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火事の裾分け
さて。
あるところに、たくさん餅を搗いたのでもらってくれと樽いっぱいの餅を渡された長介がおりました。長介は喜んで餅を食っておりましたが、それを知って妬んだ隣家の男がやって来て言いました。
「独り占めをするんじゃない。そういうものはちゃんと隣へも分けるものなんだ」
そして樽にまだ半分以上残っていた餅を全て持って行ってしまったのでした。
ある日、長介が家に帰ると、何と家が燃えていました。しかし長介は慌てず騒がず、木の棒を拾って火を移すと、隣家に次々と投げ込みました。瞬く間に隣家にも火の手が上がり、激しく燃えていきます。
「何てことをしてくれたんだ、うちまで燃やすとは!」
焼け出されてきた隣家の男が、怒って長介に言いました。それに対して長介は、
「いや、御礼には及ばない。火事も独り占めしないでちゃんと隣りへ分けただけさ」
と、しれっと答えたのでしたとさ。




