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尻洗いの鍋

 さて。

 あるところに、食材がたくさん手に入ったので鍋にして食おうと考えている三人がおりました。しかし三人ともその食材の量に見合う大鍋を持っていなかったので、村一番のバカであるとして常日頃からバカにしている長介の鍋を借りることにしました。

 行ってみると、やはり長介の家にはバカみたいに大きな鍋があり、三人はそれを借りることを申し出ました。「いいとも」長介は答えました。「その代わり、鍋にはおれも同席させてくれ」

 鍋いっぱいに水を張り、火にかけ、食材を放り込みました。徐々じょじょに湯が沸き、食材も煮えてきます。さあそろそろ食べ頃だ、というところで、はしを構えていた長介がふと思い出したように言いました。

「そういえば」かちかちと箸を鳴らしながら、長介は言います。「おれ、今朝はこの鍋で尻を洗ったんだった。風呂釜が壊れちまったもんでさ。この鍋は風呂釜にもちょうどいいんだぜ」

「何だって!」その話を聞いたひとりが激昂げっこうして立ち上がりました。「お前、よくもそんな汚い鍋を寄越したな! お前が尻を洗った鍋で煮込んだ食材なんて、とても食えたものじゃない!」

 言うなり三人は箸をその場に放り出し、そろってぷりぷりしながら出て行ってしまいました。

 残された長介は、未だひとりで箸を鳴らしながら、

「まあ、嘘なんだけどね」

 そうしてひとりで鍋いっぱいの食材を腹いっぱい食べましたとさ。


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