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もう勇者ではないん  作者: 犬又又
もう勇者ではないん
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勘違いしないん

 傭兵社へ赴くとリルの表情は一気に凍り付いた。冷たさに満ちた表情でアーリエに見つめられたからだ。

「いや、その、なんだ、昼休みをだな」

「随分と長いお昼休みですね」

「あはっあははっははっまぁまぁ」

「まぁまぁじゃないわよね? わたし一人で大変だったんだけど」

「ベルツァーがいただろ!? 他の奴だって」

「そうだ、リル、心配しなくてもいいぞ。俺がいるからな」

「ベルツァーさんは黙ってて」

「あっはい」

「今日の夕食は奢りでいいわよね?」

「いやー今日もそのー」

 リルはベルツァーの前に立つ菜隠をちらりと見つめ、アーリエはその一瞬を見逃さなかった。

「いいわよね?」

 語気を強めてリルへと詰め寄る。

「わかった。わかったから」

 アーリエとアンバーはベルツァーの前に立ち、並べられた依頼を眺めていた。昨日と同じ地下水道のグリーンフェイス討伐があるけれど、雨の日なので川が増水しているらしく受けられないとの事。

 あとはオードの討伐や、採集依頼が幾つか。菜隠は二等兵なので受けられる依頼は雑用ばかりになる。アンバーの階級は兵長だが依頼は菜隠に合わせる事にした。

 菜隠は雨の日限定の依頼に目を止めた。

 これは?

 雨の日はオードの活動が活発になり、ガダーヴァと呼ばれるようになる。目の色が赤く凶暴性を増し、その臭いの異常、死体の匂いがする。

 繁殖力は強いが個体の強さはさほどでもない事から二等兵にとっては日々をこなす依頼の一つだ。

「この依頼を受けようと思うけど、いい?」

「いいですよ、ナインさん」

 オード討伐の依頼を受ける。

「おっこいつか、雨の日は依頼を受ける人間が少ないからな、助かるよ」

 本来は一匹で銅鱗貨一枚の魔物だが、雨の日に限り銅鱗貨三枚の依頼となる。

「今日はよろしくお願いします、ナインさん」

「うん」

「きゃっ」

 建物を出ると一陣風が吹いた。

 ふんわりと、雨の中にも関わらずまるで春の良き日のような風が吹く。

 アンバーのスカートが風にめくれ、白くてふとましい太ももまでが恥じらうようにあらわとなった。アンバーが高速でスカートを押さえにかかるが、白いパンツが菜隠には見えてしまった。

