曲がり問答
さて。
あるところに、とても世の理に通じていることで名高い高僧がおりました。この高僧があるとき、法事の用で寺を空けるということで、近所に住む長介に留守の番を頼んで行きました。
長介が寺で番をしていると、高僧の話を聞きつけた旅の僧が、高僧に問答を挑むべくやってきました。
旅僧が寺を訪ねてみると、縁側にぼんやりと座っている男がおります。高僧は弟子をとらない主義であるということなので、随分間の抜けた顔をしているけれども、この男こそが高僧に違いないと考え、旅僧は早速問答を仕掛けました。
旅僧はまずは高僧がどれほど理に通じているのか図るべく、手刀を切る動きを取って、事の始まりは、と問いました。長介は旅僧が相撲の行司の真似事をしていると思い、大きく四股を踏んでみせました。旅僧は、成程、縁の下の力持ちか、と解釈しました。
次に旅僧は長介に対して両手を前後まっすぐに広げ、貫くものは、と問いました。長介は旅僧が筒を作っているものと思い、指で輪を作って覗き込みました。旅僧は、成程、三世を見通す目か、と理解しました。
最後に旅僧は指で印を組み、仏の教えは、と問いました。長介は旅僧が仏像の真似をしていると思い、座禅を組んでみせました。旅僧は、成程、修行を以て悟れか、と感服しました。
一連の問答に満足し、確かに高僧は徳の高い僧だった、と感心して、旅僧は立ち去りましたとさ。




