるんだ。


「みっともない所をお見せしてしまいましたわね。 そうですわ、ワタクシには使命があったのですわ!」


そう言って彼女は表情を引き締めると、剣を構えてダグウェルに向き合った。 あたしも釣られてセバスチャンを構える。 なりゆきとは言え、勇者と一緒に魔族退治の最終決戦をするハメになってしまったけど、どの道ダグウェルをどうにかしないと蘇生装置が使えないんだ。


ここはユーちゃんと一緒に戦うしか無い。 あたしは覚悟を決めた。




明日(8/5日)はお休みします。


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