「ガフッ」

 菜隠は吐血した。

「もう、エッチな風なんだから」

 恥ずかしそうにアンバーは頬を赤らめる。

「あっナインさん‼ 見ましたね!?」

 すね毛一つない玉のような肌の、陶器のようで程よい脂肪と筋肉を携えた太ももだった。覚えていたくないものほど、忘れられないものだ。

「もうっナインさんのエッチ」

 菜隠は混乱した。

 菜隠は目を細めてアンバーを見ている。

 アンバーは照れた。

 今週の菜隠が見たくないものランキングベストスリーはこれだ‼

 第三位ふんどし姿の男、女性のならむしろ見たい。

 第二位‼ 男のパンツ、目を反らさずにはいられない。

 そして第一は‼ 男の裸だあああああ‼

 ナイン、目を覚まして? 大丈夫、大丈夫よ。

「えへっえへへぇ」

 マーガレットさん。はい、大丈夫です。

 菜隠は混乱している。

「そっそんな、もうナインさんてば‼ エッチ‼ もう‼ そんな顔して‼ エッチです‼」

 アンバーに勘違いされた事に絶望した。

 街を出るとすぐにオードへと遭遇した。街は高い外壁に囲まれているので比較的安全だが、街の外は一歩出ればオードなどの魔物が闊歩している危険地帯となる。

 ちなみに街の外は色付けで区分されており、グリーン、イエロー、レッドの順で危険となる。

「ウグウウウウググググググルルウウウグウウルルウウ」

 涎を垂らし真っ赤な目を爛々と輝かせてオードの群れが菜隠とアンバーを見つめている。他にもパーティーがいて、オードの群れと対峙していた。

 雨の日はこうして街のすぐ傍までオードが来る。鉄道が出来るまでは街道を占拠されるので物流に大きな影響を与えていたが、今は列車があるのでそこまでではない。

 雨の日に依頼料が多いのは列車がうまく運搬できるよう囮の役割もある。

 飛びかかってきたオードを菜隠は打ち払った。

 聖者の行進を滅茶苦茶に振り回し、飛びかかってくる犬をひたすらに打ち払う。アンバーは盾と剣を持って戦っていた。

 雨が衣服に染みて気持ち悪い。地面にたまった水が雨水を受けるたびに跳ねうっとおしい。動くたびに足元の泥水が跳ねて視界の邪魔をする。

 雨の日は体にかかる負荷が増える。暑さと重なって息苦しい。まるで鉛にへばりつかれているようだ。

 このオード、毛皮は臭いし、肉も臭いし、正直言って良い所がなにもない。死体は腐敗してもしなくても猛烈な臭いを発し、殺したらすぐに地面に埋めることが推奨されている。

 またこの臭いはヤツアシグモと呼ばれる魔物を呼び込むために速やかな対処が求められる。

 ヤツアシグモは大型犬程の蜘蛛だ。肉食で毒を持ち、目は一つ。足先が尖っており、抱き着くように獲物を串刺しにする。ちなみに口は腹側にあり、鋭い顎が並んでいて人間の腹など容易に切り裂ける。

「臭いね」

「そうですね」

 少し距離が離れただけなのに、雨音にかき消されて会話が聞き辛い。

 菜隠が見る限り、アンバーはあまり戦闘慣れしていない。きっとパーティーを組み、いつも後衛だったからだと思う。

 アンバーが囲まれないように、菜隠は戦闘支援を開始した。オード達もそれがわかるのか、アンバーの周りに集まりはじめる。

 それでもアンバーにとって今日は調子のいい日になる。菜隠の雷鱗がアンバーの調子を上げるからだ。

 聖者の行進が飛びかかってきたオードに打ち下ろされる。菜隠にとっては軽い一撃だが、オードにとっては重い一撃だ。脳天を打ち砕かれ、頭蓋骨が陥没する。

 それにしても今日は数が多い。

「傭兵社の者だが、あちらに穴を掘っておいた。オードの死体はそちらへ運んでくれ」

 伝令に来た男性が菜隠とアンバーに告げるとほかのパーティーに向かって走りだした。

「ナインさん‼ 大丈夫ですか!?」

「大丈夫」

「一応触れておきますね」

 別にいいのに、菜隠はそう思ったけれど大人しく触れられる事にした。アンバーの手が菜隠の背中へと触れる。

 自分の体が火照っていることに菜隠は気づいた。背中に触れたアンバーの手が冷たくて心地よい。

 アンバーへ飛びかかるオードを聖者の行進で撃ち落とす。

「ありがとう」

「ほいほい」

「ナインさん、無職なのに随分手慣れているのですね」

「何が?」

「いえ、戦闘に随分なれている気がして」

「そう?」

「はい」

 そこで会話が終わってしまった。菜隠は会話が終了したところで思う。きっとリア充なら、ここから会話が弾んで仲良くなったりするのだろうな。どんな会話をするのだろう。

「きゃあ‼」

 アンバーの悲鳴が聞こえ、菜隠は状況を把握すべく、自らが遊んでいたオードを蹴散らしてアンバーを視界に納めた。

 アンバーがオードに囲まれ、一撃、二撃と攻撃を受けていた。服が破れて胸が露出する。なぜブラジャーを付けているのか、大きいからしょうがないとしても、菜隠の中ではすでにアンバーは男だ。ブラから零れ落ちる特大の双球、恥ずかしそうに手で胸を隠すアンバー。薄桜色に染まった頬に、食いしばるように歯を噛む様子。

 乙女――がいた。

 お色気担当なの? ねぇ? おかしくない? 男、だよね? お色気担当なの?

 菜隠は内心で動揺を隠せなかった。

「ナインさん‼」

 助けを求めるように涙を目に浮かべながらアンバーは菜隠を見つめた。

 どんなに可愛くても、どんなに胸が大きくても、どんなにキレイなお腹をしていても、アンバーは男なのだ。

 菜隠の中の獣は微笑んだ。男だから大丈夫、そう緊張しなくていいのよ。だって彼は男なんだから。

 一遍の迷い? もなく、一遍の変化もなく、一遍の興奮もなく菜隠はアンバーを助けに入った。

 聖者の行進を振るい、オードを打ち殺す。金属の打撃が骨を打ち砕く音、心地よく、そして無粋で乱暴だ。打ち付けたところから作用によって生じた反作用が、振動となって手に伝わってくる。握力を振るい、二の腕の筋肉を振るい、揺さぶり疲労させる。それを回避するのは円の動きだが、菜隠はその反動の痛みに笑っていた。

 聖者の行進を地面に刺し、拳を握る。

 対複数瞬殺戦、第三門雷獣拳、破壊の衝動。

 この魔法はナインの趣味だ。まったくもって使う必要のない想像魔法。

 雷獣というは日本に古来から伝わる妖怪の一種。その雷獣を身に降臨させたようにするのが三ノ門雷獣拳。

 アンバーには菜隠が何をしたのか、知覚する事ができなかった。

 本来は雷でできた獣耳が頭に生え、手が雷のエネルギーに覆われるのだが、今回はそこまで本気にならなくてもいい。

 雨の合間を縫って、雷が聖者の行進へと落ちる。

 雷は聖者の行進を避雷針代わりに菜隠へと注がれ、アンバーもオード達も一瞬の間、動きを止めた。

 瞬間――。

 菜隠は動く、オードの顔面を殴り、元の位置へと戻る。オードの腹を殴り、元の位置へと戻る。オードのモモを掌ではじき、元の位置へと戻る。

 アンバーが菜隠が助けに来た事を確認し、自らの羞恥心に耐えかねて地面にうずくまると同時に、辺り一面のオードがあらぬ方へ吹っ飛んだ。

「大丈夫?」

「うっうん、ごめん」

「いいよー」

 力を開放したのは本の数秒にも満たない僅かな時間だけ、それなのにオードの大半は拳で体を砕かれて地面にはいつくばっていた。

 菜隠は指をわずかに持ち上げて、動かして、殴った後の感触に舌鼓を打つ。

 手をひらひらと波打たせ、余韻に浸る。拳が魔物にめり込む感触、自分の拳が魔物の体を打ち砕き筋肉の繊維を引きちぎる感触、菜隠はたまらなく好きだったりする。

 たったそれだけのために、この魔法を作ったのだから。

 アンバーには菜隠が何をしたのかまったく知覚することができなかった。顔を上げたら菜隠が傍にいて安堵した。

 菜隠が手を向けると、聖者の行進は引き寄せられるように手の中へと納まる。

「いったん引き上げよう」

「ごめんね」

「殿はぼくがするから、アンバーは先に撤退して」

 菜隠はアンバーを抱き起こす。アンバーは紺碧の瞳を大きく見開いた。雨が降り、菜隠の髪の毛はしっとりと体に張り付いていた。カラスの濡れ羽を思わせる漆黒、混じる太陽に焦げた茶色、その合間を縫って流れる一筋のブロンド、長いまつ毛が妙に色っぽく、湿った服が菜隠の体へと張り付いて輪郭をあらわとする。

 なにより美しいと心を引き寄せたのは張り付いた髪から滴る雫の色。

 アンバーの心臓が早鐘のように高鳴った。自分でもなぜ高鳴ったのか動揺してしまう。手を取られ、腰に手を回され、乙女のように引き起こされる。

 思っていたよりもずっと力強く。

「あっありがとう」

「いいよ」

 そして余裕すら見せる優しさ。

「先に、撤退して」

「でも――」

 菜隠はアンバーの敗れた服を気遣うように諭す。

「埋めたらぼくも戻るよ」

「うん、ごめんね」

「ううん」

 アンバーが胸を隠しながら撤退し、菜隠は口を半開きにして雨に打たれた。

「きゃあ‼」

 なぜコケるのだ。

 菜隠の目には足をもつれさせ、耐えきれずに倒れ込むアンバーの純白のパンツと大きなお尻が映ってしまった。歯を強くかむ。

 どうして? どうして?

 神様は残酷だ。どうしてこんな事をするのだ。こんなにぼくを苦しめて。

 どうして? どうして? どうして女の子のパンツじゃないの?

 残ったオードは怯えきって、逃げることもできずに震えていた。圧倒的力の差を感じたわけではない。何が起こったのかわからずに仲間が死んでいる事への恐怖に、震えていた。

 そして菜隠は気だるげにそんなオードを達を見つめる。

 どうして?

 まるで好きなのに嫌い。刃物を持って立てばきっと、誰もが戦慄するであろう。悲し気にオードたちを見つめる。

 ねめつけるように、荒む目は、八つ当たりを求めるように。

 傾けた菜隠の頭は右側が重く重く。

「男なんて、男なんてやだ」

 その涎は望んで垂らしたわけでも、わざと垂らしたわけでもない。半開きにした口から勝手に垂れて、そしてオード達は地にひれ伏した。

 魔法は楽しい。

 雷鱗系――憂鬱。

 雨の中、菜隠が作り上げた雷の危険な蝶達は光の残像を残しながら不規則と優雅に飛び立つ。

「女の子がいい、女の子がいいよ」

 そして乙女のように震えてしまった。

「ぼくはホモじゃない」

 男のパンツなんていやだ。もうやだ。

 菜隠は顔を両手で覆い、なんとか記憶を抹消しようと無駄な努力をするのであった。

 菜隠に男の娘属性の好みはなかった。


 変な事に時間を費やしてしまった。

 別に男の子のパンツでもいいじゃない。彼のパンツがどうであると、彼女のパンツがどうであろうとぼくには関係ない。

 心の中で可愛い幼女が羽を広げる。

 お兄ちゃん、なんて。うん、大丈夫だよ、お兄ちゃん大丈夫。

 残念ながらぼくに妹はいない。リアルで。

 自分に言い聞かせる。一人称は自分がいいけれど、関西の人だと意味が変わるので辛い。おのれ関西の人め。

 カダーヴァとなった犬の肢体を地面に開いた穴に入れる。ひどく濡れた犬の臭い。慣れないものなら戻さずにはいられない。吐き気に耐えられそうもない。

 鼻の表面を痺れさせ、喉に入ると胃が収縮を繰り返す。

 体が言う。これは食物には適さない、今すぐに吐き出して。これには毒があるかもしれない。この臭いは体に毒になる可能性がある。今すぐに吐き出して。

 そんなに嫌がらないでよげっへっへ。

「うぇっ」

 ふざけてたらちょっと気持ち悪くなった。

 これが終わったら、新しい手袋を買わなきゃ。

 引きずるカダーヴァを見つめる。

 一体一体はちょっとした中型犬ぐらいの大きさで恐ろしいほど軽かった。

 命の重さは何グラム?

 生きているオードと死んだカダーヴァの重さを違うと感じるのはぼくの意識のせいなのか。

 姉さんがぼくにこんな質問をしたことがある。

「ある日大切な人が不治の病にかかり余命が残り三日と言い渡されました。

 でもある人が言います。神様かもしれないし、悪魔だったのかもしれません。

 他の人の命を差し出せば、あなたの大切な人を助けてあげます。さぁ、菜隠、あなたはどうする?」

 ぼくはきっと誰の命も差し出さず、我慢して最愛の人の死を見届けると答えた。自分が我慢すれば済む話だから。

 そう答えると、

「菜隠、それではあなたはこの世界の部品にしかなれませんよ? ずっと我慢して生きるのですか? 責任という名の押し付けを背負って。長女を見なさい。あの人はもし大切な人がが死ぬと言うのなら、他人の命など平気で捧げるでしょう、私ももし大切な人が助かるのなら、命を捧げてしまうでしょう」

 姉さんはそう微笑んだ。

 この質問に幸せな答えなんてきっとない。

 この答えでぼくがすごいと思った答えは。

 命を捧げるけれど、それは自分の命を身代わりに、という答えだ。

 でもこれ、助けられた方はたまったものじゃないよね。人によっては感謝したり、割り切ったりできるのかもしれないけれど、もしぼくが誰かの身代わりに助けられたのだとしたらきっと、罪悪感に立っていられなくなる。

 生涯をあなただけのために生きると、ぼくのために命を捧げた人に誓うだろう。

 そんなことしてほしくない?

 ふざけるなよ。お前がそれをぼくに言うのか?

 きっとキレる。

「おっこんな雨の中、ごくろーさん」

 死体を穴に埋めていると六人組の若い人たちが来た。

「うはーくっせ‼」

「はやく、私たちのも埋めちゃいましょう」

「わーってるよ」

「おっすごい数だな、にひひっいいこと思いついちった、なぁなぁ?」

「っべっそれまっじいい考えだわっ」

「だろ?」

「ちょっと何怠けてるのよ」

「こっこんにちわ」

 一人大人しそうな少女のリシアが近づいてくる。

 ぼくは少女を一瞥した。声がでなかったのは別に無視したからじゃない。少女に話しかけられた事に動揺して声がでなかっただけだ。

「なぁなぁ? これ全部お前一人でやったのかよ」

 リシアの少女を押しのけて背の高い男が話しかけてきた。戦士だろうか、剣と盾を持っている。見下ろすようにぼくに圧力をかけてくる。

「違う、もう一人いる」

「二人でこれだけの数を?」

「そう」

 正確には大半をぼくが殺した。命の尊さの話をしていながら、人間じゃないのなら命を奪っても何も思わないところが、傲慢で人間らしいとぼくは自分に言い心の中で少し笑ってしまった。

「嘘つくじゃねーよ‼ 俺たち六人でこれの半分も倒してねーのに‼ お前、二等兵だよな‼」

 もう一人短髪の男が前に乗り出してきた。

 ぼくが今日殺したオードの数は八十一匹。穴に埋める前に、イミコの人に数を記入してもらった。

 今日の稼ぎは二百四十三銅、今相場は確か七銅で一銀だから約三十四銀五銅、二人で分ければ約十七銀と二銅ずつ。

 脳裏ではすでに遠心分離機を買う自分の姿が想像されていた。

 遠心分離機、安くてもデザインのいいものがいい。気に入ったデザインの機材を大切に使いたい。頬ずりしたい。

 いったん遠心分離機から離れよう。あ、でもこの世界の遠心分離機は複雑怪奇なものが多くて手動で回すと音が鳴ったり、すごい好きなんだよね。

 また考えてた。

 んと約四十匹だとして百二十銅、銀にすると約十七銀、六人で分けると約二銀かな。あと五銀あまるけど。

「何黙ってんだよ‼」

「いやいや、そう怒鳴るなって、なぁ? 落ち着けよ。悪いなコイツ気が早くてさ」

 どうしてこういう無駄なやり取りをするのだろう。でももし日本に住んでいた時のぼくに彼らが絡んできたのなら、ぼくはきっと震えあがっていた。何もできずに怯え言いなりになって情けなさに打ちのめされる。

「それで物は相談なんだけどよ。俺らが死体を運ぶの手伝ってやろうと思ってさ」

「別にいい」

「いやいや、遠慮すんなって‼ 雨の中、一人じゃ大変だろ‼」

「大丈夫」

「俺らが手伝ってやるって言ってんだよ‼」

「そうだぜ、遠慮するなよ、報酬は山分けでいいよな?」

「それ‼ いい考え‼ あんたも大変でしょ!? あたしらに任せなって」

 八人でこの数を分けろっていうの? 一人約六銀だから、四銀増えるね。

「えっでも……」

「あんたは黙ってな」

 三人が同調し、リシアは罪悪感を感じ残り二人は傍観していた。いいパーティーだね。バランスが取れている。三人はイケイケタイプ、二人は頭のいい保守タイプ、一人は損するタイプ。

 利益を考えているのかどうか。

「えっと、それだと、カヴァーダの数がこれだけだから……一人あたり……約、約八銀ね‼」

 あれ、ぼく計算間違えたかな。

「おっいいね‼ それじゃそういう事でいいよな!?」

「なぁ‼」

 何がいいのかさっぱりわからない。

「一人でやるからいい」

「はぁ‼ あたしらが手伝ってやるって言ってんだよ‼」

「おとなしくしとけって、俺らがやってやるからよ」

 胸ぐらをつかむ時点で脅しだ。昔のぼくが見えた。こんな時、どうにもできないから我慢する。未来のために、先の事を考えて、我慢して今を差し出す。母さんに迷惑はかけられない、父さんに迷惑はかけらない、姉さん達に迷惑をかけたくない。

 我慢、我慢、我慢、我慢できる人間が我慢する社会が日本だったとぼくは思う。我慢しなくていいなんて、無責任に言わないで、誰かが我慢しなくなったぶん、その分誰かが我慢するんだ。

 アニメの中の主人公はみんなこんなの間違っていると正々堂々と口にする。みんな好感を持つ。だからみんな好きになるのだろうとぼくは思うよ。

 その言葉を発するのにどれだけの覚悟と勇気が必要なのか。一人と数人でそんな事を発言すれば、多数決のようにまるでぼくがおかしいかのように彼らはぼくをあざ笑うだろう。コイツちょっと頭おかしいんじゃねーの。なんて言って。

 不安な未来をいざという時のために口を紡ぎ我慢する。協調性のため、うまくやりくりするため。

 今が良ければそれでいいと言うけれど、今の自分が努力しなければ、未来で今を感じているぼくは良くならない。今の自分も未来の自分も結局は同じなんだと思う。

 手が震える。震えたくなんてない。でもぼくの手は震えるんだ。頭だけが妙に冴えて、それなのに手足はいう事を聞かずに震える。弱虫みたい。

「おい、なんとか言えよ‼」

 きっとこの人達にも日々の暮らしがある。

「お断りします」

「んだと‼」

「殴っても解決はしません、自分たちの獲物は自分で管理します」

「じゃあてめぇは寝てな‼」

 殴るんだ。

「ったく最初から言う通りにすればいいのにさ」

「しゃーねーわ」

「こんなこと」

「あんたは黙ってな」

 男の無骨な右腕から放たれた拳は、ぼくの右頬をへとめり込んで、脳みそを揺さぶった。身長の差、体重の差、柔よく剛を制すというけれど、剛よく柔を断つとも言うよ。

 ぼくはきっと今でも弱い。

 足を振るわせて、振り下される罵声や暴力に耐えて、泣いて我慢するんだ。

 一匹狼って言葉好きだった。孤高なのだと思っていた。

 でも狼の中には群れから追放される狼もいる。追放された狼はただ死を待つのみ。孤高なんて、人間の中ではもっとも成立しない。

 一人でいる人間は、複数で組んだ人間には勝てない。

「おことわりします」

「上等だ‼」

「おごとわりします」

 治癒をしなければ、顎がはずれ、

「もごと、ばり、」

 言葉すらうまく話せなくなる。

「もういいわ、そこで寝てな」

 やだよ。

 ぼくは立ち上がった。殴られると口の中が歯にすれ、切れ、血液が噴き出る。マウスピースにはこれを防ぐ意味もあるとかないとか。

 罪悪感、て、ない?

 こんなことをして稼いで、それで堂々と胸をはれるの?

 綺麗ごとばかり言ってる? プライドなんて意味がない。嘘は騙される方が悪い?

 ここでなんでアンバーのパンチラが脳裏をよぎるのかなー。

「ナイン!?」

 顔を殴られてみじめにしていたら、アンバーが駆けて来るのが見えた。

 顔が熱をおび内出血を伝えてくる。噂をすれば影、ならぬ思い出したら影なのかな。

「あなたたち何してるの!?」

「あっ、いや、なんでもないぜ‼」

「そっそうよ、この子がこんなだから、手伝ってあげようって話を……」

「あっ、なんだよてめぇ」

 一人まだ戦う気なのか。ていうかアンバーの服装がさらに薄着になっているのはなんで?

 雨に濡れて下着が透けてるのだけど、なんで? あぇ? なんで? 透けてるなんで?

 白いワンピースが雨に濡れてまるでシースルー、肌に張り付いてる。

「なっなにこの人!?」

「ちっちじょ……」

 これにはリシアの少女もドン引きしてるよ。

「なにしてるの!? 大丈夫? ナインさん!?」

「大丈夫」

 アンバーに抱き起される。

 痴女って聞くと、エッチな雰囲気だけど男だと痴男になるのかな。痴漢だと犯罪集しかしない。

 この人、痴漢です‼

 視界に入る大きな胸と透けたパンツが目に痛い。心が悲鳴を上げる。

 ママ、あれなに?

 ダメ‼ 見ちゃいけません‼

 男同士なんだけどな。

 ぼくも脱ごうか? 男なら‼ 脱いでやれ‼

 ていうか服が気持ち悪い。臭い痛い踏んだり蹴ったりだよ。しかもここでさ、可愛い女の子じゃなくて可愛い男の子が来るっておかしいよ。

 泣きそう。

「何があったの?」

「別に何もないよ、それより、どうしたの? その恰好」

「ちっ」

「ねぇーどーすんのよ」

「あれ、兵長だぜ? いこっいこーぜ」

「でもよ‼」

「ちっ」

 六人は舌打ちして行ってしまった。

「ひどい打撲」

 アンバーの手がぼくの顔に触れた。いてーな。

 別に大丈夫なんだけど、手が冷たくて気持ちいい。撫でられている猫のようになってしまう。リシアの手って本当に気持ちいい。

 これで女の人だったらな。

「……きゃわっきゃわいい」

「きゃわい?」

 なんだきゃわいって、顔をあげるとアンバーと目があった。紺碧の瞳がほんの少し歪み、ぼくを見ていた。

「あっいえ」

「もういいよ、残りを埋めちゃわないと」

「あっはい」

「ていうかどうしたの? その恰好」

「えっ? あっすみません。替えの服がこれしかなくて」

 なんで白のワンピースなのだ。男でもワンピースを着るんだ。勉強になるな。ぼくは絶対に着ないけど。

「臭いからそこで待ってて」

「えっ、でも」

「もうすぐ終わるから」

「本当にすみません、ぼく、何もできなくて」

 十匹ぐらいはアンバーが倒したよ。それにこうして来てくれて助かった。最後のオードを穴に入れて、土をかぶせる。

「ギギギギギギ……ギギギ……ギギギギ」

「もうっ」

「この音‼ ヤツアシグモ‼」

 腹の顎が擦れて老朽化した金属みたいな音がする。ヤツアシグモさんいらっしゃい。ちなみに依頼が出てないので倒してもお金はでない。

 編み込まれた円状の糸が飛んできたのでしゃがんでかわす。

「きゃあ‼」

 なんでだ。アンバーが糸に絡まれて倒れた。

 そしてなぜかあられもない姿になっている。

 この粘着性の糸は一度張り付くなかなか取れない。

「うっうごけない」

 数は五匹か、これ以上増えても困るので蜘蛛の相手をする前に完全にカヴァーダを埋めた事を確認する。蜘蛛の全容を見る。足は鋭く甲殻類を思わせ、カニと蜘蛛の中間のような姿。足には返し、トゲがついていて、一度刺さるとなかなか抜けない。釣り針の仕組み。

 このヤツアシグモ、ゆっくりと近づいてくる、これには理由がある。

 聖者の行進を構えてぼくは集中する。

 目算七メートルに入るまで――。自分から仕掛けるのは得策じゃない。 

「3、2、1」

 息を止める。ゆっくり近づいてきた大きな蜘蛛は急に動きを速めて飛びかかってきた。足を開き、腹をこちらへ向けて、腹側の口がなまめかしい内液をまき散らす。

 足に力を入れて踏ん張り、蜘蛛を撃ち落とす。

「ぐっ」

 ブロックを壊すような音が響く。両手で聖者の行進を持ち、左手で柄を上げて、先端を背面から地面へ腕だけではなく体全体を捻って打ち下ろす。渾身の一撃というやつだ。人間相手だとほとんど決まらないけど、行動が決まっているヤツアシグモは面白いように当たってくれる。

「ナイン!? 逃げて‼」

 無茶言わないでよ。あんまりアンバーを見たくない。なんで透けてるの? いろいろおかしいよ。

 一撃、二撃、三撃、四撃、五撃、すべてを撃ち落とす。

 脳天を一撃し脳震盪を起こしてひっくり返すのがヤツアシグモの対処法。

 手が痺れちゃった。

「ナイン!? すごい……」

「立てる?」

「えぇ、なんとか、糸を取るのは街の中にして、はやく戻ろう?」

「えと……」

 ちなみにこのヤツアシグモの足はエビの味がする。だけど姿があまりよろしくないので食べる人があんまりいない。

 何食べているのか不明な点も食力を減衰させる。ぼくは気にしない、足を解体して持って帰ろう。

「なんでひっくり返ってるの?」

「あのっもがきすぎて」

 ぼくの顔は凍り付いた。アンバーが足を広げてひっくり返っていたからだ。その体勢はおかしい、絶対におかしい、パンツと股間がより強調されている。

 なにこれ神の試練?

「あのっあんまり見ないでください」

 ふふっおかしな人、そんなあからさまな手には乗らなくってよ。

 心の中のお嬢が優雅な動作でそう告げる。お前誰だよ。

「うぅぅぅぅ、もうお婿にいけない」

 ハゲそう。ハゲそう‼

 なんとか抱き起こす。この糸本当に厄介だ。

「べとべとします」

「そだね」

「きゃああああああああああ‼」

 えっ、なに? アンバー、またなの?

 いやいやながらアンバーへ視線を移すと、アンバーは紺碧の瞳を純粋に見開いて頭に疑問を浮かべていた。

 アンバーじゃないんだ。

 結論から言うとさっきの六人組が蜘蛛に襲われていた。

「どうしよう‼」

 アンバーの形相から視線の先の状態を悟る。蜘蛛に抱き着かれて男の一人がもがいていた。蜘蛛の尖った足が徐々に体に刺さり、逃れようと必死にもがく。

 やだっ羨ましい。

 あの蜘蛛が女の子だったらな。結婚するのに。一生離さないのに。

「クッこのおおおお‼」

「今助ける‼ おわっ」

「おれはぁああいいいからあああ」

 ハゲそう。

 アンバーがぼくを見上げる。その上目遣いやめてほしい。

「ハゲそう」

「え?」

 ぼくにどうしろっていうのだ。助けろって言っているよね。うんわかる。

「きゃあぁあああっ」

 悲鳴を上げているのはリシアの女の子だった。

「ヴァージニア‼ あの役立たず‼」

 パーティーの壊滅っぷりがすごい。男二人は蜘蛛に抱き着かれてもがいている。職人の女は蜘蛛から必死に逃げ、剣で応戦はしているけれど、勝算は低い。

 リシアの少女は転んで泥だらけになっていた。雨の中の奇襲はなかなかに効果的。雨音や水の粒で音を消され忍び寄られる。

 ぼくは突っ立ってその状況を見ていた。正直ヤツアシグモはそんなに強い部類の魔物じゃない。ぼく一人でも、雷鱗を使わず十分に対処できる魔物だ。

 リシアの少女と目があった。不安げな表情と、ぼくらを見て希望を見出す。

 でもぼくは助けない。

「かえろ」

「えっなんで!? 襲われてるんだよ!?」

「助ける義理が、ない」

「えっ」

 大丈夫でしょ。ぼくは脳震盪させた蜘蛛を解体にかかる。足を捻って根元からもぐ。

「ナインさん!? 何してるの?」

「今日の晩御飯」

「それ!?」

「美味しいよ」

「ヤツアシグモだよ!?」

「そうだけど」

「助けてください‼ お願いします‼ 助けてください‼」

「また今度ね」

「ナインさん!?」

「雨が服に染みて重い」

 こういう時主人公なら真っ先に助けに行くのだろうな。見返りなど求めずに、でもぼくは助けようとは思わなかった。助ける必要性がないと思ったから、義理がないし。

 人っていつか死ぬし、今かもしれない。

 蜘蛛と言えば、ぼくも体内で蜘蛛を飼っている。

 雷鱗系魔法第四門レディ。

 鱗眼が目の強化、鱗体が体の強化だとした場合、四門のレディは神経の強化になる。体の中にぼくの体を管理する蜘蛛がいて、神経系を糸のように操っている。

「レディ」

 なんとなくそうつぶやくと、手の平に寄り添うような感触がした。

 ちらりと見ると、大きな蜘蛛が左手にまとわりついてくる。

 ここまでの通り、門系等はぼくが肉弾で戦う際に重ね掛けしていく魔法だ。

 一門で倒せないなら二門へ、二門で倒せないなら三門へ。

 鱗眼、鱗体、雷獣、レディ‼

 雷鱗人形を操るのはレディの仕事。

 ちなみに四門のレディはぼくが生きている限り自動で常に発動している。じゃあ普段から解放しているのかというとそういうわけじゃない。普段彼女は巣を張って獲物を待つかの如くぼくの体の中でじっとしている。

「雷鱗」

「なに!? ナインさん!?」

「なんでもない」

 右手の中に納まっていたレディから糸が伸び、雷鱗を伴って苦戦している六人に絡まった。

「うおっうおおおおおおお‼」

「このおお‼ はーなーれーろー‼」

 指先でレディの頭を撫でると、レディは少し身じろぐ。

 やだ、やめて。そう言っているみたいで可愛い。

 手の中のレディを指で転がすと、ヤツアシグモに取りつかれてもがいていた男の体がぼくの意思通りに動いた。この四門、シシリーには嫌われていた。

 この体じゃ抜け出すのに犠牲を払わなければならない。

「なっなんだ?」

 男の体が急激に脱力し、足が食い込んだ。

「ぐぁああああ‼」

 悲鳴を上げるのは体が痛みから死から逃れようとするのに動かないせい。ごめんね。ぼくのせい。でも殺させるつもりはないよ。足が食い込み、口が露出した瞬間を狙い、腕が関節を無視して突っ込まれる。

「うあああああああ‼」

 握力を無視した筋肉の動き。ヤツアシグモの口の奥に存在する心の臓に指が食い込む。

「ふぎlyたああああああああああああああああああああ‼」

「ぐぁあああああああああああああ‼」

 やっぱ痛いよね。蜘蛛が心臓を貫かれて絶叫絶命し、足を振り回した。返しのついた足をむちゃくちゃに無理やり引き抜かれたものだから男の体が裂けた。

 雷鱗で致命傷にはならないからちょっと我慢してよ。

 リシアの少女が駆けてくる。ぼくの元へと――蜘蛛に追われ。

「助けて下さい‼」

「ナインさん‼」

「もう、しょうがにゃいにゃあ」

 レディの頭を撫でて自動で操作。レディには意思がある、と見せかけてない。自動モードはただ自動にするだけ。

 もう一人の男の体を自動で操作し、リシアの少女へ駆け寄る。

 少女はぼくの背後へと隠れると服を物凄い力で掴んできた。布地が張って避ける音が耳を凍らせる。

「やぶける、やぶける」

「いやっいゃああ」

 嫌じゃないし、裂けるし、飛びかかってきた蜘蛛を聖者の行進で打ち落とす。少女の体がぼくの体に引っ張られて動く。それでも少女はぼくにしがみついていた。裂けそう、やばい、音がやばい。

 もう一人の血の気の多そうな男をレディが助けたので、レディにほかの人を助けさせる。

 そしてアンバーが蜘蛛に襲われていた。なんでだ。

 歯を食いしばり、蜘蛛に抗おうとするけれど、糸を飛ばされてさらに身動きがとれなくなっていた。

「んっ」

 背中にしがみつくリシアを引き擦りながら駆ける。

 アンバーへ飛びかかるヤツアシグモを打ち落とし、

「大丈夫?」

「んー‼ んー‼」

 なんでだ。アンバーの口と鼻が糸にふさがれて苦しんでいた。雷鱗を指先に通して糸を殺す。レイヴンの姿を消して電解を発動、糸を変質させて粘着性をなくす。聖者の行進を地面に置き、左手で押さえて、右手を口元へ。

 なんか左手が柔らかい。

「んー‼ んっんー‼ んぅんん‼」

「なに? 今助けるから」

 左手で糸を押さえて、右手で口元の糸を引きはがす。

「ふはっごほっごほ‼ 死ぬかと思った」

「そう?」

 見回すとあらかたレディが片づけてくれていた。片づけると言ってもレディが五人を操って片づけてくれている。

 レディに意思はない。つまりレディはぼくなんだ。

「あのっあのさ……」

「ん?」

 アンバーが話かけてきたので首を傾ける。

「あのっあのね、そのっ、助けてくれてすごくありがたいし、そのそんなに気にする問題でもないと思うのだけど」

「うん?」

「あのっ胸を……ね、あんまり触られると、ひゃっ」

 ぼくの左手はアンバーの胸に触れていた。

 亀裂音が辺りに木霊する。

「えっ」

 感触からしてどう考えてもぼくの背中辺りなんだけど、服の背後がリシアの握力によって破かれていた。

「あのっナインさん、はじゅかしっあっ」

 あってなんですか。

 ぼくはアンバーの胸からそっと左手を離した。

「キレそう」

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